第53話 きっかけはダークマター
「どうしてこうなったんだ?」
「……私にもわからないです」
菫と天城が家に泊まるようになってから数日が経過していた。
そんなある日、天城が料理をしたいと言うのでお願いしてみたらキッチンには暗黒色の物体が鎮座していた。
「なにこれ。ダークマターか何か? お前って錬金術師だったの?」
「失礼な! これは、私が宮野くんに愛を込めて作ったスクランブルエッグですよ!」
「……愛というか、多分食べたら即死しそうなヤバいもんは入ってそうだな」
どう見てもスクランブルエッグには見えない。
俺の知っているスクランブルエッグは黄色いはず。
もしかして、金持ちが普段から食べてるスクランブルエッグはこんな色をしてるのだろうか。
そんなわけないよな。
「むぅ、頑張って作ったのに酷いです」
「それは、ごめん。というか、菫はどこいったんだ?」
今日は菫を見ていない気がする。
いつもはリビングにいるか、俺の部屋で本を読んでるかしてたんだけど。
「朝から買い物に行きましたよ? 私達三人分の食材を買いに」
「言ってくれれば俺も行ったのに」
「だから言わなかったんじゃないですか? 菫はそういう子ですよ」
「それはそうかもしれないな」
俺に遠慮なんかしなくて良いっていっつも言ってるんだけどな。
まあ、そういうところが菫のいいところでもあるんだろうけどさ。
「それよりも、食べてみて下さいよ! きっと味は美味しいですから!」
「……」
確実に美味しくは無いと思う。
だって、見た目が完全に炭だもん。
人が食べて良さそうな見た目をしていないもん。
「ただいま戻りまし……た」
「戻ってきてくれたんだな菫」
「えっと、どういう状況ですか? って、なんですかそれ」
「天城が昼食を作ってくれたみたいなんだが、この有様だ」
俺は天城が作ってくれたダークマターを指さす。
何故か見覚えがある気がするのだが、どこで見たんだったか。
懐かしい、何故だかそんな感傷を抱いてしまう。
「どうしてお嬢様に料理をさせたんですか。こうなることはわかっていたでしょうに」
「そうなのか? 天城は料理できそうな感じがしたんだが。できないのか」
「……そうでしたね。陸斗様は記憶を失っていたのでしたね。そうなんです。お嬢様は全く料理ができないのです」
「もぉ、またそうやって菫は酷いことを言うんだから。私にだって料理くらいできますって」
天城は頬を膨らませながら菫に抗議をしていた。
可愛い顔だけど、見ていて少しだけ面白く感じる。
懐かしい。
いや、そもそも俺はこのダークマターを見たことがある。
絶対にそうだ。
「あ、は?」
そう確信した瞬間、俺の視界は暗転した。




