第43話 囚われの天城
卓也たちに廃工場の入り口にいた黒づくめの男たちの相手を任せて俺たちは廃工場内部を進んでいく。
時間も時間なのですでに薄暗くて、スマホのライト無しではまともに歩けないくらいには暗かった。
「お嬢様……どこにいるんですか」
「わからんな。奥にいるのはほぼ確実なんだけど。この廃工場の見取り図でもあればな」
流石にそんなものを用意する時間は無かったし、そもそもそんなものが残っているのか疑問なくらいには廃工場内は錆びの匂いで充満していた。
早く助け出さないと天城が何かされてしまうかもしれないという焦りもありどんどん精神を擦り削ってくる。
「死ねぇ!」
そんな時に、曲がり角から鉄パイプらしきものを振り下ろしてくる男に遭遇した。
足音で何となく来ることを察していた俺は難なく躱すことができる。
そのまま、流れるような動作で腹に回し蹴りを叩き込む。
「がっ」
「あっぶねぇ。こんなの頭に当たったら死んじまうだろうが」
カランカランと言う金属音をたてて転がる鉄パイプを蹴飛ばしながら悪態をつく。
今の一撃を喰らっていれば死にはしないかもしれないが、気絶はしていたかもしれない。
そうなってしまっては天城の救出はおろか、ついてきた菫を守る事すらできなくなってしまう。
「大丈夫か? 菫」
「は、はい。わたくしは何ともありません。それよりも陸斗様は大丈夫なのですか?」
「問題ない。当たってもいないしな。んな事より、急いだほうがよさそうだ」
内部にもこいつらがいるという事は、天城の近くにも数人潜んでいる可能性が高い。
早く助けに行かなければ。
「わかりました」
菫も同じ意見のようで二人で小走りになりながら廃工場内を進む。
やっと目が慣れてきて、ライトに頼らなくても走れるようになってきた。
「ここら辺か?」
大体の工場の構造的にここら辺が一番奥に当たるはず。
そう思い少し大きな門のような扉をあけるとそこには、椅子に縛られた天城とその隣に近藤。
そして、近藤を守るかのように立っている体格のいい男がいた。
「よお、やっとヒーローのお出ましか? 宮野」
「……近藤」
どうやら、落ちるところまで落ちてしまったらしい。
目は完全に濁っていて、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
完全な逆恨みではあるが、それを主張したところで今のこいつは一切聞く耳を持たないだろう。
「お、お嬢様を離してください!」
「やめとけ。あんまし刺激すんな」
下手に刺激して天城を攻撃されても困る。
このまま、話を長引かせて卓也たちを待つ方が得策かもしれない。
そう考えていたのだが……
「そうはいかんわな」
大男が拳を振り上げながらこちらに距離を詰めてきていた。




