第42話 天城救出作戦開始
「攫われた!? 一体誰に?」
「誰かまではわからなかったっす。ただ、黒ずくめの男数人がかりでやっていたので計画的なのは間違いないっすね」
「わかった。。どこに連れて行かれたかわかるか?」
「一応、お嬢さんを攫った車は他の奴が追跡してるんで場所はわかります。この感じだと、この町のはずれにある廃工場かと」
誰かを攫うにはうってつけの場所だな。
だが、ここまで情報があるのなら何とか出来るかもしれない。
「わかった。場所が確定したら再び連絡してくれ。あと、こっちにバイクをよこしてくれないか?」
「大丈夫っす。それはもう向かわせてありますんで」
「流石だな。あと、全員を廃工場に集めてくれ。久しぶりに本気の殴りあいだ」
「久しぶりに誰かと喧嘩してる陸さんが見れるなんてみんな喜びますよ」
「そんな呑気なことを言ってる暇はない。何かが起こる前に絶対に助け出すぞ? いいな」
「はい!」
電話を切ってスマホをポケットにしまうと、不安そうな目で菫がこっちを見てきていた。
どうやら、スマホから漏れた卓也の声を聞いていたみたいで体は小刻みに震えている。
「お嬢様が誘拐されたというのは本当なのですか?」
「ああ。今から助けに行く。菫はここで待っててくれ」
「嫌です! 陸斗様が助けに行かれるのならわたくしも連れて行ってください!」
真っすぐな目で菫は俺のことを射抜いてくる。
本当ならば断固として断らなければならない。
相手がここまで計画的な犯行をしている以上、何人いるかもわからないしどんなイレギュラーが起るかも想像できない。
「……危ないんだぞ? 学校で起こるような些細な問題とはわけが違う。それをわかってなお、ついてくるって言うのか?」
「わたくしにとってお嬢様は命よりも大事なお方です。こんな安全圏でわたくしがぬくぬく待っているわけにはまいりません」
覚悟を決めた目でそんなことを言われてはこちらとしても断りづらい。
それに、俺の目の届かないところで暴走されるよりはある程度目の届くところにいてくれた方が安全か。
「絶対に俺のそばから離れるなよ。約束できるか?」
「かしこまりました」
綺麗に一礼して菫は支度を始める。
数分後には昔の仲間がバイクを一台持ってきてくれる。
昔乗っていたバイクにまたがり後ろに菫をのせて走り出す。
「陸斗様って免許を持っていらしたんですね」
「そんなもん持ってない。もちろん無免だ。秘密だぞ」
「……大丈夫ですか?」
「事故るようなへまはしない。それよりもしっかり掴まっててくれ。飛ばすぞ」
「わかりました」
菫が俺の腹回りに腕を回してしっかりと掴まったのを確認してからフルスロットルで加速する。
一刻も早く天城を助け出すために。
◇
しばらくバイクを走らせているとすぐに廃工場が見えてくる。
そして、廃工場の前には数十台のバイクが停まっていた。
「陸さんお久しぶりです!」
「「「お久しぶりです」」」
卓也を筆頭にこっちに向けて深いお辞儀をしてくる。
こいつらは昔から全く変わってないみたいで安心する。そんな場合じゃないのはわかっているんだが。
「久しぶりだな。それより、天城はやっぱりこん中にいるのか?」
「はい。確認しました。ですが、相手方も相当手が込んでるみたいで数十人は居ましたね。どうしますか?」
「正面突破だ。ここにいる奴ら全員半殺しにして天城を救出する」
どうせ、この中にいる奴らなんて誘拐犯の犯罪者だ。気にする必要ない。
それよりも、気にしてためらってこちら側に被害が出るのが一番まずい展開だ。
「了解です。それで、陸さんの後ろにいるとんでもない美人の女の子は誰ですか?」
「こいつは天城の使用人の辻菫だ。どうしてもついてきたいって言うから連れてきた。もし、俺に何かあったらこの子を守ってやってくれ」
「陸さんになんかあるとは考えにくいっすけど了解です。その時は責任を持ってその方を家までお送りしますよ」
「頼んだぜ。じゃ、いくぞお前ら!!」
「おお!!」
俺達全員で工場の中になだれ込む。
全身黒い服で身を包んだ連中が迎え撃ってくる。
「陸さん! 雑魚どもは俺たちに任せて天城のお嬢さんの所に急いでください!」
「わかった。頼んだぞ!」
「はい。俺らもこいつらやったらすぐに向かいますんで」
「よし、菫。行くぞ」
「は、はい」
場の空気に慣れていない様子の菫はオドオドしながらもしっかりと俺の後ろをついてくる。これだけうるさくしているんだ。
相手側にも異変は伝わっているだろう。
早く助けに行かなければ。




