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天才ヤンデレお嬢様の好感度がなぜかカンストしてる件  作者: 夜空 叶ト


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第40話 天城乃々の暴走

 二人の看病のおかげで一日で体調は回復して次の日には学校に行くことができるようになっていた。


「おはよ。君が学校を休むなんて珍しいね。何かあったのかい?」


「普通に熱出たんだよ。久しぶりにがっつり体調崩したわ」


「へぇ~もう季節の変わり目って時期でもないのに大変だね。一人暮らしでしょ?」


「まあな。一日爆睡したら治ったから良かったよ」


 朝の学校にて俺は雄介と何気ない会話を交わす。

 何気ない日常の一ページのはずなのに、強烈な視線を感じる。

 理由は簡単で天城がものすごく睨んできているのだ。


「そりゃあ、良かった。でさ、君天城さんに何かしたの? めちゃくちゃ睨まれてるけど?」


「知らん。俺が知りたいくらいだ」


 そう、今日はいつもみたいに俺たちの間に入って会話をすることなく自分の席に座ったままこっちのことを凄く睨んできているのだ。

 正直マジで怖い。

 何をしたのかわからないのがなおの事怖くて仕方がないのだ。


「はぁ、何があったのかは知らないけど何とかしなよ? 天城さんがあそこまでピりついてるせいで教室内も変にピリピリしてるんだからさ」


「そんなこと俺に言われてもな。どうしようもないっていうかさ」


「だよな。ま、頑張ってくれ。くれぐれも俺のことを巻き込むのだけはやめてくれよな」


 薄情な事を言いながら雄介は苦笑している。

 酷い奴だと思いつつ、俺は腕を組んで思考を巡らす。

 昨日はあの後、おかゆを食べてから寝て起きたらおかゆの作り置きと書置きしか残っていなかったから何もしてないと思うんだけど。


「悩むのは若人の特権ですな」


「お前も俺と同い年だろうが。全く」


 ツッコミを入れつつ思考をフル回転させるけど、俺が何かをしてしまった自覚が全くない。

 一体どうすればいいのだろうか。

 答えが出ないままズルズルと思考をしていたら気が付けば、昼休みになっていた。

 午前の授業内容は一ミリも頭には入らなかった。


 ◇


「宮野くん。ちょっとよろしいですか?」


「ん? ああ、別に構わないがどうした?」


 いつものように雄介と昼食をとろうとしたら天城が話しかけてきた。

 今日も四人で食べることになるのかと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。


「ついてきてください」


「え、ちょ」


 いきなり腕を引っ張られてどこかに連れて行かれそうになる。

 雄介に助けてと視線を送るとニッコリ微笑んで手をヒラヒラ左右に振っていた。

 なんて薄情な奴なんだ。


「どこに連れてく気だ!?」


「良いからついてきてください」


 何を聞いても答えてくれる様子はなく、俺はそのまま屋上まで連れて行かれる。

 屋上は鍵がかかっているはずだが、何故だか今回は簡単に鍵が開いてしまった。

 なんで?


 カチャン


 天城が屋上の鍵をそのまま施錠してしまう。

 一体これから何が始まるって言うんだ。


「それで、こんなところまで連れてきてわざわざ話ってなんだ?」


 異様な気配を感じ取り、俺は天城から距離を取る。

 だが、すぐに背中は落下防止用のフェンスに当たってしまい逃げ場がなくなってしまう。


「私はね、かなり待ったと思うんです。無理やり行動して、あなたに嫌われたくなかったから」


 ポツポツと独り言のようにつぶやきながら彼女はドンドン俺との距離を詰めてくる。

 目は虚ろで綺麗なはずなのにどこか不気味さを感じる。

 今日の天城は何かがおかしい。

 本能がそう警鐘を鳴らしていた。


「でも、もうやめることにします。我慢するのも、本当の自分を隠すことも」


 そう言って天城は俺に飛び掛かってきた。

 普段ならなんなく避けれただろう。

 だけど、今は病み上がりという事もあって体が思うように動かなかった。


「やべ」


 天城を躱そうと動いたときに足が絡まってこけてしまう。

 地面に体が打ち付けられて鈍痛が襲ってくる。

 そうこうしているうちに天城が寄ってきて俺の体に馬乗りになってくる。


「やっと、捕まえました」


 そう言いながら俺の顔を覗き込んでくる彼女はなんだか、苦しそうで酷く焦っているように見えた。

 そんな顔を見てしまったからだろうか。

 抵抗する気は失せてしまって全身の力を抜く。


「それで、天城が何がしたいんだ?」


「この場で既成事実でも作ってしまおうかと。そうすればあなたは私から逃げられないでしょう?」


「かもしれないな」


 いつもの天城とは様子がまるで違う。

 何かがあったのか、それともこれが本当の天城乃々の姿なのか。


「ッどうして、抵抗しないんですか?」


「どうしてって言われてもな。そんな顔でこんなことされたら抵抗する気も失せるって」


 本当に辛そうでしんどそうな顔。

 こんな顔を見るのは初めてかもしれない。

 だからなのか、抵抗をする気は全き起きなかった。


「……抵抗してくださいよ! じゃないと、私バカみたいじゃないですか!」


「……」


 珍しく大きな声で天城は叫ぶ。

 顔を見てみれば、瞳からは涙があふれていてなんというか痛々しかった。


「なんで、あなたはいっつもそうなんですか。私がやられて一番困ることをどうしてあなたは……」


 泣きながら胸をポンポン叩かれる。

 本気で叩く気はないみたいで弱弱しい力で叩かれる。


「何があったかは知らないけどさ。話してくれないか? 聞くから」


 右手を伸ばして、彼女の頬に触れる。

 親指で滴り落ちる涙を拭う。

 これくらいしか今の俺にできることは無い。


「……わかりました」


 そう言うと天城は俺の上から退いてくれる。

 腹部の圧迫感が無くなって呼吸が幾分かしやすくなった。


「よっこらせっと」


 立ち上がって屋上の壁際に移動して背中を預けて座り込む。

 天城も俺の隣に腰を下ろした。


「そんで、何があったんだよ。こんなことするなんてさ」


「不安になったんです。宮野くんが誰かに盗られちゃうんじゃないかって」


「なんでまたそんなことを?」


「最近菫と仲よさそうですし、もしかしたら菫のことが好きになったんじゃないかとか。他にも違う子に言い寄られてたらどうしようとか考えちゃって」


 膝を抱いて俯きながら天城は話してくれる。

 なるほど。

 昨日菫の事を名前で呼んだ件で不安にさせてしまったのか。


「そか。なんかごめんな。追い詰めちゃったみたいで」


 隣に座っている天城の頭を撫でる。

 できるだけ優しく。


「謝らないでください。私が勝手に不安になって焦って。暴走しただけなんですから」


「天城って変なところで自分に自信ないよな」


「どういうことですか?」


「お前みたいな可愛くて魅力的な女子と一緒に居るんだからそうそう目移りなんかしねぇよ」


 言うか迷ったけど、ここで言っておかないと彼女を安心させてあげることができないだろう。

 それに、これは俺の本心だ。

 関わるごとに新しい魅力が見つかっていく。

 最初みたいに求婚を拒絶する気はあまりないんだ。

 でも、まずは母さんに恩を返したい。

 その目的を果たすまでは、他の事に意識を向けられないというだけで。


「……それ本当に言ってますか?」


「俺は趣味の悪い嘘は嫌いなんだ」


「な、なんかこういうのを真正面から言われると照れますね」


「だな。俺も言ってから恥ずかしくなってきた」


 普通に恥ずかしい。

 でも、ここで本音を言わずに変に拗れるよりかは百倍マシだろう。


「じゃあ、ハグしても良いですか?」


「何故いきなり」


「さっき言ったことが本当だって証明してくださいよ。ほら」


 天城は両手を広げてハグをねだってくる。

 こういわれてしまっては断わることはできないし。

 観念して俺は天城を抱きしめた。


「こうやって誰かに抱きしめられるの安心します」


「そか。俺は結構ドキドキしてるけどな」


「知ってます。だって、心臓の音聞こえますから」


「そう言う天城だってすごいぞ?」


 天城の心臓も俺に負けないくらい早鐘を打っていた。


「当たり前です。なんせ、好きな人に抱きしめられてるんですから」


「……そういう事言って恥ずかしくないのか?」


「指摘されると恥かしいので指摘しないでください」


 俺たちはそんな軽口をたたき合ってしばらくの間抱きしめあった。

 抱きしめ終わるころには天城の表情は先ほどまでの悲痛なものではなく、宝石のように美しい笑顔になっていた。


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