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天才ヤンデレお嬢様の好感度がなぜかカンストしてる件  作者: 夜空 叶ト


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第37話 本調子の天城と不調の陸斗

「もちろん、宮野くんが悪いように言われるのが耐えられないというのも理由の一つです。でも、それ以上に宮野はくんはきっと目の敵にされてしまうから。どんな実害が出るかわかりません」


「実害? なんだそれ」


「言葉の通りですよ。自分で言うのもなんですけど天城という家系は中々に歴史があって財力もある家です。そんな家の一人娘である私と結婚して得られる利点は計り知れません」


「ああ、そう言う話か」


 正直、誰かと結婚したら何かが手に入るから結婚する。

 みたいな政略結婚のようなものは好きじゃない。

 結婚は好きな人とするべきだと思うし、そんな損得勘定で結婚したところで結局どちらも幸せになれないと思うから。


「はい。私が公の場であんな発言をしてしまった以上、宮野くんを私から引きはがそうとする分家の人たちや天城家と懇意にしたい人たちから狙われてしまいます」


「……それ、天城が公の場で俺の名前出さなければよかっただけなのでは?」


「しょうがないじゃないですか。あんなにたくさん婚約の話をされて疲れてましたし、それ以上に本気で宮野くんとしか結婚したくないんですもん」


「ですもん。じゃねぇよ。まあ、俺への実害の件に関しては自分で何とかする。だから全然気にしなくていい」


 自分に降りかかる火の粉くらい自分の手で何とかしてこそだ。

 天城が背負う必要のない話だ。


「でも、私のせいで……」


「お前のせいじゃないよ。天城は天城のやりたいことをすればいい。それでこそ俺の知ってる天城乃々だ」


「良いんですか? わざわざ私にそんなこと言って」


「いいさ。むしろ、いつまでも俯いてるお前を見ている方が俺は嫌だからな」


 多少強引に距離をつめられたり言い寄られたりするくらいなら全然良い。

 なんなら、最近は慣れてしまった感がある。


「わかりました。じゃあ、もう深く考えるのはやめます! 今日からはいつもみたいにグイグイアタックするのでそのつもりでいてくださいね」


 ウインクをしながら天城は元気にガッツポーズをした。

 これでこそ天城乃々だ。

 本調子を取り戻した天城を見て安心した俺は思考を別の方向へと向ける。


「本家に行く移動手段と日程とかが決まったら教えてくれよ。一応準備しておくから」


「わかりました。では、わかり次第連絡しますね」


「頼んだ」


 こうして俺は天城の家で夕飯をご馳走になりそのまま家に帰った。

 家に帰ってすぐにスマホが振動する。

 相手は卓也からだった。


「もしもし?」


「陸さんっすか? 今時間とか大丈夫ですか?」


「ああ、全然大丈夫だが。何かあったのか?」


「それが、陸さんに頼まれてた近藤? って言う男子生徒が変な輩とつるんでるのを見まして。一応報告しておこうと思いまして」


 近藤が変な輩とつるんでるか。

 いよいよきな臭くなってきたな。

 保険をかけといて正解と言ったところか。


「ありがとう。ちなみに変な輩って言うのはどんな感じの奴だった?」


「そうっすねぇ~半グレというか、まともな人には見えませんしたね。マジで気を付けてくださいっす」


「わかった。忠告ありがとうな」


「いえ、では自分はこれで失礼するっす」


 卓也はそう言うとすぐに電話を切った。

 面倒なことが起きなければいいが。

 そう願いながら、俺は眠りについた。


 ◇


「陸さん! どうかしたんすか?」


「いや、こっちで絡まれてる女の子がいてな。この子だ」


「ん? 中学生っすか? こんな時間にこんな場所で一体何を?」


「いや、それは俺らも言えたもんじゃないだろ。こんな時間に中学生がいるんだからよ」


「そういや、そうっしたね!」


 卓也は馬鹿みたいに笑っていた。

 相変わらずこいつは能天気な奴だ。

 まあ、追われていた女の子を保護したしこれ以上この場に長居するのは危険だな。


「悪いけどこの子を人通りの多い場所まで送って行ってくれないか?」


「え? いいっすけどなんで陸さんが送って行かないんすか?」


「そりゃ、アレだろ。その子を追いかけてた奴らを目の前でボコっちまったから怖がられてるんじゃないかと。さっきから一言も話してくんないしな」


「見た目が怖いからじゃないんすか~」


「お前、覚えてろよ?」


「やべっ、じゃ、俺はこの子送ってくるんで! 失礼します」


 卓也はそそくさと俺の後ろに隠れていた女の子を連れて大通りの方に歩いて行った。

 にしても、なんであんな子が追われてるんだ?

 見てくれは良かったけど、歳はかなり若そうに見えたぞ?


「ロリコン集団にでも目をつけられたのかね」


 だとしたらお気の毒だな。

 まあ、そんな奴らは今伸びてるわけだけどさ。

 女の子を追いかけていた奴らが倒れてるところまで戻ってくると、適当な奴の腹に蹴りを入れてたたき起こす。


「なんであんな女の子をこんな大人数で追っかけてたわけ? あんたらロリコンなん?」


 中学生の女の子を男数名で追いかけるなんて普通に考えて異常事態だ。

 乗り掛かった舟だし、こいつらがあの子に再び手を出さないようにしておきたい。


「お前、なんかに、いうわけあるか」


「はぁ、状況わかってるわけ? こっちはあんたらが吐くまでボコってもいいんだけど?」


「んで、おまえが関わってくるんだ」


「気まぐれだよ」


 この後、結構な時間ボコったけどこいつらが何か情報を吐くことなくサイレンが聞こえてきたので俺は足早にその場を後にした。


「にしても、本当に芸能人みたいに可愛い子だったな」


 顔立ちから俺たちと同年代に見えたけど、表情は同い年のそれではなかった。

 大人びているというか、冷静と言うか冷たいというか。

 そんな風格みたいなものを感じさせる子だったな。


「綺麗な黒い短髪に吸い込まれそうな紫紺色の瞳。マジで芸能人かよ」


 家に帰る道中で俺はそんなことを呟いていた。


 ◇


「んぁ? もう朝か」


 かなり懐かしい夢を見た気がするけど、なかなか内容を思い出せない。

 中学の頃の夢だったのは覚えてるんだけど。

 具体的な中身まではどうしても思い出せない。


「いてッ」


 起き上がろうとしたら嫌な痛みが頭を走る。

 風邪特有のズキズキする類の痛みだ。


「はぁ、まさかな」


 嫌な予感がして体温計を脇に差し込んでみれば、体温は38.9度。

 完全に熱があった。


「学校は休むしかないよな。この熱で行っても何もできないだろうし」


 流石に成績を気にしているとは言っても、この体調で無理をする利点もあまりない。

 今日はしっかり休んで明日からちゃんと学校に行けばいいか。


「最近はこんな風に寝込むこともなかったんだけどな。何か変な事したっけな」


 思い当たる節はあまりない。

 まあ、精神的に疲れていなくとも風邪なんて引くときは引くものだし。

 原因を考えても答えが出ない以上、考えても仕方がないな。


「とっとと寝るか」


 学校に休み旨の連絡を入れてから再びベッドにくるまって目を瞑る。

 次は昔の変な夢なんて見ませんように。

 そう祈りながら。

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