第31話 婚約の話
「はぁ、私もう帰ってもいいですかね?」
「ダメですよ。お嬢様。天城家の集まりですから。次期当主であるあなた様が離れることはできません」
「だよね。分かってたけどね」
はぁ、本当に嫌になっちゃう。
めんどくさい集まりとか全部どうでもいいから早く宮野くんに会いたいなぁ。
「しっかりしてくださいませ。もう少しで家に帰れるではありませんか」
「そうなんだけど。帰るまでが長いじゃない。本当に嫌になってしまうわ」
「そうおっしゃらずに。ここで下手に問題を起こしますと天城本家から眼をつけられてしまいます」
「わかってるわ。変に目立たないように振舞うわ」
私は菫と会話を交わしてから気を引き締める。
この魔窟で何とかして生き残らなければ。
「はい。そうしてくださいませ」
「ふぅ、よしっ頑張るわよ!」
こうして私は凄くめんどくさい天城家の会合に参加するのだった。
◇
「なんで、今日はそんなにも機嫌が悪いんだよ」
「別になんでもありません。それに私は機嫌が悪くなんかありませんから!」
天城が用事があるといってデートをしなかった日の翌日、俺達三人は天城の家に向かっている途中にそんな話をしていた。
「天城はこういってるけど、辻は何か知ってるか?」
「知ってはいますね。家についてから私の方で陸斗様に説明いたしますね」
辻はにこやかにそう告げてくれる。
これで、何かあったことは確定だ。
問題は一体何があったのかってことだけど。
まったく想像がつかない。
「い、言わないでよ菫」
「ダメですよお嬢様。最終的に巻き込んでしまうんですから」
「おい、ちょっと待て。巻き込むって何の話だ!? 俺は一体何に巻き込まれるっていうんだ」
辻がサラッと恐ろしい事を言うので真顔で聞き返してしまう。
マジで巻き込んでるって何の話なんだよ。
「それも家に着いてからお話しするので今はとりあえず家に向かいましょう」
「……わかったよ」
俺は何とも言えないモヤモヤを感じながら天城の家に向かう。
普段はうざいくらいに絡んでくる天城が今日は一向に口を開く気配がない。
よほど嫌なことがあったのか、それとも俺が彼女に何かしてしまったのか。
どちらにせよ、何かがあったことに間違いはないだろう。
◇
「それで、一体何があったんだ? 昨日の用事と関係してるのか?」
「その通りでございます。昨日、わたくしたちは天城本家の会合に参加していたのです。お嬢様は次期当主でありますからめんどくさいあいさつ回りなどをしないといけないのです」
「……なるほど」
次期当主とか会合とか本家とか。
普通に生きてたらまず聞かないような単語が飛び交う。
改めて聞くと、本当に天城がお嬢様であると再認識させられてしまうな。
「それでなんですが、お嬢様がご婚約の話を多数持ち掛けられまして。このように不機嫌になってしまっているというわけです」
「……は?」
いきなり飛び出して来た婚約と言うワードに俺の頭は一瞬真っ白になるのであった。
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