第28話 尾行が苦手なヤンデレにドッキリしてみた
「うさぎ……可愛いです」
「辻は動物が好きなのか?」
「人並みには好きだと思います。嫌う理由もありませんし」
辻はふれあいコーナーでうさぎをモフモフしながら笑みを作って返答してくる。
普段は凛としているのに、こうやってモフモフしながら笑顔でいる今の辻は普段の完璧超人じみた雰囲気ではなく、普通の年頃の女の子にしか見えない。
正直言って凄く可愛い。
「それもそうか」
「陸斗様はお好きじゃないんですか? 動物」
「普通に好きだな。犬とか猫とか特にな。飼いたいと思ったことは何回もあるんだけど、金もないし育てきる自信もなかったから飼ってない」
「そうなのですね。陸斗様であれば難なく飼えそうですが」
「過大評価だな。俺はただの一般人だし。それよりも辻は飼わないのか?」
天城なら許可を出してくれそうだし、辻も金はある程度持っているだろうから難しくはないと思うんだがな。
「わたくしはお嬢様のメイドです。それ以外にはあまり気を回せないのです。知っているでしょう?」
そう言えばそうだった。
天城に執着するあまり、こいつは授業中でも天城の事を考え続けていたんだ。
そんな奴が動物の世話をできるだろうか?
答えはおそらくノーだ。
「確かにそうだったな。なのに、今日は俺と二人で来てよかったのか?」
「これは恩返しですし、それに助けてもらいましたから。わたくしは陸斗様といる時間が嫌いではないので大丈夫です。他の殿方なら嫌でしたけどね」
なんてキラーワードを言ってくるんだろう。
俺が普通の男子だったら勘違いして告白して玉砕してるぞ全く。
「嬉しい事を言ってくれるな」
「事実ですので。それよりもお気づきですか?」
「ああ。流石にあそこまでガン見されたらな。お前のご主人は尾行が苦手みたいだな」
「得意でも困りますけどね」
視界の端に天城の綺麗な黒い髪がちらちらと映っているのだ。
あれできっと本人は尾行してるつもりなんだろうな。
そう思うとなんだか急に愛らしく見えてきた。
「だな。ま、面白いしちょっとドッキリしてみようか」
「ドッキリ……ですか?」
「ああ。ちょっとこっちについてきてくれ」
俺は辻の手を引きながら、しっかりと天城がついてきているのを横目でもながら人気のない裏道を進み始める。
次第に周囲は昼だというのに薄暗くなっていく。
「り、陸斗様? 一体どこに向かっているのですか?」
「う~ん、まあ、ここら辺で良いかな。ちょっと失礼」
「え、ひゃっ!?」
辻を近くにあった壁の方に立ってもらって、俺はそのまま壁ドンをする。
顔がかなり近くなって俺もドキドキするけど、それよりも辻が正気ではいられなさそうだった。
「り、陸斗様!? こ、こんなお昼からそんな大胆な」
顔を真っ赤にしながらタジタジになって辻は何とか言葉を紡ぐ。
そんな様子の辻にどんどん無言で顔を近づけていく。
あと少しで互いの唇同士が触れ合いそうになった時……
「ダメぇ~~~!」
天城が飛び出して来た。
やっぱり出てくると思った。
「こんなところで何をしてるんだ? 天城」
壁ドンをしていた手を離すと辻はその場に座り込んでしまった。
少しやりすぎてしまっただろうか?
「え、えと、奇遇ですね? 宮野くんも動物園に来てたんですか?」
「いや、無理があるだろ」
天城は何とか偶然居合わせた体を装おうとしてるけど、この状況ではどう頑張っても不可能だろう。
「ぐぬぬ。私を嵌めましたね! 菫まで」
「辻は悪くない。俺が勝手にやったことだからな。辻の事は怒らないであげてくれ」
「ふぇ、ひゃ、ひゃい」
辻は座り込んでへにゃへにゃになっていた。
ちょっとやり過ぎたみたい。
「はぁ、とりあえず菫を運びましょうか。この子こうなると当分動けないくなってしまいますので」
「それは悪い事をしたかな」
へにゃへにゃになって座りこんでしまった辻をおんぶして適当なお店を目指す。
その間、天城に色々な事を聞かれまくったのは言うまでもないだろう。
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