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天才ヤンデレお嬢様の好感度がなぜかカンストしてる件  作者: 夜空 叶ト


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第22話 たまには素直な天城乃々

「お前、やっぱりなんかあっただろ?」


「突然なんですか? あと、そこ間違えてますよ」


「……マジかよ」


 いつも通り俺の家で天城に勉強を教えてもらっている時に切り出してみたが、あっけなく躱されてしまった。

 というか、こいつ俺の間違えに気が付くの早すぎじゃない?

 まあ、ありがたいんだけどさ。


「マジです。多分ですけど、ここの計算が間違ってるから数値が狂ったんでしょうね。解き方は間違っていないので凡ミスを無くせば大丈夫ですよ」


「そうか。ありがとう……じゃなくて!」


「ん? 一体何なのですか?」


 心底わからないといった風に首を傾げる。

 仕草は可愛いんだが、いつもみたいな元気がない。

 俺に接してくるときはいっつも馬鹿みたいに明るくて、空気も読まずにグイグイ来るこいつに元気がないとこっちまで調子がくるってしまう。


「ちょっと前から様子がおかしいんじゃないかって言ってんだよ。元気がないっつ~かさ。なんか悩みでもあるのか?」


「悩みですか。一つありますね」


「おっ。なんだ! 聞かせてくれ」


「どうやったら宮野くんが私と結婚をしてくれるかです」


 どうやら、素直に答える気は微塵もないらしい。

 俺も普段ならばこれ以上踏み込むような真似はしないのだが、今日ばかりは事情が違った。


「はぁ。答える気が無いのはよくわかった」


「へ?」


 隣に座っている天城に向き直ってそのまま向き直る。

 俺の家のリビングにある机は炬燵みたいな感じでそのまま床に座っているタイプの机だ。

 この机も本当は炬燵なのだが、冬場以外は毛布を外して机として使っている。


「どうしても話すつもりが無いのなら、多少強引に聞き出すしかないな」


「な、なにを!?」


「たまには意趣返しをな」


 俺はそのまま天城を押し倒す。

 両手をしっかりと押さえて彼女の綺麗な目を見つめる。

 珍しく、動揺しているようで何かを言おうとしているがうまく声が出せていない。


「い、いきなり襲うなんて、私の魅力にやっと気づいたんですか?」


「そんなんじゃねぇよ。お前がいつまでも素直に話そうとしないから強引に聞き出そうとしてるだけだ。こうでもしないとお前は話してくれないだろ」


「こんなことしても素直に話すとお思いですか?」


 こんな状況でも強情で素直に話す気は全く無いようだな。

 まったく。


「どうだろうな。そんなに話したくないことなのか?」


「……宮野くんには特に話したくないです」


 か細い声でそれだけ返答をしてくれる。

 こんな姿を見せられてしまってはこれ以上強引に聞き出すこともできないな。

 そこまで隠したい秘密なのか?


「はぁ、わかったよ。そこまで隠したいなら聞き出しはしない」


 素直に拘束していた天城の両手を離して座り直す。

 これ以上何をしても話してはくれなさそうだしな。


「……そのまま襲ってくださっても構わないんですよ?」


「んな事しねぇよ。お前はもっと自分の体を大切にしろ」


「してますよ。こんなこと宮野くんにしか言いません」


「そうかい」


 中々に恥ずかしい事を言ってくる。

 ここで照れてるのがバレたら絶対に揶揄われるので、天城から顔を背ける。


「照れてるんですか?」


「そんなんじゃねぇよ」


 実際は結構照れてるのだが、それを悟られるわけにはいかない。

 何とか表情に出ないように努力する。


「そうですか。残念です」


 いきなりしょんぼりしたように肩を落として俯いてしまう。

 本当に何があったんだ?

 普段の天城とは全く雰囲気が違う。

 なんか悲壮感に溢れてるというか、元気がないというか。

 本当に調子が狂う。


「話したくないならもう聞かないけどさ。そんな風にしょんぼりするのはやめろ。なんだか調子が狂う」


「そんなにしょんぼりしてましたか? 私」


「してるな。いつもみたいな元気がない。お前がそんなんだとこっちまで気が滅入る」


 普段隣で馬鹿みたいに明るく振舞っている奴がしょんぼりしてるとこっちまで変な気分になってくるのだ。


「すいません」


「はぁ、謝んなって。お前は俺に気を使わないのがデフォルトだろうが」


 俺に気を使わないのが天城で使い過ぎるのが辻だ。

 今考えると二人を足して割ったらちょうどいい性格の人間になるんじゃないのだろうか?

 いや、それはそれで二人の良さを潰す羽目になるのか。

 それは良くないか。


「私、そんな風に思われてたんですか?」


「まあな。でも、嫌じゃないから。そこだけは勘違いすんなよ」


 最初は戸惑ったし、面倒だとも思ったけど、最近はそんな風に関わってくれるのがとても心地いい。

 だから、何かあるんなら相談してほしいんだけどな。


「そうですか」


「そうだよ」


「じゃあ、一つお願いしてもいいですか?」


「内容によるな。ま、大体のことはしてやるよ」


 こうやって素直に頼ってくれるんなら断る気はない。

 結婚してくれと言われたら流石に断るがな。


「膝枕してもらってもいいですか?」


「……そう言うのって逆じゃない?」


「宮野くんは膝枕されたいんですか?」


「……」


 完全に墓穴を掘ってしまった。

 確かにされたくないかと聞かれれば全然されてみたい。

 でも、ここでそんなことを言ってしまったら負けな気がするから言わないんだが。


「ダメなんですか?」


「別にいいけどさ」


「じゃあ、お願いします」


「はいよ」


 素直に俺はうなずいて胡坐をかく。

 その膝の上に天城が頭をのせる。

 眼下に天城の綺麗な顔。

 なんだか、心臓がドキドキしてきた。


「なんか、落ち着きますね。ふふっ」


「お気に召したか?」


「はい。できれば定期的にこうして欲しいですね」


「それくらいなら別にいいけどな。勉強の休憩時間中とか」


 天城に勉強を教えてもらっている時であれば、休憩時間に膝枕をするのも全然やぶさかではない。

 それで天城が元気であるのならば。


「やった! えへへ」


「そんな顔初めて見たな」


 頬を緩ませて幸せそうにしている天城は素直に可愛いと思った。

 こんな子が俺に求婚してくれてるんだよな。

 そう思うと凄い事だよな本当に。


「可愛いですか?」


「……可愛いよ」


 上目づかいで聞かれたら素直に答えるしかなかった。

 綺麗でサラサラな黒髪を撫でたくなる。

 少しくらいならいいかな?


「……頭、撫でてください」


「わかった」


 正式に許可を貰えたわけだし、俺はサラサラな黒髪を撫でる。

 めちゃくちゃ手触りが良くて、撫でていて気持ちがいい。


「撫でるのうまいですね。経験がおありですか?」


「ないけどね。こうやって誰かの頭を撫でたのは初めてだ。気持ちいいならよかったよ」


 言いながら俺は撫で続ける。

 天城は気持ちよさそうに目を細めてるので嫌がってはいないようで安心した。


「やっぱり。私と結婚してくれませんか?」


「また、それか」


「何度でも言いますよ。私はあなたのことが大好きですから」


「俺は天城に好かれるような事をした覚えもないし、そんな大層な人間でもないんだけどな」


 未だに天城がどうして俺のことを好きでいてくれてるのかわからない。

 聞いても答えてくれないし。

 一体何が天城を動かしてるのか。


「いいえ、宮野くんはすごい人ですよ。少なくとも私にとってはね」


 今まで見た中で一番美しい笑みのはずなのに、何故だかその笑みには儚さのような、目を離すとすぐに消えてしまいそうな危うさを感じてしまった。

 何故、こんなことを感じたのか。

 俺自身、わかることができなかった。


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