第9話 週7で天城に会うことになった件
「えっと、なんだか似たような展開に遭遇したような気がするんだけど。詳しく説明してもらってもいいか?」
「だから今言ったとおりですよ。宮野くんが菫の家庭教師になればいいんですよ。週三回でしっかり報酬も出しますよ?」
「待てよ……現状で俺は天城と週に一回デートをする約束をしているよな?」
「ですね。加えて週に三回宮野くんの家で私が勉強を教えています」
ふむ。
ここまでは俺の知っている契約内容と同じだ。
そして、今天城が口にした内容をそのまま受け取るとしたら俺の一週間は毎日天城と関わると言う事になるのではないだろうか?
「お、お嬢様?」
辻も何も聞いていなかったようで困惑気味に天城のことを見つめていた。
というか、辻って成績が良くないのか?
頭が悪そうな印象はないんだが。
どちらかというと、頭がいいほうだと思っていた。
「いいじゃない。それに、そろそろ勉強がきつくなってきたんじゃないの?」
「うぐ……」
どうやら図星みたいで苦い顔を浮かべる。
本当に勉強が苦手みたいだ。
「というわけで、今日から宮野くんが菫に勉強をこの家で教える。もちろん交通費も支給するし、急用が入ったときはキャンセルしてくれてもいいので。どうでしょう?」
こちらも破格の条件だった。
だが、こうなると俺が一人でいられる時間が極端に減ってしまう。
流石にそれは……
「ちなみに金額は三時間で二万円でどうかしら?」
「やります」
貧乏苦学生の俺に考える余地なんてなかった。
バイトができないし、そんな時間もないと思っていたけど家庭教師。
それも同学年のなら自分の復習にもなるし、お金も手に入る。
まさに一石二鳥というものだろう。
「よかった。じゃあ、さっそく今日からお願いしてもいいかしら。部屋は……そうね。菫の部屋でして頂戴」
「わかった。辻もそれでいいか?」
「……はい。お嬢様の意向に従います」
「じゃあ、私のことはいいから菫は宮野くんを部屋に案内して勉強を教えてもらって。私はゆっくりしてるから何か問題があったら報告して頂戴」
天城は完全に辻にすべてを任せるようだった。
これは、本格的に辻との付き合いも長くなりそうだから仲良くしたほうがいいな。
◇
「ここがわたくしの部屋です。どうぞおくつろぎください」
「そこまでかしこまらなくてもいいんだが……これから一緒に勉強をするわけだしそこまでへりくだられるとやりにくい」
「そうなのですか?」
「ああ。同い年なんだしもっと気さくでいいんだよ。どうしても俺と仲良くしたくないっていうんなら話は別だけどな」
本当に仲良くしたくないと面と向かって言われたら、泣きたくなるかもしれない。
いや、家に帰ってから少しだけ泣くだろう。
俺のメンタルはそこまで強くないしな。
「そういう事でしたら。ですが、敬語はお許しください。癖のようなものなので」
「わかった。じゃあ、さっそく勉強を始めるか」
辻の部屋は天城の部屋と違って生活感がとても感じられた。
もちろん汚いとか散らかっているとかそういうわけではない。
ピンク色の家具が置かれており部屋の隅には大きな本棚がおかれており、中にはたくさんの専門書のようなものが敷き詰められていた。
「よろしくお願いします」
「とはいっても、辻がどこまで勉強ができるかわからないからな……」
どう教えたらいいものか。
二年に始まってからまだ一度もテストを受けていないから客観的に実力を計ることが難しい。
「わたくしは今まで赤点ギリギリの点数でした。ですので、できれば高校一年生の復習から始めて頂けるとすごく助かります」
「わかった。じゃあ、そうしようか。苦手教科とか、逆に得意教科とかはあったりするか?」
家庭教師をする以上は彼女を全教科平均点くらいは取れるくらいまでにするつもりではあるんだが、何が苦手で何が得意かを知っておいたほうがいいだろう。
「英語は得意です。英語は一年生の頃からそれなりにできて80点台は取れています」
「なるほど。じゃあ、英語はいったん後に回してもいいか?」
「大丈夫です」
「じゃあ、苦手科目は何なんだ?」
「英語以外です。英語は昔から身内に話す人がいて一通りわかるんですけど、それ以外が全くダメで。今まで何とか赤点を取らないようにしてたのですが、そろそろ厳しくて」
辻は恥ずかしそうにもじもじしながら言ってくれた。
対面に座る彼女の頬には茜がさしており照れていることがうかがえる。
「了解だ。じゃあ、数学からやっていこうか。数学は基礎を押さえておけば何とかなることも多いからな」
「わかりました。よろしくお願いいたします。陸斗様」
こうして俺は辻の家庭教師になったのだった。
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