モラルの悲鳴(おめい) その5・・・海の叫び
海水は静かに語り始めた。
「俺、ホントはもっとキレイだった 光を映し、空気を映し、瞳に映し、子供たちが歓声をあげても、飛び込んでも、全部喜んで受け止められた
確かに時には油がこぼれ、濁ったことも何度かある
台風や嵐で、荒れ狂い、土砂が一気に流れ込み、どうしようもできないこともあった
それは故意じゃない 誰も望んだことじゃないはずだ」
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海底が低く唸った。
「だが今は違う 俺の上に積もるのは、ペットボトル・ビニール袋・タイヤ・紙コップ・弁当の容器・・・砂に埋もれていくのだ」
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海水は怒りをにじませる。
「汚れた海は、やがて、空気まで汚れを生む 有害物質は気化し、大気をめぐり、雨になり、また強いパワーを吸収し、地上に降りてくる 名づけるとしたら、"クローン雨"
その悪循環を構成したのは、俺じゃない おまえたち人間だ」
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深海は警鐘を叫ぶ。
「このままじゃ、次に沈むのはゴミじゃない、未来そのものだ
キレイだった俺たちを取り戻す気はないのか?」
海だけの問題じゃなくなる・・・・・
一人の意識だけじゃ、何も変えられない。
住人ひとり、一人の意識が、この先の未来の分かれ道なのだ。
海水や海底・深海の叫びは、決して遠い世界の話ではない。
彼らを汚せば、やがて空気や大地を汚し、それは人間自身の生活に跳ね返ってくる。
自然ののごりと人間の恋による汚れの違いに気づき、悪循環を断ち切ること。
それこそが「きれいだったのに」という後悔を繰り返さない唯一の道なのかもしれません。
最後まで拝読ありがとうございます。
じゅラン椿