始まりを告げる夜明け 其ノ壱
其処はまるで神秘の国のようだった。
池の中央には祈る様にして座る黒く光る鎧を着た騎士がいた。池の向こうに見えるヒマワリ畑は風でなびかずまるで時が止まっているようだ。ヒマワリは太陽の方を向くと言われる。そのヒマワリが向く方の逆を向くのには意味があるのだろうか?
空を見れば二つの月が見える。二つの月?と疑問を抱いたが今はそれどころでは無い。取り敢えず騎士へと歩み寄る。水面を歩くのはかなり不思議な物だしかしこれ程迄に微動だにされないとゲームのバグかと疑ってしまう。
騎士の周りをうろちょろと歩き回り騎士を観察する。するとピコンと騎士のステータス?らしき物が現れた。名前は……読めないまるであの研究所の様な黒い「■」に覆われている。黒の鎧は隣に突き刺された大剣とは正反対の色
「んーー…どうすればコイツと戦えるのやら」
取り敢えずこの池の向こうに見えるヒマワリ畑に以降、そう思いそちらへと歩んだ。……いくら歩いてもヒマワリ畑に近付けない、池から抜け出せない。騎士との距離は歩き出してから変わっていない。察するに此処がこのフィールドの端であるのだろう
「ハリス、ここって本当に何なの?」
「……分カリマセン」
ハリス、最初はお助けしてくれる便利なペットかと思っていたが此処に来るまでにバトルを手伝ってくれたりはしなかった。コイツもコイツで何なんだ?
時計を確認する。今は大体六時近く、日が昇ってきた頃合いだろう。プロジェクト・ウィリアンダーズは特殊な状況でない限りは現実の時間と同じ様に日が昇り月が現れる。冬では無いから日が昇るのが遅いわけでは無い。時が止まっているのだろうか
騎士を見て、このフィールドを見て思う。あの声はこの騎士の声だったのか。頭に直接語り掛けて来ていた。しかし、この時の止まった世界に連れて来て一体何をすればいいんだ?最悪この騎士を蹴ってしまおうかとも思った。
騎士に背を向けた時またあの声が耳にに流れ込んできた。
『帰るのか』
「帰れるなら帰ります」
騎士の方をふり返った。突き立てた剣を握り静かに佇む姿に身が震えた。静かに吹く風が地に咲く
『あの日の約束を結びし者の末裔…』
兜の隙間から騎士の凍てつく目が覗く
『二つの月を見上げ…あの日を悔いる日々…』
騎士は宇宙を見上げ手を空へと伸ばす。伸ばした手をゆっくりと宇宙の月を掴むように握り込む
『悔い続け目をそらし続ける日々…お前達はどう立ち向かう明日に。あの日の人類が紡いだ今をどう紡ぐ?』
ゆっくりと、水面に騎士は立った。時が止まった世界が動き出したのか風が吹き出した、流れるように花びらが舞う
『さぁ、見せてくれ」
騎士は隣に突き刺された大剣を抜き静かに唱えた
『黒雨・転来』
黒い雨が降り注ぐ時世界は黒一色に塗り染まる




