58話 第六記述“転化の灯”と、再構築ガチャ
ルートεを進んだ先は、灰色に霞む薄明の空間だった。
記述台座はまだ現れていない。だが、空間の中央に、不規則に浮かぶ“ガチャ端末”があった。
「……ここでまた来たか」
レイは苦笑する。「スキルガチャ、今回はどんな意図だ」
《スキル再構築ガチャ》 《分類:記述連動型/観測適応》 《条件:記述者全員の共鳴到達度が一定値に達したため開放》
「共鳴って……つまり、俺たち全員の“想い”が連動してるってことか」
カイルがうれしそうに言う。
「レイ、引きなよ」
ヒカリが微笑む。「今のお前なら、ただの運任せじゃない」
「……分かった」
レイが端末に手をかざすと、虹色の記述文字が空に舞い上がり、回転し始める。
《ガチャ結果:スキル《リカレント・コード》獲得》 《分類:再構築型・記録適応型》 《効果:過去の記述に“追記”し、現実に反映する能力》
「……“過去の記述を書き換える”ってことか?」
ノーラが驚く。
「いや、正確には“追加”だろうな。上書きじゃなく、残す形で未来へ接続する」
セラが説明を補足した。
そのとき、空間に再び台座が現れる。
《第六記述者:レイ》
《記録内容:過去と未来の架け橋としての自己定義》
「俺が記すのか……この“再構築された俺”を」
レイが台座に触れると、彼の記憶と新たなスキルの光が混ざり合い、空間に記述が走る。
──『過去に意味がなかったことなんて、一度もない』
──『記録は終わらない。俺たちが、それを何度でも繋ぎ直せる限り』
《第六記述“転化の灯”認証完了》
《ルートζ開放》
空間に灯る灯火が、進むべき道を照らす。
「レイ……その力、未来を変える鍵になる」
ノインが静かに言う。
「でも変えるのは俺たち全員だ。記述は、共に積み重ねてきたものだからな」
俺たちは第六の記述を胸に、新たな灯を頼りに、次の未来へと歩き出す。




