表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/71

57話 第五記述“青の反射”と、沈黙の誓い

 ルートδを越えたその先は、静謐な水面のような空間だった。

 天と地の区別が曖昧な場所に、俺たちは降り立った。


 「……ここ、音が反響しない」

 ノーラが辺りを見渡す。「声を出しても、返ってこないの」


 「無音領域……いや、“反響を拒む層”か」

 セラが記述装置を展開する。「ここは、自己と向き合うための場所」


 そんな中、ノーラがそっと前に出た。


 「次は……私に書かせて」


 「ノーラ……」


 「ずっと“誰かのサポート役”で、自分を記す資格なんてないって思ってた。でも、今なら……分かるの。誰かを支えるってことは、“自分自身の意志”でもあるって」


 静かに台座が現れる。


 《第五記述者:ノーラ》

 《記録内容:沈黙の中で選び続けた意志》


 ノーラが両手を添えると、水面が彼女の姿を鏡のように映し出す。


 ──『言葉にしなくても、伝わる強さがある』

 ──『沈黙は、逃げじゃない。“選び続けた証”だ』


 《第五記述“青の反射”認証完了》

 《ルートε開放》


 空間に青い光が走り、道が先へと続く。


 「ノーラ……お前って、ずっと強かったんだな」

 レイが思わずつぶやく。


 「違うわ。強くあろうと、足掻いてただけ」

 ノーラはそっと笑った。「でも、それも記していいって、この旅が教えてくれた」


 水面に小さな波紋が広がり、それがやがて、確かな軌跡となって残っていく。


 俺たちは、その静かな“青の記録”を胸に、次の記述へと足を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ