5話 ガチャと代償
村の小さな宿で一息ついたあと、俺はノーラの前でスキルガチャのインターフェースを起動した。
《スキルガチャモード起動》
《現在のスキルポイント:1》
「よし……単発、回すぞ」
「単発は爆死率高いですよ!?せめて10連貯めてから──」
「気になるから回す」
止める声を無視して、俺は“スライド”を選択。ガチャ演出が始まった。
カラフルな光、回転するスキルアイコン、そして──
《獲得スキル:虚数再構築(★5)》
《スキル種別:特異系|代償型》
「おおぉっ……!★5……!しかも“特異系”!」
ノーラが目を輝かせる。だが、その次の表示で空気が変わった。
《警告:このスキルは“代償”を伴います》
《発動時、記憶の一部が“上書き”されます》
「は?」
《確認:スキルをインストールしますか?》
「……おい、俺の記憶って、なんで勝手に素材にされてんだ」
「それが“この世界のガチャ”なんですよ。スキルはただじゃない。リソースがなければ、代償を払うしかないんです」
「なら、もっと先に言え」
「すみません理論優先でしてぇぇ……!」
俺は軽くため息をついた。ツッコミが間に合わない。
だが、迷ってる時間はない。スキルが必要だ。命の保証がないこの世界で、躊躇は死に直結する。
「いいさ。どうせ“捨てたい記憶”もいくつかある」
「……それ、地味に重い発言ですよ?」
インストールを選ぶと、頭に激痛が走った。電流のような感覚。視界が一瞬、白黒に切り替わる。
──気づけば、俺は少しだけ“何か”を忘れていた。
《スキル“虚数再構築”を取得しました》
《効果:現実空間に存在しないデータを一時的に実体化。対象の一部変換・強化が可能》
《副作用:記憶欠損/人格干渉の可能性あり》
「……いよいよRPGっていうより、ホラーの域に踏み込んできたな」
「ですね……でも、そのスキル、本当に強力です。“常識の枠外”に干渉できるんですから」
代償付きのスキル。リスクとリターンが常に隣り合うガチャ。
だが、この世界で生きるには、こういう力を使いこなすしかない。
「……まぁ、使いこなしてみせるよ。ツケがどんなにエグくてもな」
この時はまだ知らなかった。
この“虚数再構築”が、後に“ある組織”の興味を引き、俺自身がその標的にされることを──