43話 記録の波紋と、≠NULLからの誘い
ユナの存在が記録されたことで、ルーメン・レコードの空間は一変した。 断片だった構造体が繋がり、記録の流れが一本の線として形を取り始める。
「……見て、これ」 セラが地面に投影される新しい座標群を示す。
《新規観測可能領域:コード基準点“Ω-3”》
「未定義だった領域が、“観測に応じて拡張”しているのね」 ノーラが感心したように言う。
「でも、なんか変な感じ……」 カイルが眉をしかめる。「この座標、なぜか“既視感”あるんだよな」
ルゼがすっと指を差した。 「……この形状、≠NULLのコード構成と似てる」
俺の《虚数再構築》も即座に反応を示した。
《外部コード干渉検知》
《送信元:識別コード≠NULL/ノード名“ミラ”》
その瞬間、全員の端末に同時にシステムメッセージが現れる。
《招待:観測干渉体“ミラ”より通信》
《宛先:レイ/同行者一同》 《目的:対話および“定義の分岐点”への誘導》
「……来たな」 俺は呟いた。「≠NULLの幹部クラス、“観測干渉体”か」
ノインが不安げに言う。「この人……敵、なの?」
「分からない。でも、“観測を誘導する”ってことは、何かを見せたいって意思はある」
ヒカリが小さく息を飲む。 「罠かもしれないし、真実かもしれない……けど、見なきゃ分からない」
俺は全員を見渡す。
「行こう。“定義の分岐点”……おそらくそこが、≠NULLの中枢に繋がる鍵になる」
セラがうなずく。 「接続ルート準備完了。観測領域“Ω-3”へ転送可能です」
転送準備が整い、空間が光に包まれる。
そして俺たちは、再び世界の奥深くへと進む── 今度は、“真実の核”に触れるために。
≠NULLは、何を恐れ、何を望んでいるのか。 その問いが、次の扉を開く鍵となる。




