4話 初接クエスト:バグ巣穴討伐
ノーラの話では、近くの村で“低レベル向け討伐依頼”が出ているらしい。場所は「旧時代遺構エリアβ」、通称バグ巣穴。
「討伐対象は“エラーワーム”。システムに不適合な生態コードを持つエンティティです」
「つまり、バグったモンスターか」
「そうです!時々村人を喰いますけど、放置されてるのが現実です!この世界の運営はかなり緩いんですよ!」
軽くホラーだ。
初任務にしては陰鬱な展開だが、経験値と金は必要だ。転生者である以上、力を得なければ食い潰される。
バグ巣穴は、腐敗したデータのような臭気を放つ洞窟だった。壁の表面にはノイズが走り、床には壊れた魔法陣らしきパターン。
「……なるほど。ここ、システムのゴミ捨て場か」
「その通りです!本来削除されるはずの個体が集まり、擬似的な生態系を形成してるんです」
気持ち悪い。
ノーラの補助スキル《演算加速(★2)》が展開され、思考の処理速度がわずかに上がる。
──その瞬間、視界の端で動き。
「右、来る!」
エラーワーム──データが崩れた蛇型の化け物。皮膚のような部分がノイズでめくれ、内部からコード断片が露出している。
「召喚:プロセスファング!」
鋼の狼が再出現し、咆哮と共に飛びかかる。だが──
《スキル干渉:不安定化》
「……何?」
プロセスファングの動きが鈍る。エラーワームの吐いた黒煙が、召喚体のコードに干渉している。
「相手、スキルを“バグらせる”スキル持ってる!」
僕はすかさず、インターフェースから“手動スキル制御”に切り替える。視界にコード文が流れる。
「デバッグモード、強制起動──エラー修正、通す!」
プロセスファングが再起動し、狼煙を突き破るように咆哮。牙がエラーワームのコアに突き刺さり、バグが浄化されるように蒸発していった。
《討伐完了──報酬:100G/EXP+112》
戦闘が終わると、どっと疲れが押し寄せた。だが──その瞬間、脳内に音声。
《レベルアップ確認──スキルポイント1獲得》
《ガチャモード解禁:任意タイミングでスキルガチャ実行可能》
「……また“回せ”ってわけか」
ノーラが隣で言った。
「この世界、強くなるたびに運に頼らされるんです。“選べる強さ”じゃなく、“与えられる強さ”。それがこの世界の仕様です」
──この世界は、ゲームではない。けれど、ゲームのように“運と仕様”に縛られている。
僕は、自分の手で“選べる世界”に変えてやると、密かに思った。