33話 再起動する旅と、未完の地図
ミラー・コアとの戦いを終えた俺たちは、再び旅を始めていた。
世界は静かに変わり続けている。 再定義された空と大地は穏やかに広がり、各地で人々が新たな暮らしを築いていた。
俺たちの目的も、もう“戦い”ではなかった。 それでも、歩く理由はあった。
──この世界が、どこまで広がっているのか。 ──その中に、まだ知らない“真実”が眠っていないか。
「このあたりの地図、古いやつとはまるで違うわね」 ノーラが新旧の地図を見比べながら言った。
「再定義の影響で、地形そのものが書き換わった可能性がある」 セラが補足する。
「じゃあ……この先に“前にはなかった土地”があるってことか?」 カイルが地図の白地部分を指差す。
「もしかしたら、そこで何かが始まってるかも……!」 ヒカリの目が期待で輝いている。
ルゼは黙って頷き、背中の短杖を軽く叩いた。
俺はふと空を見上げた。
影のレイ──かつての自分の一部は、今も心の奥で静かに息づいている。 それは後悔ではなく、力になっていた。
《統合後スキル:残響定義/双軸構成 展開可能》 《新規支援モード:時間分岐予測アシスト 起動》
「……こっちの道が、正解みたいだ」
仲間たちは、何も聞かずに頷いた。 もう、問いかける必要はなかった。
白地の地図を、俺たちは塗り潰していく。 未知の街、未知の存在、未完の記録──それが待つ場所へ。
この世界は、もう“完成された物語”じゃない。 俺たちが選び、書き足し続ける、終わらない一行の旅路だ。
「さて、今日の目的地は……どんな謎が出てくるかな」
どこかでまた、あのような存在が目を覚ましているかもしれない。 記録の影、選ばれなかった者、まだ観測されていない希望。
──けれど俺たちは、前を向いて進む。 なぜなら、この旅が“世界そのものの書き換え”なのだから。




