3話 初接触と自称・魔法学者
鋼鉄の牙が空気を裂いた。
プロセスファングが敵の金属獣に噛みつき、機械音の悲鳴が響く。火花とともに、相手のコア部が破裂して、データの欠片のように消滅した。
《戦闘終了──獲得経験値:+46》
《召喚ユニット:プロセスファングは自動帰還します》
召喚獣が光となって消えるのと同時に、僕はその場に膝をついた。精神力の消耗が大きい。スキルを使うということは、この世界の“現実を書き換える”行為なのだ。
「……この世界、面白いな」
その時。
「す、すごい!あなた、今スキルを使いましたよね!?」
振り返ると、そこにいたのは──白衣を着た少女だった。赤い眼鏡、外跳ねの黒髪。杖ではなくタブレット端末のような板を手にしていた。
「こんにちは。私はノーラ=マグナフレア。フィロス王立魔法学園・第四研究局の特別派遣者です!」
「長い……。何してるの?」
「この辺りで“転生体”と思しき魔力波形を検知して追ってきたら……あなたの召喚を見て確信しました!」
まるでオタクのように興奮気味に話す彼女は、自称“魔法学者”。異世界の魔法を、プログラム的に再解釈している変わり者らしい。
「あなた、転生者ですね? “コードの波動”が明らかに原住のものと違います」
「……まぁ、否定はしないよ」
「なら協力しましょう!私も異世界の法則を解析したくてたまらないんです!転生者との共同実験なんて、研究者冥利に尽きますっ!」
勢いで勝手に話をまとめる彼女に、少し呆れながらも、悪い気はしなかった。
この世界には、“こちら側”の感覚を持った人間もいる。彼女を利用できるなら、情報も引き出せる。
「条件がある。戦えるなら連れていく。ダメなら置いてく」
「はいっ!一応、サポート魔法特化型です!スキルも5つ持ってます!──全部★2ですけど!」
……少し不安になった。
けれど、そう悪くない出会いだった。