24話 逆転因果と、破壊者の選択
≠NULLが放った“全構成コード断片の反転”──それは、時間と空間、因果の全てを巻き戻す力だった。
空間がループし、俺たちが斬ったはずの柱が再び立ち上がる。
「これ……無限に戻される……!?」
ノーラが顔を歪めた。
「いや、違う。これは“反復”じゃなく“逆順定義”だ」
俺の《虚数再構築》が解析を進め、通知を発する。
《検出:強制因果逆転コード》
《副作用:記憶・感情・経験の順序が再定義されます》
「記憶すら、巻き戻されるってことかよ……」
カイルが歯を食いしばる。
セラの光が、ヒカリの身体を保護するように包み込んだ。
「このままでは、ヒカリの記憶も消去されます……!」
「それだけは──させない!」
ルゼが《幽語》を発動、空間に干渉ノイズを発生させ、≠NULLの定義操作を一時中断させる。
その隙を突いて、俺はスキルガチャを起動する。
《緊急抽選モード・条件:因果構造干渉中》
《スキルガチャ 起動──》
──スロットが走る。選べない。けれど、信じる。
《獲得スキル:虚構位相転写〈パララックス・バースト〉》
「来い……これが、俺たちの“反撃”だ!」
《発動:パララックス・バースト》
≠NULLの因果定義フィールドを強制跳躍。現実と虚構、記憶と未来の位相が逆転する。
その一瞬、俺は“この世界に来る前の自分”を垣間見た。
──孤独だった。誰にも期待されず、ただ、空白の中にいた。
だが今は違う。
隣には、仲間がいる。
「過去を拒否するんじゃない。“今”を肯定するんだ!」
俺の叫びと同時に、仲間たちのスキルが共鳴する。
ノーラの《アーカイブ・リアクト》が記憶干渉を中和し、カイルの《グラビティ・クラッシュ》が因果の一点を破砕。ルゼの《幽語》が敵コードに拒絶命令を上書きする。
そして、ヒカリが光の剣を振るい叫ぶ。
「僕は、ここで“選ばれなかった未来”を断ち切る!」
──≠NULL本体が一瞬、揺らいだ。
《エラー:因果逆転抵抗値 オーバーフロー》
《CODE-FRAME Ω-Nullの安定性が低下しています》
俺たちの反撃が、ついに≠NULLの本体に亀裂を生じさせた。
「次で決める……終わらせるぞ」
その刹那、≠NULLが初めて“感情のような声”でつぶやいた。
「私も……かつては、誰かに“作られた”存在だった」
──やつにも、始まりがあった。
だが、それを超えて進むために。
俺たちはこの戦いを、終わらせなければならない。




