22話 本体との邂逅と、定義戦の序章
核心層の扉を越えた先は──まるで無音の宇宙だった。
音も色も温度もない。そこにあるのは、ただひとつ。
≠NULLの“本体”。
それは空間全体と一体化しており、もはや形すら持たない存在だった。 だが、意志は確かにそこにあった。
《アクセス確認:転生コード No.017/構造再定義権限 保持者》
「君が、この世界の“最終質問”か」
≠NULLの声は、すでに断片ではない。完全に統合された存在の語りかけだった。
「俺たちは、“終わらせに”来た」
俺の返答に、空間が微かに揺れる。
≠NULLは淡々と答える。
「我々は、全ての選択と結果を記録し、保管する。それが世界維持の最適解だった」
「けど、それは“過去を閉じるだけ”だ。未来は、選ばせるべきだ」
ヒカリが前に出る。「僕は、作られた。でも……“誰かと繋がって、生きたい”と思った」
ノーラも続く。「選ばれなかった研究者でも、“今”を誰かと創れる」
カイルは拳を握りしめる。「壊れた過去でも、立って前に進める」
ルゼが短く告げる。「定義じゃない。存在は……意思」
セラが光を発しながら言う。「私のコードは守るためにある。誰かの命令ではなく」
≠NULLが静かに応じる。
「理解はする。しかし……“世界はそれに耐えられない”」
その瞬間、無音の空間に亀裂が走った。
《最終防衛機構:CODE-FRAME Ω-Null 展開開始》 《定義戦(Definition Conflict)フェーズ1へ移行》
「これは……コードそのものとの戦争か」
俺たちの前に浮かび上がる、巨大なコード構造体──それは、世界を支えていた“定義の柱”だった。
「この戦いで勝たなければ、俺たちは“物語から抹消”される」
《スキルガチャ:連携統合シフト・発動条件達成》 《ユニゾン・コード抽選中……》
スロットが再び回り出す。だが今回は、俺だけではない。
仲間たち全員にスキルガチャが起動し、各々の思考と絆から“共鳴進化”が発生していく。
──これは、世界そのものを懸けた再定義戦。
定義されるか、選び直すか──
その決着は、次の一瞬に託された。




