21話 ≠NULLの核心と、拒絶されし者たち
≠NULLの核心断片──それは人の形をしていた。
白と黒が混ざり合うようなフォルム。顔は仮面に覆われ、無数のコードが体中から枝のように伸びていた。
「異常者、相澤レイ。お前は、この世界にとって“修復不可能なエラー”だ」
≠NULLの声は、耳ではなく脳へ直接響いてくる。多重音声、異なる言語、無音の叫びが同時に押し寄せる。
「いいや……俺は“可能性”だ」
俺は剣を構える。
「この世界を閉じる理由も、過去を維持する意味もない。今ここで、お前に“再定義”を突きつける」
≠NULLの仮面に、ほんのわずか亀裂が走った。
「ならば見せろ。“人間”とは、どのようにして世界に抗えるのか」
その瞬間、空間が裏返り、戦闘領域が展開された。
《戦闘開始:≠NULL構成体・断片核 No.01》
《特殊条件:因果逆転/対象の行動予測を上書き》
「未来を……書き換えるだと?」
俺の動きが封じられる寸前、ノーラの魔導式が割り込んだ。
「いいえ、“それでも抗える”のが、私たちの意思よ」
《スキル発動:アーカイブ・リアクト》 コードの未来予測領域に干渉し、≠NULLの予測優位を打ち消す。
カイルが拳を構え、スキルを展開する。
「ぶち破るには、まず殴る!」
《スキル発動:グラビティ・クラッシュ》
重力場の一点集中で、≠NULLの右腕を粉砕した。
「……有効。だが、処理可能範囲」
≠NULLの身体が再構成され、コードの触手がセラとヒカリを狙う。
「ヒカリ、今だ!」
「──リンク・シンフォニア、全力展開!」
光が全員を包み、リアルタイムの連携が発動する。
ルゼが最後の一撃に力を込める。
《スキル発動:幽語・拒絶層》
≠NULLの内部コードに“存在拒否”を植えつける。
「存在を認めなければ、支配もできない……」
≠NULLがつぶやいた。「この構造は……想定外。否定による共鳴……」
俺は踏み込む。「俺たちは、定義されるために生まれたんじゃない。選ぶために、ここに来た!」
《ユニークスキル・幻鏡界層・強制融合モード 起動》 《目標:≠NULL断片の情報反射》
反射された≠NULLの干渉コードが、逆流する。
仮面が割れ、内部の“人間のような瞳”が一瞬だけ露になる。
「君は……誰だ」
≠NULLの声が、まるで戸惑いを含んだように震えていた。
その時、回廊の空間にひびが入り、核心層の扉が姿を現す。
「……この先に、“本体”がいる」
ルゼがぽつりと呟く。「今までのは、ほんの一片」
俺たちは互いを見回し、無言で頷いた。
──これは終わりではない。
次が、本当の始まりだ。




