2話 プロセスとスキルツリー
草原に吹く風が静かに髪を揺らす。
僕は立ち尽くしていた。身体は動く。五感もある。でも、違和感がある──いや、追加されている。
「表示:スキルインターフェース」
無意識にそう言った瞬間、視界に半透明のパネルが浮かび上がった。脳内に直接響く電子音。
《スキルガチャシステム、初回起動》
《転生者特典:★5スキル1個確定。初回10連、無料》
「……ガチャ? スキルって、あのスキルか?」
現実のソシャゲ風に10個のアイコンがくるくると回り、光の演出と共に停止する。脳内に“結果”が流れ込んできた。
【獲得スキル一覧】
・デバッグ視界(★1)
・オート回避Lv1(★2)
・構造解析(★3)
・エラー吸収(★3)
・物理演算干渉(★4)
・ナノ修復(★2)
・言語ハック(★1)
・マジックオーバークロック(★4)
・《召喚:プロセスファング》(★5・レア)
・エナジーリローダー(★3)
「★5来た……召喚系か」
召喚:プロセスファング──説明によれば、システム世界に存在する“仮想プロセス獣”を一時実体化して戦わせる高位スキルらしい。未知数だが、強力そうだ。
「悪くない引きだな……」
その時だった。森の奥から、音がした。地を蹴る音、枝が裂ける音。……獣か?
「──ギギギィィィ!」
黒い金属質の四脚獣が飛び出してきた。目が赤く輝き、口からノイズ混じりの咆哮。生き物というより、データの塊が動いているような存在。
《オート回避、発動》
身体が勝手に動き、間一髪で回避。その間に、思考が巡る。
「使うしかないな……!」
「召喚──プロセスファング!」
空間が歪み、青い輝きと共に出現したのは──鋼鉄の狼。機械と魔術が融合したような存在。命令しなくても、飛びかかっていく。
獣vs獣。いや、プロセスvsエラー。
その光景を見ながら、僕は気づいていた。
──この世界、スキルが“現実”を変える。
だったら僕は、このコード化された世界を攻略する。