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18話 設計主の声と転生コードの断片

 ラーデルの都市核崩壊から数日。

 灰騎士団の残党は姿を消し、街はようやく静けさを取り戻していた。


 「けっこう……片付いてきたな」  カイルが肩を回しながら、広場で整備作業を見回している。


 ノーラが魔導結界の補修を終えながら言う。「ラーデルは、次に進むための“足場”になる。きっと」


 俺はというと、図書塔の地下にある旧管理端末と向き合っていた。  廃棄された王国製の中枢機械。けれど、何かが残っている──そう、感じたからだ。


 《アクセスコード:α-Rei》  《認証成功》


 ──その瞬間、全端末が一斉に再起動した。


 「アクセスを確認。転生コード識別──No.017、相澤レイ」


 機械音声と共に、空間に淡い光の人影が現れる。  その姿は、白衣をまとい、目元に仮面をかけていた。


 「ようこそ、“第十七観測者”」


 「……誰だ、お前」


 「私はこの世界の“構成言語”を設計した、初期プロトコルの一端。“設計主”とでも名乗っておこう」


 (……やばいな。情報量が異常に多い)


 ノーラが駆け寄ってくる。「レイ、こっちも端末が一斉に反応してる!」


 設計主──と名乗る存在は、穏やかに語りかける。


 「君は本来、“こちら側”に属する者だった。旧世界で生まれ、≠NULLとの境界に最も近い“精神回廊”を渡ってきた者」


 「……つまり、転生じゃなく、“帰還”ってことか?」


 「近いが、正確ではない。君は≠NULLの崩壊を“外側”から干渉するために作られた、“例外処理”そのものだ」


 俺の中で、何かが軋む音を立てた。


 (俺は……人間じゃない?)


 「君の存在自体が、“世界のデバッグコード”だ。だからスキルも、武器も、仲間も、“通常規格外”で収束していく」


 ルゼがぽつりと呟く。「……だから見えたんだ。最初に」


 セラが光を帯び、少年ヒカリの手を握った。「あなたが存在するから、私たちは“まだ壊れない”でいられる」


 俺は息を吸う。「だからって……俺はただ、誰かを救いたかっただけだ」


 設計主は一瞬だけ沈黙し、最後に言った。


 「君の選択が、世界の選択になる。──次の扉は、“思考回廊”の最奥。そこに、≠NULL本体が待つ」


 その言葉と同時に、空間に巨大なコードゲートが現れた。


 ノーラが静かに言う。「行くしか、ないみたいね」


 ヒカリが頷いた。「僕たちのこと、全部知ってるやつが……そこにいるんだ」


 世界の構造を司る“外側”へ。

 俺たちはついに、≠NULLとの“本体戦”に足を踏み入れようとしていた。

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