14話 名前なき少年と選ばれし連携
翌朝。灰のように冷たい朝日が、廃墟となったラーデルを照らす。
セラは教会跡の入口に立ち、動かず空を見上げていた。少年はそのそばで膝を抱え、静かにこちらを見つめている。
「なあ……名前って、勝手に付けたらダメかな」
少年がぽつりと呟く。ノーラがそっと頷いた。
「誰かが“呼びたい”って思うのも、名前の一つの在り方よ」
カイルが手を挙げる。「じゃあ俺が考えてやるよ! えーと……センスあるやつな!」
「やめとけ、前回の飼い犬に“メテオ”とか付けてたやつに任せたら地獄だ」
俺のツッコミに、カイルは苦笑い。
ルゼが静かに、少年に近づく。
「……君、“光の中で迷子”だった。だから、“ヒカリ”で、いいんじゃない」
少年の瞳が揺れた。
「……ヒカリ……うん、それ、いいかも」
その瞬間、俺のスキルウィンドウが反応する。
《対象:ヒカリ 仮称により識別コードを更新》
《スキル構成解析中……》
──そして表示されたのは、見慣れぬスキル名だった。
《新規スキル:同期結界》
《効果:隣接する味方と防御コードを同期、ダメージ分散と反射発動を可能とする》
(これは……戦闘での“連携”を自動化するスキル?)
セラも同時に反応する。
《護衛対象コード更新:ヒカリ》
《同期連結スキル《守護翼拡張》発動可能となりました》
──この少年、ただの生き残りじゃない。
セラとの絆が“スキル”として実体化するほどに、コードに深く組み込まれている。
「……おい、誰か来る」
カイルが廃屋の影に身を隠しながら囁いた。
村の外れから、黒いマントを羽織った一団が姿を現す。
「これは……≠NULLじゃない」
ノーラが目を細める。「武装の形式が違う。旧王国軍……? でも、解体されたはず」
俺は短く息を吸い込んだ。
──新たな勢力の登場。
この旧都にはまだ、埋もれた秘密がある。
ヒカリという名を得た少年と、守護者セラ。
そして迫る、正体不明の追跡者たち。
次の戦いは、“情報の奪い合い”から始まる。




