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新たな姿



契約した後、俺は主人マスターにこれまでのことを簡潔に伝える。

前世のことも、ライのことも。


「へー、なかなかすごいことになってたんだね」


その反応を見て驚く。

前世とかそう言ったものはそう簡単に信じないと思っていたからだ。


理由を聞いてみると単純に「私にとって今それはあまり関係ないから」だそうだ。

まぁ確かに今主人マスターに俺の情報なんていらないか。


『正直俺だって何が何だかわからないよ。ただこの世界に用はある。やるだけやるさ』


「そうだね。お互い頑張ろうか。それはさておきどうしよっか、これから」


主人マスターは先ほど倒したばっかりのやつらを見ながらそういう。


『いやどうするってさっき街にって……あぁ、そういうことか』


次に俺らがどこに行くか、それはもう決まっているが問題はこいつらだ。

いくら魔力で縛っているとはいえここに放置するのもいけないだろう。


『見た目的に俺がここに残って主人マスターが街に行って報告するか?』


「でもここから街までってかなり遠いから危険なんだよね。それに私が仮に街についたとしてもどう説明すればいいのかとかあるし」


『それは簡単に逃げてきたとかでいいんじゃない?』


「そしたらここについた時にユメとこの状況をどう説明すればいいかってことになる。そうそう簡単に悪魔と契約したとかいえないでしょ?」


「確かに」


この世界で悪魔と契約しているってことがどれだけのことかはこいつらから学んだ。

元奴隷が悪魔と契約しているなんて知られたら大変なことになるだろう。


『結局悪魔ってことも隠す必要あるし知り合いって関係だと言い張るしかないのか』


「そうなるんだよね。それだとユメが強いって説明すればこの状況も説明できるし」


『となるとやはり問題になるのはこの姿か』


さて、ここで改めて俺の姿を見てみよう。

全身が黒いモヤで覆われていて、軍服とコートを掛け合わせたような服を着ていて、目が鋭く白く光っている。


……うん、バケモノ。


こんなんで街行ったら速攻攻撃されるわ。

説明どころじゃない。


『どうにかしなきゃ話にならないなこれ』


一体どうしたもんかと俺が頭を抱えていると主人マスターが思いついたように声を上げた。


「そうだよ、今はユメと契約してるんだった。今私はね、さっき契約したことである程度ユメに対していろいろできるんだよ」


『な、何それ?』


なんか怖いんだけど大丈夫なのそれ。

そのいろいろの度合いによってはかなりヤバそうなんだが。

まぁ流石にやばいことはしないと思うけど。


「いやいや別にそんな怖いことじゃないよ。ユメのことを操れるわけじゃないし。契約したことで主人マスターである私がユメの外見とかある程度弄れたり、ユメと場所を交換したりユメの場所に行ったりとかそういう便利なもの」


『あー、そういうことか』


ゲームでいうキャラメイク的な外見などをある程度弄れるらしい。

主人マスターとの場所の交換だったりの俺を起点とした便利な力があるっぽいな。


「そう。だから正確には私とユメの2人の力ってこと。まぁこれは私がユメに対してできることだからユメが私に何ができるかは知らないよ。そもそもできるのかもわからないし」


『なるほどな』


確かにライも契約したら双方に特別な力が手に入るとか言ってたな。

主人マスターの話的に俺にも何かそう言った能力があるっぽいけど……


現時点じゃ俺にはそう言ったことはさっぱりわからんぞ。


主人マスターは契約したらそういうことがなんとなくわかったのか?』


「そうだね。その瞬間に頭に流れ込んできたよ」


『すまんが現時点じゃ俺は契約による力はわからん。主人マスターと違ってそういうのはなかったからな』


「ふーん、嘘はついてないね」


『なんだ? そんなのもわかるのか?』


「ま、なんとなくだけどね」


マジか、何か誤魔化そうとしても言い訳とか通じないじゃん。

いやまぁそう言ったことがないほうがいいんだけどさ。


俺がそんなことを考えていると


「それでなんだけどそろそろいい?」


『ん? 何がだ?』


「いや、外見の話」


『あぁ、そういえばそういう話だったな。いいぞ、あまりにも変な姿じゃなくて人としてちゃんと認識できるんだったらな』


いくらこのバケモノの姿から変わるとしても流石に人の姿形は保っておきたい。

というかじゃなきゃ多分生活できない。


「任せてよ」


現状、俺には主人マスターの言葉を信じるほかないのだ。

頼むぞ、変な感じにしないでくれよ。


次の瞬間、自分の体が崩れていく。

そして崩れた体がモヤとなって周囲を包み込むように回転する。

感覚的にいえば超高速で着替えさせられてる感覚。

着せ替え人形にされている気分だ。


自分の体が作り替えられていくなんて感覚を味わったのはおそらく俺が初めてだろうな。

そんなことを思っているとだんだんとモヤの勢いが弱くなっていく。


そしてーー


「よし! できた!」


主人マスターは満足げに腰に手を当ててそう言った。


その言葉を聞き、俺は自身の姿を見てみる。

おぉ、手がモヤじゃなくてちゃんとしてる!

肌色で触れる方もできる。

とはいえ全身の姿が見えない。

自分の姿だしちゃんと見ておきたい。


主人マスターどこかに鏡とか水たまりは……」


「ユメ、水溜まりというか池はあそこにあるよ」


ユメが指差した場所に俺は速攻で向かう。

やはり気になって仕方がない。

これからこの世界で過ごす新しい俺が。


するとーー


「……マジかよ」


そこに写っていたのは灰色の髪を持つ男性だった。

服装はどこか軍隊っぽさを感じるロングコートである。

軍隊っぽいからとどこか威圧感のあるような姿ではなく、童顔の為か気楽に関われそうだ。

というか女性と間違われてもおかしくないかもしれん。

声も結構女性に近しい感じだし。


まぁそれがどうした、というものでもあるが。

別に女性になったわけでもないし。


「どうすごいでしょ! 我ながら上出来!」


主人マスターが笑顔でそう告げる。

いや、うんすごいよ。

ちゃんとしてる……というかちゃんとしすぎている。


「すごいよ、主人マスター。正直言って想像以上だ」


出会ってからまだ全然時が経っていないのによくここまでイメージできるものだ。

俺が主人マスターの立ち位置だったら今のマスターの姿を思い浮かべることができただろうか?


『私の中でなんとなくのイメージがそんな感じだったんだよ。それに私、兄妹欲しかったんだよね。ということねよろしくねユメお兄ちゃん!」


主人マスターの最後の言葉に俺は一時的に思考が停止する。

え、いや、え?

お兄……ん?


「おにっ、おお兄ちゃん!?」


「見た目的にそうでしょ」


「いやいやいや! そっちが主人マスターだし。そもそも妹が奴隷ってこんなことがあるか!?」


あぁもう設定がぐちゃぐちゃだ!

えーとなに?

主人マスターが俺の妹で、しかも元奴隷。

で、兄である俺が助けたと?


あれ、意外といける?

いやでも奴隷なのにずっと放置していた兄ってどうなんだ?

それに妹が兄を従えてるっていうよくわからん状況になるぞ。


「えー? でもそれじゃあどうするのさ、私とユメの関係」


「それは……その……たまたま助けたとか? それだったら事実だし」


「それだと私と一緒に行動できなくない? たまたま助けたとしても一緒に行動する原因にならないんじゃない?」


「とりあえず助けた人についていくことにしたとかは? そもそも俺と主人マスターは姉妹って言えるほど似てないし」


姉妹と言い張るのは流石に無理があるのだ。

髪色だって俺は灰色だけど主人マスターは桃色だぞ?

いくら顔立ちが似てると言っても血が繋がっているというには無理があるのだ。


「ちぇー、じゃあ仕方ないか。それでいいよ」


「ちぇ、とはなんだ。別にいいだろ。あと流石に人前で主人マスターはやめておくぞ」


「いいじゃんそれくらい。別に減るもんじゃないし」


「そっちが困らなくても俺の精神が羞恥心ですり減るんだよ!」


知らないよ不特定多数の人の前で明らかに年下の子に主人マスターって俺にいえと?

そっちは読んで欲しいんだとしても俺の理性が拒む。

恥ずかしすぎる!


「じゃあなんて呼ぶの?」


「そうだな……普通にリアちゃんとかでよくないか?」


それだったら俺も困らんし、年齢的にもおかしくないしな。

そう思ったのだが


「ちゃん……それはやめて、なんか恥ずかしい」


主人マスターは顔を赤くして拒む。

ちゃん付けは羞恥心の対象らしい。


「だったらリアって呼び捨てすることになるけど」


「うん、いいよ。それで、それでいこう」


「了解、それじゃあとりあえずこいつらを……っ!?」


ものすごい魔力の反応!?

しかも猛スピードで俺らに向かってきてる。

逃げてる暇は……ないな、もし敵だったら背中向けた瞬間にお陀仏だ。


狙いは誰だ?

奴隷関係の追っ手か?

もしあのボスが咄嗟に救援を呼んでいたとしたら……やばいのは俺じゃなくて主人マスター


だとしたらひとまず主人マスターを守ることを第一に……


いや、違う。


俺は急いで主人マスターから距離を取る。

コイツの狙いは……!



キィンッ!



そう、コイツの目的は……


「これを防ぐか……」


主人マスターではなく俺!

俺を攻撃したフードを被った男の言葉に


「おいおい、いきなり殺そうとするなんで物騒じゃないか?」


俺は冷や汗をかきながらそう返すのだった。



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