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不思議な出会い



『やぁやぁ、そろそろ目覚める頃合いかな?』


光の存在しない真っ黒な空間で場違いな明るい声が響く。


「うるさいな……」


ちょっとやめてくれ……俺はまだ寝てたんだ……


『うるさい!? え、いや起きてよ! ボク結構ここで待ってたんだよ? 君の反応はどうなるのかな……ってちょっ、だから起きてって!』


全くうるさいな。

朝っぱらから元気なこった。

こちとら昨日大変なことがあって……大変なこと……あれ、なんだっけ。

確か昨日は……


そんなことを思いながら少し目を開けるとそこはただひたすらに暗い空間であった。


あれ、どこだここ。

こんなところにた覚えはないぞ。


なんで俺こんなところに……確か学校終わりに電車に乗って帰るところで……


そこまで考えたところで俺はついさっきの出来事を思い出す。

それにより眠気は一気に消し飛ぶ。


「!? 生きてる!?」


『うわぁ!? 急に飛び起きないでよ、びっくりするじゃん!』


俺の声に誰かが驚いているようだがそんなことは今はどうでもいい。


「!? な、なんだこれ」


なぜなら……


「体が……ない? は? いや、え?」


体の構造上必ずあるはずの下半身が何もない。

それどころか手もない。

暗闇でただ見えないだけ、と思ったが本来腹があった場所を貫通する。


何がどうなってるんだ。

訳がわからない。


『ねぇ、いつまでボクを無視するのさ』


「っ! あ、あぁすまん。俺も混乱してて……というかお前は?」


『ボク? ボクは……そうだねライ、とでも呼んでくれればいいさ』


「そうか……わかった、ライ。それでいきなりで悪いんだがここがどこかわかるか? というか俺の体……」


『ここかい? ここはボクの空間さ』


ライのその差も当然かのような発言に俺は一瞬固まる。

この真っ暗な空間がこいつの?

いや、そもそもこの空間がこいつのって……待て。


「そもそもお前、どこにいるんだ」


先ほどから会話しているやつの姿を見ていない。

スピーカーから話しているかもしれないがそれでもせめて姿を見て話したい。


『あぁボクかい? ボクは君の後ろにいるよ?』


その言葉に俺は慌てて後ろを振り向く。

だが、しかしそこには誰もいない。


『あはは! 嘘だよ嘘、冗談だって。ボクは君の真上にいるさ』


「上? ……ってうおっ!?」


その無茶苦茶な話に半ば呆れながら上を向くと、そこには満面の笑みを浮かべた人物がいた。


『驚いたかい? いやー、ずっとこの体制だったからね。なかなか疲れたよ。全くもっと早く起きてくれればよかったものを……』


「な、なんなんだお前。なんか空……というか空中に浮かんでるし……」


『言ったでしょ? ボクはライ。それ以上でもそれ以下でもないよ。っと、早速で悪いけど君にはちょっと行ってもらうところがあってね。おめでとう! 君たちの大好き剣と魔法の異世界だよ!』


ライは大きく手を広げながらまるでサプライズをしたかのようにこちらの反応を伺っている。


「は? 魔法? 異世界? なんたってそんなところに……ってか結局俺はどうなってんだ? 体は透けてるしよくわからんところにいるし……」


『ん? あぁ、君はもう死んじゃったよ』


ライは俺にとっての重大な事実をどうでもいいことのようにあっさりと言った。


「え?」


『なんだい? 自分が死んだことが不思議かい?』


「……いや、認めたくはないが俺は本当に死んだんだろう。あんな状況で生き残れる方がどうかしてる」


あの時の俺はフルスピードの電車に轢かれたはずだ。

もしかしたら到着の関係でスピードが落ちていたかもしれないがそれでも相当なスピードだ。


あんな勢いの鉄の塊がぶつかっているのだ。

生きていたら人間離れしているだろう。


『だったらなんでそんな驚いてるのさ』


「なんで俺はここにいる? 死んだんだろう? なのになんで意識がある?」


『それは簡単なことさ。君たち地球人が……とりわけ日本人が大好きなことさ』


「俺たち日本人が……大好きなこと?」


『そうだよ? 一体なんでしょう! ヒントは剣と魔法の異世界ってところだね』


「一応聞いておくがそれを断るってことはできるのか?」


『まだ何も言ってないんだけど? まぁ、その質問に答えるならば死にたいのかって話だね』


なるほど。

どうやら何か俺はやらなきゃいけないらしい。


つか死んでるのに死にたいのかってどういうことだよこれ。


さてと、それよりも前のやつだ。

ライは急に俺に対してクイズを出してきた。

一体何がしたいのだか。


と言っても今はこれを考えるしかない。

それで俺の疑問を知れるのだから。


剣と魔法の異世界、ライはこれがヒントだって言ってた。

そう言ったのでパッと思いつくのはやはりアニメや漫画、ラノベだ。

友人から勧められて見始めてハマったからある程度はわかる。

すでに異世界転生などといったジャンルが確立していて……


「ん? 異世界……転生。おい待て、嘘だろ?」


『ピンポンピンポン、大正解! 君は、悪魔として転生したのさ!』


「悪……魔……?」


『そう悪魔! 魔法が得意で魔力が沢山あるかなーり強い種族だよ! やったね!』


「いやいや待て、待ってくれ。別にお前を疑っちゃいねぇ……わけでもないけど、転生? 俺が? なぜに?」


『まぁまぁ、落ち着いて。転生って言っても君は特別な転生なんだよ』


特別な転生?

なんだそれ、実は勇者でしたみたいな?

んなわけないか。

だって悪魔らしいし?


『悪魔って言ったらなんだと思う?』


「願いを叶える代わりにお前の命をよこせ、みたいな?」


ライの質問に俺は自分の勝手なイメージを語る。


『おぉ、そうだね。その通り! 契約だよ』


「契約?」


『そう、君はただの悪魔じゃない。契約悪魔なんだ。とある人物と契約を結ぶ運命になっている』


「とある……人物との契約?」


『そうさ。人との契約により契約悪魔とその契約者は特別な能力を得る。その契約者たちだけの特別な力さ。なんなら君はさらに転生している! もう特別なんて言葉じゃ表せないくらいにはすごいのさ!』


ライは興奮したように俺に顔を近づかせてそう説明した。

いや近い。

近いって。

そこまですごいことなのかよそれは。


「一つ聞きたいんだが悪魔に転生っていうのはお前が決めたのか?」


『ん? いやいや、ボクにそんなこと決められるわけないでしょ? 君の魂が悪魔としての適正が高いんだ』


「俺が悪魔の適正? え、何それ。俺そんな悪いやつなの?」


俺そんな危険思想とか持ってないんだが!?


『いやいや、悪魔を勘違いしてしまっては困る。それはあくまで人間の悪魔に対する考え方だからね』


「なるほど。悪魔=悪いやつってわけじゃないのか」


『うん。その通り』


「……んで話を戻すが俺は誰と契約させられる運命なんだ? どうせ俺に拒否権なんてないんだろ?」


『お、よくわかってるじゃないか。拒否権はあるにはあるけどね、そしたら相方も君もどちらも死ぬよ』


だよなぁ。

そうじゃなきゃわざわざ契約だなんて言わないよな。

なんなら初めから決まってるとか言ってたし。


「でも流石に頭おかしかったり性格終わってるやつなんかとはやだぞ? まずはそいつについて知りたい」


『それもそうだね。じゃあ契約者、つまり君の相方の原状況について教えてあげよう』


ライはそういうと指を鳴らす。

すると、まるで映画のように真っ暗な空間に映像が流される。


そこには森の中で走り回っている少女と男の姿があった。


「……ただの追いかけっこ……ってわけじゃないよな?」


『それだったらあの子も幸せだったろうね。残念だけどその通り。あの少女は奴隷。男は脱走した奴隷を捕まえようとしてるってわけさ』


「奴隷!? 今の時代にそんな……いや、別の世界なんだったな」


そう、俺の世界とは違う。

俺の常識はあの世界では通用しない。

いくら自分の常識で話しても向こうからしたら非常識なことかもしれない。


『そうそう理解が早くて助かるね。とは言ってもあの世界でも奴隷っていうのは違法なことなんだけどね』


「流石にそこまで終わってる世界じゃなかったか。……まさかとは思うが俺の契約者ってのはこの男……じゃないよな?」


『まさか! そんなわけないでしょ。君の契約者はこの少女さ』


その言葉を聞き俺は映像の中の少女の姿を追う。

男が別の方向に視線を向けた瞬間、少女は近くにあった草むらに隠れる。


「おぉ、よく見てたな」


『そうだね。でもそこは別の方向に逃げるべきだったね』


「え?」


次の瞬間、少女は謎の男の命令により動けなくなってしまう。


「なんで……急に動きを止めたんだ? まだ、逃げられるんじゃないのか?」


少女がされたのは男に声をかけられただけ。

相当近くにいるというわけではない。

追っ手の男を欺くことができたのだからまだどうにかなりそうなものだが。


『いや、それは無理だね』


「どういうことだ?」


『首についてる首輪が見えるかい?』


ライのその言葉に、俺は少女の首元を見ながら返事をする。


「あぁ。わざわざ首輪をつけるなんで悪趣味だと思ってた。それがどうかしたか?」


『アレのせいであの子はあいつの命令には逆らえないのさ』


「命令に逆らえない? そんな魔法のような道具があるわけーー」


シュンッ!!


そこまで言った時、俺のすぐ横を何かが高速で駆け抜ける。

それはまるで雷のような圧倒的なスピードで。


慌ててライの方向を見ると、ライの指先にバチバチと音を立てている電気が纏われていた。


こいつがやったのか?

なんだ今の。

あのスピード、俺がぶつかった電車並み……いやそれ以上にあったぞ?

あれまともに食らったら死ぬんじゃ……


『言っただろう? そこは魔法のある世界だって。こんなことができるんだ。相手に命令できるような道具があってもおかしくない。そうは思わないかい?』


「……そう、かもしれない。だがお前、俺を殺す気か? あれ人殺せるだろ!」


『言葉よりも体験した方が早いだろう? それに、君を殺すんだったらもっと高威力のやつを使うさ』


マジか、あれ以上のやつあるの?

もうこいつ1人で軍隊と戦えるんじゃね?

見た目に反して想像以上にヤバいやつだぞこいつ。


『さて、それでどうする? このまま放っておいて互いに死ぬか。それとも助けて新たな世界で生きるか。どっちがいい?』


「はっ! 2択に見せかけての1択だろ。とはいえ悪魔っていう魔法が得意な種族らしいが本当に俺は戦えるのか? 魔法はもちろんまともに戦ったことすらないぞ?」


相手は違法な犯罪に手を染めている奴らだ。

まぁ間違いなく流血沙汰は経験済みのはず。


対して俺はただの高校生。

無論、善良な一般ピーポーである俺は戦うなんてことはしたことない。


『大丈夫さ。逆に今の君で降伏以外にどうやったらあいつらに負けるのか是非とも教えて欲しいものだね』


ライはわざとらしく肩をすくめながらそういう。


「で? 魔法は?」


『単純さ、イメージ。どれだけ強くその内容をイメージできるか。敵に雷が降るイメージが強くできていれば魔力という燃料がある限りそれが実際に起こる』


「なるほど。だったら」


俺はこの真っ暗な空間が真反対の真っ白い空間に変わることをイメージする。


その次の瞬間、真っ暗な空間は白によって侵食され白く染め上げられていく。


『おぉ! 空間の上塗り! やるじゃないか!』


「ともかく、イメージ次第でできるようになるってことはわかった。ってか今更だが俺異世界言語全くわからないんだがそこんとこ大丈夫なのか?」


未知の言語をすぐに覚える自信なんてないぞ?

文字を覚えられるかすらも怪しいまである。


『そこは大丈夫。転生したらすでに読み書き、発言はできるようになっているからね。流石にボクもそこまで鬼じゃないさ』


「そりゃ、ありがたい限りだ」


『さて、準備はいいかい?』


「あぁ、いつでもOKだ」


俺が返事をすると視界の輪郭がぼやけていく。

目が回っている時のような感覚だ。


『そうそう君に一ついいことを教えてあげよう! 君の死について、そして見たであろうあの女の子についてのヒントは異世界にあるよ!』


「!?」


あの人についてのヒントがあの異世界に!?

異世界に行くとしてもどうしようかと思っていたが目標ができたな。

必ずヒントを見つけ出す!


『そして最後に君の力を教えてあげよう。前世を持つ転生は前世の魂を新たな魂に付け加えることのようなもの。単純に魂の力が強い、特別な力が宿っていてもおかしくはないのさ』


それを聞いて俺は思わず笑ってしまう。

転生による特別な力。

それに契約による特別な力。


はは、そりゃライが珍しいというわけだ。

互いに命を預ける契約、それに加えて転生。

この条件を満たしているなんて俺くらいだろう。



『君の力はーー』



ーー



視界が色鮮やかになっていく。

声も直に聞こえる。


なになに?

全てを上げる?


すごい覚悟だな、高校生の俺でも心の底からそんなことを思うのは無理だ。


よし、ここから俺とお前は一蓮托生だ。

互いに命を預ける相棒パートナーだ。

だから




まかせろ




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