第9章 紅蓮の戦場
灰色の煙が空を覆っていた。
エリカは駆け足で角を曲がり、視界に飛び込んできた病院の惨状に息を飲んだ。
「ここ……が……」
爆発があったのは間違いなくこの場所。病院の外壁は崩れ落ち、駐車場にまで瓦礫が散乱していた。入口のガラス扉は吹き飛ばされ、黒焦げになった救急車が斜めに横転している。
地面には、立ち上がれずに呻いている人々。その周囲で医師や看護師が必死に処置を施していた。怪我人の中には子どももいた。足を押さえて泣き叫ぶ少年の横で、母親らしき女性が血だらけの手で服を裂き、止血を試みている。
「……ひどい……」
建物の内側からも、悲鳴や叫び声がひっきりなしに聞こえてくる。その合間に、金属の衝突音や、何かが吹き飛ぶような衝撃音も混じっていた。
「局員はすでに現場入りしています。近づかないでください!」
病院の正面入り口の前では、緑色のシリウス管理局の制服を着た職員たちが規制線を張り、野次馬や報道陣を遠ざけていた。通行人の数はすでに百を超えており、スマートフォンをかざして撮影する者もいれば、必死に親族の安否を尋ねている者もいた。
「私の父が中に……っ、お願いです、見てくるだけでいいから!」
「ダメです、現場は危険です!今は皆さんの安全の確保が最優先です!」
混乱。叫び。怒号。希望も秩序も削り取られるような空間だった。
エリカは規制線の外で立ち尽くしながら、拳を強く握りしめた。
――ライアンが、中にいる。
この件に関して、本部からの出動指令も何も出ていない。つまり、今のエリカは周りで叫んでいる人たちや野次馬と同じ立場。この規制線の内側に入る権利はない。
ライアンは数日前、ようやく意識を取り戻したばかりだった。この惨状で無事でいられる保証は、どこにもない。
「私が、行くしかない……!」
それは"正義感"というにはあまりに独善的な思考だった。ほかの局員は既に現地入りして救助や暴徒の対処にあたっている。エリカが行かずともこの件は解決に向かうだろうし、ライアンも無事なら救出されるだろう。
頭では理解していても、焦りがそれを許さない。
自分が行けば状況が好転するかもしれない。人手は多いほうがいい。そんな勝手な理屈で自分を説得し、エリカは行動を起こした。
私服のニットの裾で顔を少し隠して規制線に近づく。現場の混乱は幸いした。ひとりの局員が市民の対応に追われて目を離した隙に、エリカは隣の救急車の影に身を滑り込ませる。
爆発の影響か、病院の壁面には無数のひびが走っていた。火の手は既に収まっていたものの、建物全体にはまだ焦げ跡や煙の臭いが残っている。エリカはそこら中に広がる焼け焦げた瓦礫を踏まないよう慎重に歩を進め、割れた窓をくぐって院内に忍び込んだ。
病院内の様子は、外から見るよりも凄惨なものだった。患者の服だったものだろうか。焦げ跡のついた衣服のかけらがそこらに散らばり、椅子やカウンターテーブルはかつての爆心地を示すかのようにロビーの隅やつながる廊下に乱雑に散らばっている。
既に1階の救助は完了した後なのだろうか。病院内にいるはずの管理局員の姿や声は聞こえなかった。代わりに、熱によってかき乱された空気と破壊によって生じた風穴が、不気味な風音を騒ぎ立てる。
「ライアンの病室は……4階か」
周りの物が熱でひしゃげ、壁には一面焦げ目がつく中、奇跡的にみられる状態で残っていたフロアマップから、上階までの経路といざという時の脱出経路を確認する。
近くの階段に向かって廊下を進もうとした時、
――直後、爆音とともに目の前に長椅子が吹き飛んできた。
反射的に身を捩ったことにより紙一重で直撃を避けるが、エリカの頬を飛んできた長椅子の足が掠める。
「退避ッ!」
廊下の奥から怒鳴り声とともに、赤い斬撃のような衝撃波が駆ける。廊下の壁が弾け飛び、その破片が飛び散る。エリカは人の気配を察し、すぐに身を翻して近くの柱に隠れた。
「くそっ、こいつら、まだいるのか!」
戦っているのは、数名の管理局員。人数は……1,2,3……5人?学生時代の同級生だっただろうか、見覚えのある顔もいた。
そしてその相手は――ニュースに聞いた“暴徒”だった。
顔は口を紅いマスクで隠している以外は、普通の市民団にしか見えないその集団は、武器を持ってはいなかった。だが、彼らの雰囲気は常人のそれではなく、何かに操られたような、狂気を孕んだものだった。そんな人間たちが廊下の奥の闇から次から次へと現れる。
「赤き炎による救済を!」
暴徒の一人がそうつぶやいたかと思うと、
「「「赤き炎による救済を!!」」」
闇から現れた周りの暴徒が復唱して一斉にはじけたかのように動き出す。
拳を振り上げ局員に襲い掛かる者、シリウス能力を放つために両手を前に突き出す者、獣のような低姿勢になって突進する者。その動きはお世辞にも統率が取れたものとは言えないが、一斉に動き出したこと、そして何より、単純な人数差によって防戦一方となる管理局員は、苦戦を強いられているようだった。
「暴徒には能力者も交じっている!固まって背後からの攻撃を避け、各個で対処しろ!」
局員の一人が声を上げ、ほかの局員もそれに従って陣形を形作る。
陣形の効果か、訓練の差か、局員に襲い掛かった暴徒が次々と組み伏せられ、鎮圧されていく。
暴徒たちは無秩序に叫びながら攻撃を繰り返していたが、意図的というよりも、ただ感情のままに暴れているように見えた。能力の使い方にも訓練された形跡はなく、むしろ……それが逆に不気味だった。
「なんなの、あいつら……?」
――不意に、ひときわ高く誰かの声が響いた。
「我々は、選ばれし者である!」
声はするが姿は無い。ただ、その声がどこからか床を壁を揺さぶるように病院全体に響き渡る。
暴徒たちは、今までの無秩序さが嘘かのように、すべての手を止め、聞き入るように立ち尽くしていた。
「能力を持つ皆者たちよ、我々は”アカツキ教団”。君たちに自由と力をもたらすものであ~る!」
男性とも女性とも、大人とも子供とも区別のつかない中世的で特徴的な声が煤やけた病院に響き渡る。
突然の声に一瞬立ち止まり戸惑っていた管理局員たちだったが、暴徒が全員動きを止めたことを確認し、すぐに周りの暴徒を組み伏せ拘束して鎮圧する。
だが、暴徒たちは、仲間の拘束にも自分への拘束にも一切の抵抗を示すことなく、ただ天を仰ぎ続けた。
「アカツキ教団……?」
聞いたこともない。こんなテロを起こすくらいの危険思想を持った団体であれば、ノクスと同様に管理局の登記情報に存在するはずだ。だが、治安維持を担当する部門の自分ですら聞いたことのない団体名に、エリカは疑念と不信感を募らせる。
それは今まさに戦闘している局員たちも同様のようだった。彼らも首を傾げ互いに顔を見合わせている。
謎の声の演説は続く。
「シリウス管理局などに支配された世界は正義か?人と違う力を持つから虐げられ、差別され、抑圧される。そんな世界を、政府を!許していいのかァ!否否否ァ!!であ~る!」
政府に不満を持つものは多い。これはその反抗心を助長するものだ。
「能力者こそが神に選ばれし新人類!旧きヒトが我々を管理するなど、傲慢に過ぎないのであ~る!」
理由になってない。話し合いのステージから入らない時点で、こいつの目的は”テロ自体”にある。
「信徒たちよ、今が始動の刻であ~る!赤き炎による救済を!」
「「「赤き炎による救済を!!」」」
天を仰いでいた暴徒がその言葉と共に一斉に目の色を変える。
いや、比喩ではなく、本当に全員の目が、赤く光った。
次の瞬間、組み伏せられていた暴徒の一人が真っ赤に光り――爆ぜた。近くにいた局員のひとりが間一髪で飛び退き、壁に手をついて叫ぶ。
「なんだこいつら!いきなり――」
爆ぜた暴徒はゆらゆらと体から放たれる赤い光とともに起き上がり、ゆっくりと顔を上げる。見えたその目には、ほかの暴徒と同じ真っ赤な光が宿っていた。
そしてそれは、エリカが今までの任務で何度も見てきた、ある現象と同じだった。
”暴走”。
エリカの頭に最悪の予感がよぎる。暴徒全員の暴走。
――いや、ありえない。
”暴走”とは本来、能力者が感情の限界を超えて昂ってしまった際に起こる症状だ。
その発現は、大切な人の死や、生きることに絶望するほどのことが無ければそう簡単には起こりえない。
暴徒たちがこの演説でそんな感情を抱いた?それとも、ヴァルデスの言ってた、コード:<亡――
エリカは、自分の絶望的な想像と真実の見えない仮定を振り払うべく、一度大きくかぶりを振った。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ――
突然、暴徒の一人が咆哮を上げた。それに呼応しているのか、赤い目を光らせた複数の暴徒が管理局員の小隊に迫る。
局員たちは依然として背中合わせの陣形を保っていたが、あれだけの数の暴徒のわが身も顧みない強襲に一人、また一人と地面に押し倒され、絶望的な状況となっていた。
倒れた管理局員の一人に向かって、暴徒がシリウス能力で赤く光る拳をたたきつけようとしたその時
――白い光が、その暴徒の顔を横なぎに撃ち抜いた。
「見捨てられないんですよね。これが私の"正義"ですから」
はあ、せっかく隠れてたのに。と軽くため息をついたエリカだったが、実際の戦力としては一人局員が増えただけだ。自分だけで戦況が好転するとは、エリカ自身も思っていなかった。
「早く逃げてください!応援部隊の手配をお願いします!」
後ろにいる局員に向かってエリカが叫ぶ。だが、恐怖に竦んだ局員の耳には、もう何も届いていないようだった。
「応援は不要。殲滅作戦、開始」
不意に、聞き覚えのある機械的な声が耳に届く。その声は、嫌でもあの真っ黒で冷酷な制服姿を思い出させるものだった。
一瞬だった。ソフィア・クレインの声が聞こえたと思った次の瞬間には、5つの黒い影が病院内を駆け巡り、暴徒を一瞬で制圧してしまった。いや、彼らにまだ息があるのかすらわからないが。
何も、できなかった。
焼け焦げた病院内に立ち込めた煙の臭いに、血の匂いが混じる。
かつての病院に感じられたはずの薬品の匂いも、きれい看護師さんが立っていた受付も今はなく、そこはただ、静寂だけが取り残された空間となっていた。
「エリカ……?」
柔らかな声が背後から届く。
振り返ると、崩れかけたロビーの入口に立っていたのは、緑色の制服を身に纏った女性。長い黒髪に、細く優しげな目。そして、巨乳を包む制服のシルエット。
「あ……アズ……!」
エリカはわずかに息を呑んだ。信じられないというよりも、“やっぱり”という確信に近い感情が、胸を満たしていく。
「やっぱり、あんたやったんやなぁ……。こんな危ないとこに、一人で入ってきて……」
アザレア・ファマー。管理局同期であり、数少ない“友達”と呼べる存在。
その彼女が、瓦礫の合間をすり抜け、そっとエリカのそばに近づいてくる。
「ちょうど、怪我人の搬送で来ててな。まさかこんなことになるなんて、びっくりやけど……」
「……あたしも、まさかアズがいるとは思わなかった。けど……助かった。今はそれだけで十分」
言い終えた瞬間、アズがふっと表情を和らげる。変わらない笑顔。変わらない距離感。その懐かしさが、今だけはあまりにも心地よかった。
「大丈夫やで。あんたは、ちゃんとここにおってええ人やわ」
それは、どこかで許されたいと願っていたエリカの心に、すっと染み込んでいく言葉だった。
そんなささやかな再会の余韻を打ち壊すように、背後からざらついた声が届いた。
「――まだいたんだ、あの子。来てたんだね、“疫病神”」
声の主は、さっきまで暴徒と戦っていた女性局員。制服の袖が焦げて黒ずんでいたが、さっきまで恐怖に引きつっていたはずの顔には、冷たい薄笑いが張り付けられていた。
エリカは、わざと聞こえるように言ったのだとすぐにわかった。今に始まったことではない。学生時代も、配属後も、彼女からは一貫して距離と拒絶の目を向けられてきた。
「災難だよな、あいつが来ると、現場がいつもおかしくなる。……今回も、やっぱりあいつが原因なんじゃないのか?」
同じ隊とみられる隊員がエリカのことを刺すように見て毒づく。
まるで見えてもいない因果を語るように。証拠のない悪意だけが、実体を持ったように漂っていた。
「……!」
ふと横を見ると、アズが眉をひそめていた。いつも柔らかいその顔が、わずかに鋭くなる。
「ちょっと、それ……」
止めようとしたアズの声を、エリカは軽く手で制した。
「……大丈夫。慣れてるから」
笑おうとしたが、うまくできなかった。
(慣れてる……? 本当に……?)
胸の奥に、冷たいものがじわりと広がっていく。
嫌悪じゃない。怒りでもない。
ただ――気持ち悪い。
他人の不安を、他人の不幸を、他人の"異常"を見つけては、自分の安定のために指さす人たち。
何も見ていないくせに、何も知らないくせに、まるで「知っている」ような顔で背を向ける。
(ああ、やっぱり……)
こういうのが、一番――気持ち悪い。
思えば、昔からそうだった。恐れられ、避けられて、名前すら呼ばれない。
“能力が強すぎるから”、“暴走した過去があるから”、“局にいると危ないから”。
理由なんて後からどうにでも作れる。問題は“彼女たちが自分を排除したい”ということ、それだけだ。
「エリカ……」
アズが、そっと寄り添うように言った。
「……そんなん、気にせんでええよ。あんたが何したか、知りもせんで、好き勝手言う人や」
その声は、いつも通り穏やかだった。けれど、たしかに芯があった。支えてくれる声だった。
「……うん。ありがとう、アズ」
顔はアズの方を向けなかった。向けたら、泣いてしまいそうだったから。
「今は、ライアンを見つけなきゃ。それが先」
アズが優しくうなずく。
「わかった。でも私も一緒いくで」
エリカはその言葉に大きく目を見開き、すぐに反対の意を示そうとしたが、その前にアズが次の言葉を発した
「勝手な行動やからついてくんな。とでも言うんやろ?……でもあかんで?私がおらんかったら、エリカちゃんはただの不法侵入の野次馬なんやから」
どうや?反論できへんやろ?とでも言いたそうな上目遣いで見てくるアズに、エリカは一瞬たじろいだが、アズの言うことに正当性があることを認め、溜め息をついた。
「……好きにして」
エリカは内心、安心していた。暴徒たちと管理局員の戦闘を目にしたことで、戦力的な不安もある。だが何より、今孤独になったら、あの時のことを思い出して、自分を押しつぶしてしまいそうだったから。
アズをつれて、奥の階段に向かって廊下を慎重に進む。
周りには、病院の瓦礫に混じって、すでに動かなくなった暴徒の山が積みあがっていた。
――ガシャッ。
瓦礫を踏み抜く鈍い音に、エリカは立ち止まった。
天井の崩落で歪んだ廊下。かすかに煙が漂うその奥、影の向こうで、何かが動いた。
「……気のせい?」
そう思って数歩進んだ、その時だった。
「――赤き炎による救済を!」
耳慣れた、狂信的な叫び声。振り返るより早く、背後から光の奔流が迫ってくる。
「っ……!」
咄嗟に身を翻し、床を滑るように回避。直後、赤黒い光弾が壁を抉り、粉塵が舞い上がった。
「まだ、生き残りが……!」
すでに1階の暴徒は全員鎮圧されたと高をくくっていた。だが、瓦礫の陰から這い出してきたのは、顔の半分を煤で汚し、赤い目をぎらつかせた赤いマスクの男だった。背中に背負うように広がる赤い光の波動は、紛れもなく暴走状態だ。
「能力者を解放せよォオオ!」
雄叫びとともに突進してくる。"暴走"による能力強化のせいか、足音が床を叩くたびにコンクリートが割れた。
エリカは一歩退き、右拳に力を込めた。シリウスの光が、拳から指先へと集束していく。
「……すみません。おとなしくしてもらいます……!」
相手の懐に飛び込み、一瞬の間合いを制する。
――白い閃光。
光の拳が、男の胸に突き刺さる。
衝撃波が吹き荒れ、暴徒は吹き飛んで床に叩きつけられた。呻き声とともに再び立ち上がろうとするが、赤い光が揺らいでいる。あと一撃。
そう思った瞬間――
「ぐっ……!」
不意に背中に殺気を感じ、跳ね退く。後方から、もう一人の暴徒が金属片を振りかぶっていた。
(二人……!)
両側から挟まれる。攻撃するには、少し距離がある。避けても、次の瞬間には追撃が来る。対応しきれない。
が――。
「エリカ、伏せて!」
そう言って飛び出してきたのは、アズだった。
エリカが身を伏せると同時に、アズの身体が鋭く回転する。
「せぇいっ!」
彼女の足が、背後の暴徒の肩に叩き込まれる。重心を崩された暴徒は、倒れこみながらも何とか姿勢を保とうとする。だがその隙を、アズは見逃さない。
「“関節”――取ったで」
しなやかな手が暴徒の腕を絡め取り、膝で足を制する。次の瞬間、バキリ。という関節が“逆”に折れる音が響いた。
「ぐアッ……!」
暴徒が呻いて倒れる間に、エリカは残った一人に向き直る。
「次は……あなたの番ですね」
今度こそ、一歩の距離も与えない。
重心を落とし、踏み込み。光をまとった右拳がまっすぐ男の顔面へとめり込んだ。
「……っ、あぐ……ッ!」
壁まで吹き飛んだ男は、ようやく赤い光を喪い、意識を失って床に崩れ落ちた。
廊下に、再び静寂が戻る。
アズが一歩、肩で息をしながらエリカの横に立った。
「……ふぅ。まさか、まだこんなもんが隠れとるとはなぁ」
「ありがと、助かった」
「そっちこそ、さすがやわ~。やっぱ、変わってへんね」
「……え?」
エリカが首を傾げると、アズは微笑んで答えた。
「強くて、優しくて、ちょっと不器用。あんたは、あんたのまんまや」
少し、照れくさかった。
でも――その言葉が、胸の真ん中にすっと落ちた。
さっきの陰口。否定できなかった自分。心の底で、誰かに認めてほしかったのかもしれない。
「アズ……ありがと」
「礼なんて、いらへん。あんたのために言ったんちゃうし。正しいと思っただけや」
あくまで穏やかな口調で言いながらも、その瞳にはしっかりとした意志が宿っていた。
(ああ、やっぱり、アズは……)
“友達”だ。どんな言葉よりも確かな、数少ない信頼のかたち。
エリカは、もう一度拳を握る。
――まだ終わってない。ライアンを助けるため、ここで止まるわけにはいかない。
「行こう、アズ。上に、ライアンがいるはず」
「うん、了解や。ついてくで、エリカ」
二人は再び並んで、崩れた通路を駆け出した。
どうも、クジャク公爵です。
第9章です。
この病院編が一旦の区切りとなりますのであと3章、読んでいただけますと幸いです。
内容としては味方に新しいキャラが出てきましたね。この子は最初本編には登場予定ではなかったのですが、なんか出しゃばってきました。エリカのために動けるいい子です。
あと、関西弁苦手なので、表現に間違いがあってもご容赦いただけますとうれしいです。。。。
今回の作品もお楽しみいただけていれば、幸いです。
また次回、お会いしましょう。