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~幕間の日常~ エリカの休日「甘味スイッチ」

朝のけたたましいアラームが部屋に響く。だがエリカは目を開けずに手探りでスマホを掴むと、すぐにアラームを止めた。再び訪れた静寂の中、彼女のまぶたは重く閉じられ、夢の縁へと戻っていく。

これは普段、正義に正しく生きようとするエリカの毎朝の日常であった。

シリウス管理局員は公務員である。緊急出動などによって出勤時間にずれが生じることもあるが、基本的には規則正しく生活し、きちんとした休日を約束されている。実働隊員であるエリカ・ノヴァも例外ではない。

世間では昼過ぎともいわれるような午後1時。エリカの休日は始まる。

「今日は予定があるんだった……」

誰に聞かせるでもないつぶやきが、休日で働かせる気の無かったエリカの脳を動かし始める。

部屋は生活感にあふれている。洗濯物は畳みかけ、書類は山積み、スナックの袋がクッションの隙間に挟まっていた。そんな中、エリカはベッドの上でぼんやりとスマホを見つめている。

「今日は……えっと、アズと……どこ行くんだったっけ……?」

脳内検索をかけた彼女の視線がスマホへと向かう。予定表を開くと、「13:30 京都風甘味処たまゆら集合」の文字が目に飛び込んだ。

「……いま、13時20分……?」

瞬間、時が動いた。

部屋中を駆け巡るような勢いでエリカは服をかき集め、ポニーテールを一瞬で結い、ついでに間違えて左右違う靴下を履いたまま玄関に突っ立った。

「よし、オーケー。完璧。」

その10分後。

「――遅かったなぁ、エリカちゃん?」

出迎えたアズの声は、静かな甘味処の雰囲気に重々しく響いた。

「いやぁ、ごめん……アラーム、三回止めたら寝坊してて……っていうか、アズ、その団子おいしそうだね」

「ごまかすなっちゅうの!」

ずるっと崩れるエリカの天然ボケに、完璧な間合いで入るアズのツッコミ。席に着いたエリカは、メニューを開くと同時に、目を輝かせた。

「わぁ……白玉ぜんざいって、こんなに種類あるんだね!」

「エリカ、あんた前も同じ反応してたやろ……」

アズは苦笑しながらも、そんなエリカの素朴な驚きにどこか安心しているようだった。戦場ではあれほど冷静で、鋭い判断力を見せるエリカが、こうして休日にはただの甘味好きの天然女子になる――そのギャップに、初めこそ戸惑いもしたが、今ではもう慣れた。

「…けどほんま、昨日まで暴徒相手に無双してた子が、今日はいきなり白玉ぜんざいに夢中なんて、不思議やなあ」

エリカは少し笑いながら答えた。

「多分、スイッチみたいなもの。オンは戦う私。オフは甘味に夢中の私。どっちも本当の私なんだと思う」

アズはしばらく考え込んでから言った。

「ほな、今日は甘味スイッチ入りっぱなしやな。壊れてへんか?」

「それは否定できないかも……」

また一つ、エリカの前に運ばれてきた新たな白玉ぜんざいを見て、アズは思わず頭を抱えた。

けれど、ふとアズは思う。このスイッチの存在こそが、エリカという存在の「壊れなさ」を保っているのではないかと。

休むときは休む。甘えるときは甘える。笑うときは、思いきり笑う。その健全さが、彼女を人間らしくしている――そういう気がした。

「なあ、エリカ。次は、ここの抹茶パフェ行こか?」

「ほんと!? 行く!」

「……おそろしいな、あんたの胃袋は」

甘くて温かい白玉の余韻が舌に残る。柔らかな午後の光が店内を包み込み、エリカの心もゆっくりと満たされていった。戦いの緊張から解き放たれたこの瞬間が、何よりも貴重なのだと、彼女は感じていた。

どうも、クジャク公爵です。


今回は本編ストーリーに絡まない幕間の一節です。

短く、本編では書けないキャラクターの姿を書きたくて。。。

ほかのキャラも気が乗れば書きまー。

幕間なんであとがきも短くなななな。


今回の作品もお楽しみいただけていれば、幸いです。

評価・感想もらえれば空を飛んで喜びます。

良ければ、また次回、お会いしましょう。

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