いつもと同じ朝
「スマホいじってないで、早く食べなさい!」
キッチンから母――直美の声が飛んでくる。
私はスマホをテーブルに置いて、コンフレークにスプーンを伸ばした。
「はいはい、今食べるってば」
向かいでは妹の優華が、牛乳をたっぷり吸ったコンフレークを一生懸命すくっている。
「優華、それいつものと違う味だけど平気?」
「うん。これもおいしい」
かわいすぎて、ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られたが、妹の口元を見てその気持ちは一瞬で萎んでしまった。
抱きしめようもんなら私が牛乳まみれになる。
「パパ、今日も帰り遅いの?」
「ああ、今日も残業になりそうだ。」
テーブルでコーヒーを飲んでいた父――健一が、マグを片手に答える。
「私も今日は遅くなるから、ごはんは先に食べててね」母が洗い物をしながら言う。
「渉はまた徹夜?笑」
「うん、ゲームが止まんなくてさ。気づいたら朝だよ」
兄の渉はソファでパンをかじりながら、眠そうな目をこすっている。ほんとゲームになると集中力すごいな。
「よし、優華行こっか」
「うん!」
「ハンカチ持った?連絡帳は?忘れ物ない?」
「もう、おねえちゃん、しつこいよ〜!」
「心配なんだってば!ほら、行くよ」
私は優華の手を取って、玄関へ向かう。
「行ってきます!」
「いってきます!」
両親と兄の「行ってらっしゃい」「気をつけろよ〜」の声を背に、ドアを閉めた。
そうして私と優華は、いつものように並んで歩き出す。