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詩「雨の影まで」

作者: 有原野分

地面から空に向かって

巻き戻っていく雨

そんな動画を眺めながら 日中

酔っ払うこともできずに

非通知の着信が鳴っていた


出て行ったのは

自分の影だと思っていた

だからどうせ朝になると

帰って来ると思っていた

影は所詮そんなもので

毎日はそうやって過ぎていくはずだった


一人で生きていくことと

誰かと生きていくことの重みは

誰よりも自分が知っていると思っていた

思っていたのは確かに自分だった

だから悪いのは自分だ

自分よりも悪い人なんてどこにもいない


部屋の中を見渡すと

枯れた鬼灯が転がっている 仏壇の前

あのとき手を合わせていた子供は

なにを見ていたのだろう


影を探しに行くべきだとは思う

それは分かっている 分かっているけど

動けないのが人間だ 人間は

分かっているから動けないときがある


雨が降っている それは

雨の影が降っているのかもしれない

影は光を反射して

その捨てられた概念だけ残るから

雨の影はいつまでも空に帰れない


顔を洗う前に 両手を

しっかりと洗っておくべきだった

爪の奥に入り込んだ

影のような黒ずんだ汚れ


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