用意周到
「赤ずきん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら?」
「なあに?おかあさん。」
「来週の頭にでもおばあちゃんのお見舞いに行ってきてほしいの。」
「来週まで待たなくていいよ。今すぐにでも暇だから行ってくるよ。まだ明るいし。」
「・・ありがとう、でもね。ああ、やっぱり私が行ったほうがいいのかしら。」
「どうしたの、おかあさん。今日何だか変よ。あ、変なのはいつもか。」
「最近、森に昼間でもオオカミが出るってもっぱらの噂なのよ。」
「えっ?そうなの?」
「・・・・・・・・・。」
「おかあさん?」
「危険だわ、やっぱり。あなたにはまだ早い。いいわ、おかあさんが今から行ってくるから。ちょっとお留守番しててちょうだい。」
「誰が行っても危ないわよ。なに考えてんの。」
「・・・・悔しいわ。」
「え?」
「オオカミごときに。」
「?」
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一週間後。
「おばあちゃん、風邪の具合はどう?」
「ありがとうね。だいぶ良くなったよ。それにしてもよくここまで無事に来られたね。もう必ずと言っていいほどオオカミに食べられるくらいの危険地帯になってしまったのに。運がよかったのね。いずれにしても本当によかったわ。」
「ううん、来る途中でばっちり仕留めてきたわ。もうあの付近に生息しているオオカミは絶滅しているはずよ。」
「えぇ?そうなのかい?」
「ええ、おかあさんが『1週間かけて』私に猟銃やその他の武器の使い方をみっちり仕込んでくれたの。まあ、体術は小さい頃から習っていたから、そのあたりは全く問題なかったんだけど。」
「あらあら、いつのまに。」
「だから心配しないで、おばあちゃん!」
「ふふ、頼もしい事。・・実はだいぶよくなってきたから、私もそろそろ討伐に行こうかと考えていたの。でもそれなら心配ないわね。」
「うちが猟師の家系でよかったね、おばあちゃん。」
完