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羅生門  作者: 興長
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八咫の鏡夜

 葬式が終わり爺ちゃんの本職を聞かされた日の夜23時ごろ、俺は事務所で見つけた八咫の鏡を持って帰って埃を拭いて綺麗にしていた。


 事務所で見ていた際に感じていた不快感を今は何も感じてこない。


 多分、見る人が求めている何かを見せる際に相手に不快感を感じさせてしまうのだろうと思う。


 俺も藤井さんも爺ちゃんが自殺した事がどこか納得できず腑に落ちてないのをこの鏡は見透かして真実と関連しているものを見せてくれたのかもしれない。


 もし本当にそうなら、軍艦島に何か秘密があるはずだ。


 俺は八咫の鏡を磨きながら軍艦島に行くまでの予定を考えていると、部屋の電気が突然消えた。


 部屋は薄暗くなるけど、いつの間にか少しだけ開いていたカーテンの隙間から月明かりが差し込んで来て思ったよりも明るかる部屋の中が見えなくなる事はなかった。


 ブレーカーが落ちたのかと思い八咫の鏡を月明かりが照らす机に置き確かめに行こうと立つ。


 すると、事務所で感じた不快感がまた込み上げて来た。


 俺はもしやと思い八咫の鏡を覗き込む。


 予想は当たっていた。


 八咫の鏡の中にはまた濡羽色の靄がかかっていた。


 今度は何を俺に見せるつもりなのだろう。


 霧が晴れていく。


 そこに映し出されたのは上空から眺める京都の街なのだが、街の一部が深紅に燃えている。


 俺は冷房がきいた部屋の中で一筋の冷や汗を流しながら言葉もなく唖然とする。


 すると八咫の鏡は少しずつ燃えている地域に近づいて行き鮮明にその場を映し出す。


 近づいて行くにつれ場所が分かって行く、燃えている地域は東寺や京都駅があるところだった。


 東寺周辺の民家崩れ倒れ、京都駅は半壊している、燃えた瓦礫の下では人が潰されていて生きながらに火に焼かれ苦痛に顔を歪ませてながら助けを求めている。


 東寺の近くを流れる桂川には火事で重度の火傷を負った人やまだ燃えている人達が飛び込み川が赤く染まる、まるで血の池地獄の様な惨状と化している。


 八咫の鏡が何を見せているのか分からない。


 近い未来起こりうる災害を見せているかの、それか神の悪戯で俺を弄んでいるのか。


 どうせなら後者がいい。


 そんな事を心許無く願っていると、東寺から桂川方面へ少し離れた1番火の手が強く建物が全て倒壊し煙で前も見えない町へと風景が近づいて行く。


 煙の中に見える火柱が左右に避けて行く、煙も風に流される様に道を作る。


 段々と薄く前が見え始め燃え盛る火の中心に建物様な影が見えて来た。


 そして等々と煙が捌けていきその先に吐き気を催す程に悍ましい物が火に焼かれる事なく堂々と聳え立っていた。


 それは近くにある東寺の教王護国寺がすっぽりと収まるほどの巨大な城門。


 それが待ち侘びたと言わんばかりに少しずつ開きかけていた。


 だけどそれは悍ましく、屋根には常に血の雨が降り注いでる様に血が滴り垂れ落ち城門を血で満たし続けている。


 血は瓦から垂れ、縄文の屋根を支える巨柱を滴り地面へと落ち血溜まりを作る。


 その門下を見れば頭蓋骨が踏み石代わりに並び門前へと導いている。


 こんな物一目見てわかる、人の世のモノじゃない。


 でも俺を1番困惑させたのはそんな事じゃなかった、その地獄の門かと思わせる、開かれようとしている城門の前に俺が立っている事だった。


 声が出ない、心臓の鼓動が痛い程に身体中に伝わって、体を流れる血液が全身を中から焼いて行く程に熱く感じる。


 俺がこの惨状を齎したであろう城門を開こうとしているのか、それとも何も出来ずに無力感に心が砕けただ立ち尽くしていだけなのか…


 俺はこの2日で起こった事、聞かされた事を整理するのでいっぱいいっぱいだって言うのに…


 もお…どうしたらいいのか、分からない…



             ― 友貞 智幸  序 ―

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