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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

男爵令嬢による男爵令嬢のための華麗なる復讐劇 〜アクア様、本日もとても素敵です!〜

「この者達……カルロ男爵一家は、罪を犯した!」


 王都・城下町。日差しの日の字も感じない、曇り空。

 鬱蒼としたこの日、中央広場にて、公開処刑が行われていた。処刑台の前に立つのは夫婦らしき男女とまだ4歳ほどの男の子だ。親子なのだろうか。男女は俯き、黙ったきりだ。男の子はそんな両親を不安げに見つめているが、何が起こるのかわかっていないようだった。


「罪状はスキューマ伯爵家への謀反、スキューマ伯爵令嬢への不敬罪である!」


 その声に、周囲はざわつく。


 スキューマ伯爵。その名を知らぬものは、いないだろう。領地に大河を有し、国内の水の供給に大きく影響する伯爵家である。そのため、伯爵家ではあるが国政に大きな発言力を持っている。近々、侯爵への陞爵もあるのではないかともっぱらの噂だ。


「裏切り者への、断罪を!」


 死刑執行人のその声に、周囲の群衆は答えた。


「「「「「裏切り者への、断罪を!」」」」」


 3人の首が落とされる。男の子の首が切られた時、僅かに唇が動いた。

 その視線の先には、それを遠くから見つめる少女がいる。


「……父さん、母さん、カルド……」


 彼女は、確かにそう言っていた。




 **




「アクア様、おはようございます!」

「スピーナ、ごきげんよう」


 王立貴族学院。

 そこは、全寮制の王国貴族の子女が通う学院だ。


「アクア様、本日もとても素敵です!」

「まぁ、ありがとう」


 アクア・スキューマ侯爵令嬢。

 国内の水の供給に大きく関わるスキューマ侯爵家の末娘である。


「お父様がくださったのよ。わたくしがお父様にお願いしたの」


 それは、アクアの口癖に近いものであった。

 アクアの父であるスキューマ侯爵は末娘であるアクアを溺愛していた。彼女がお願いすれば、叶わないことはないほど。花よ蝶よと甘やかされたアクアはふわふわとした、可愛らしい淑女に育っていた。

 そんなアクアを利用しようと、媚を売るために近づくものは数多くいる。そんな中、彼女に心酔……もとい、傾倒している少女がいた。

 スピーナ・フォンテ子爵令嬢。彼女は平民出身の養女だと聞くが、そんなことを感じさせないほどの気品と気立の良さを持ち合わせている。……ただ、アクアに関することを除いて。

 おそらく、アクアに関することを除けば理想の令嬢、人気もさぞかし高かっただろう。


「スピーナ、本日も頑張りましょうね」

「はいっ!このスピーナ、アクア様と同じ学び舎で学ぶことができ、感無量です!」


 そんな微笑ましいやり取りを遠くから見つめるものがいた。

 ピッコロ・ディアボロ公爵令嬢である。

 建国当時から続く名家の子女。アクアと共に学院三大美女に数えられる令嬢だ。アクアが花の妖精姫と呼ばれるのに対し、ピッコロは黒薔薇の君と呼ばれていた。


「スキューマ侯爵令嬢、騒がしいですわ。もう少し黙ってくださる?」

「あら、すみません。静かなところがお好きなのだったら、静かなところに行かれたらどうでしょう?」


 ……二人の間にはばちばちと火花が散っていた。この二人の令嬢、実に相性が悪いのだ。ピッコロは静寂を好み、多くの人と明るく賑やかに話すアクアを注意するが、アクアはその自覚はあまりなく、注意に素で嫌味を返す……と言った具合だ。


「……フォンテ子爵令嬢、後でお話があります。放課後、校舎裏に来なさい」

「……っ、かしこまりました……」

「ピッコロ様、その言い方はないですわ!スピーナが可哀想です!」


 ピッコロは公爵令嬢。子爵令嬢であるスピーナに拒否権などない。だから、それをアクアが咎める。


「だから、なんなのです?」


 ピッコロは絶対零度の視線を送り、踵を返した。

 教室を出て行ったピッコロに対し、アクアは反抗心を高めた。




「貴女、ご自身が騒がしいことは自覚していて?」

「……はい。申し訳ございません」


 放課後。律儀にも校舎裏来たスピーナはピッコロにネチネチと嫌味を言われていた。


「でしたら、もっと気を付けてください。学院は学び舎。余計な私情は挟まないでください」


 ピッコロがスピーナの手に触れる。


「……善処いたします」

「善処?」


 ピッコロが切り揃えられた美しい眉をピクリとあがる。


「……改善、いたします」

「そうね」


 顔色の悪いスピーナが搾り出すように言うと、ピッコロはさっさと帰ってしまった。


「……あら?」


 スピーナの手には、紙が握られていた。




 **




 その日の夜。学院内の森に、二つの人影があった。


「……で、よろしいので?」

「はい」

「では、こちらにサインを」


 黒いローブを着た人物が紙を差し出すと、黒装束の人物はそこに署名をする。

 無事に契約が成立したのを見て、黒いローブの人物が口を開いた。


「それにしても、驚きましたわ。貴女がこんなことを企んで()()()に近づいていただなんて」

「わたくし……いえ、わたしには、やらなければいけないことがあるので」

「……そうなのね」

「では、よろしくお願いします」


 それ以上言うことがない、と言うように黒装束は闇に溶けた。


「わたくし達は悪魔様の使い。我らが悪魔様との契約を望むものに、手を差し伸べましょう。……対価と共に」


 そのセリフは、黒装束の人物には届いていない。だが、黒ローブの人物は言う。


「人とは、随分と身勝手なものね」


 その呟きは、誰も聞いていない。


「世の中、そんな単純に成り立っていたら誰も苦労しないのよ」


 それは、呆れも含んでいた。


「まぁ、話を持ちかけられたら仕事なのでもちろんお受けしますけど」


 そういうと、用は済んだと言うように、黒ローブも闇の中に消えていった。




 **




「アクア様!」


 1週間後。

 スピーナはピッコロに注意されたことを忘れたのか、前となんら変わりない様子でアクアに近づく。


「何の用かしら、スピーナ?」


 名を呼ばれ、嬉しそうに顔を綻ばせたスピーナだったが、キリッとした表情に戻す。


「……あの、お話があるのです」

「今ではダメかしら?」

「できれば二人の時がいいのですけど……」


 申し訳なさそうにスピーナが言う。


「ん〜、でしたら、明日の放課後でどう?」

「ありがとうございます!」


 スピーナの声は、楽しげに弾んでいた。

 アクアはそんなスピーナを見て目を見開く。……初めて見た表情だ、と言わんばかりに。




「それで、お話って何かしら?」


 翌日の放課後、学院の寮にあるアクアの私室。アクアの側近、侍女も排された、真の二人きりの状態でお茶会をしていた。


「……ピッコロ様のことなのです」


 言いにくそうにスピーナが言うと、アクアは少し眉を顰める。


「まぁ、またあの方なの?あの方、人に注意するばかりでご自身から適応しようとなさらないものね。……わたくし、あの方が苦手だわ」


 本人がいないことをいいことにアクアの口はすべる。さらに、この場にアクアを咎めるものも、窘めるものもいなかった。


「……そうなのです。あの方は……」


 スピーナが何度か相槌を打つと、アクアによる悪口はさらにエスカレートしていく。


「本当、信じられないわ!このわたくしにあんな態度を取るなんて……!爵位がわたくしより上だからって!」

「……そうですね」

「そもそも、なんであんな古臭くてジメジメとした田舎者がわたくしと同じく学園三大美女に数えられているのかしら?選んだ者の顔が見てみたいわ」


 ぷんぷんと言う形容詞が似合うほど、言葉の強さの割には彼女は可愛らしく怒っている。

 ただ、一つ訂正をするとすればピッコロは別に古臭いわけではない。ドレスも流行に乗った最新のものであるし、彼女に似合うものを着ている。ただ、それが暗めの色というだけで。


「大体、なんなのかしら、黒薔薇の君って。あ、スピーナ、知っているかしら?」

「……何を、でしょうか」


 流石のスピーナも聞き疲れたらしく、返事に気合いがこもっていなかった。


「ディアボロ公爵家は悪魔の使いらしいわよ」

「……そうなのですね」

「あっ!」


 アクアは突然、いいことを思いついた、とばかりにポン、と手を打つ。



「お父様にお願いすればいいのだわ」



 そういう彼女は可愛らしい顔に見合わず、歪んでいた。


「……うん、そうね。そうすればいいわ。ねぇ、スピーナ」


 アクアは猫撫で声でスピーナに語りかける。


「はい、スピーナです」

「わたくし、週末に実家に帰ることにしたわ。その時、貴女をお茶会に招待するわね」

「……光栄です」


 招待という名の、実質呼び出し。

 先日のピッコロの行動と全く一緒だった。ただ、そのことに本人は気づいた様子もなくアクアは楽しげに話す。


「どうしたの?元気がないようだけど」

「気のせいでは……。いえ、そうかもしれません……。元気がありませんでしたね、わたくし。その……ピッコロの様のことを考えていたのです」

「まぁ、そうだったのね。貴女が気に病むことはないわ」

「ありがとうございます」


 帰省すると決めたアクアを、スピーナは曖昧な笑みで眺めていた。




 **




「いらっしゃい、スピーナ」

「本日はお招き、ありがとう存じます、スキューマ侯爵令嬢様」

「いいのよ、そんなに硬くならなくて」

「はい、ありがとうございます」


 その日のスピーナはいつにも増して機嫌が良かった。きっと、わたくしがお茶会に招待したからだわ、とアクアは思っている。そして、それは間違いではない。静かな侯爵家のサロンでアクアはティーカップを傾けた。


「それでね、お父様にお願いしたの」


 スピーナが席につくなり、アクアは先日の話の続きを始める。結局、あれから今日まで二人きりで話す機会は得られなかったからアクアは話したくてウズウズしていたようだった。


「最初は渋っていらしたけど、わたくしがお願いしたら引き受けてくださったわ」


 アクアは少しばかり、父親におねだりした。内容はディアボロ公爵令嬢に虐められている。このままでは学院に行けなくなってしまう。その被害はスピーナ……フォンテ子爵令嬢も受けている、と。


「お父様に貴女の名前は有効だったわ」


 スキューマ侯爵はフォンテ子爵を重要視している。

 10年近く前までは敵対派閥に属していたものも、近年は娘のスピーナを通してスキューマ侯爵の派閥にいる。10年ほど前に陞爵したばかりで少しでも多くの味方と手札が欲しいスキューマ侯爵にとって、フォンテ子爵はなんとしてでも味方に引き込んでおきたい存在だった。


「そうなのですね。良かったです」

「だから、スピーナはもうあの方のことを気にしなくていいわよ」

「ありがとうございます」


 お礼を言うスピーナを満足そうに見たアクアは一口、茶を飲む。しかし、その茶はぬるくなっていた。


「ところで、このお茶を出したのは誰かしら?もうすっかりぬるく……」






「ゴホッ……!」


 苦しげな異音ととともに、ガシャン、とティーカップは無惨に割れ、茶がこぼれた。

 アクアが苦しげに胸を抑え、床に倒れる。固いタイルが、彼女の身体を受け止めた。


「あら、そうでしたか。それは失礼しました」


 聞き間違えることのない、流麗な声が響く。


「大変静かなお屋敷でしたね」


 ……静かすぎる、屋敷だった。


「何が……起こったの……?」


 コフッ、と口から鮮血が溢れる。


「何もかもあるわけないじゃない、アクア」

「すぴー、な……?」


 アクアは突然アクアを呼び捨てにしたスピーナを信じられないような目で眺める。

 床に倒れているせいか、立ち上がったスピーナが異様に大きく感じられた。


「わたくしが毒を盛ったのですから」

「なんで……そんな、こと……を……」

「なんで?決まっています。まぁ、邪魔者は来ませんし、時間はたっぷりありますし……聞いていかれます?」


 時間はたっぷりある。それは、アクアが毒に苦しむ時間の長さだった。


「わたくしはフォンテ子爵令嬢です」

「そん、なこと……知って、ますわ……」

「では、こちらは知っていますか?わたくしは知っての通り、養女ですけれど、わたくしの養父母に一人娘がいたそうですわ」


 どこか、遠いところを見るように、スピーナが言った。


「それ、が……どうか……しま……して……?」

「暗殺されたそうです」


 間髪入れずに、スピーナが答える。


「敵対派閥によって、暗殺されたそうです。……ねぇ、ご存知?フォンテ子爵家は10年ほど前まで、スキューマ侯爵……当時のスキューマ伯爵家の、敵対派閥に属していたのですよ?」


 優しすぎるほどの笑みを浮かべ、スピーナは立ち上がると床にうずくまったアクアを意図的に見下ろす。

 お前にもう用はない、とばかりに。そこには、アクアに傾倒し、心酔し……敬っていたスピーナはいなかった。


「敵対派閥……即ち、スキューマ伯爵しか考えられないじゃないですか。それほどの力を持っていられたのは……」

「あな、た、は……」

「貴女が今、苦しんでいる毒は()()()子爵令嬢に盛られた毒ですわ。……どうです?苦しいでしょう?その苦しみを、本当の子爵令嬢は味わったのですわ」


 スピーナの瞳には、侮蔑しか写っていなかった。


「これは、復讐です。子爵家の……」


 スピーナはそっと瞼を閉じる。


「でし、たら……コホッ!わた、くし……なんか、よりも……」






「……と言うのは建前です」

「……え?」


 アクアの目が、見開かれた。


「本当は、わたくしの……わたしの、復讐よ」


 今まで優雅さを失わなかったスピーナの口調が、初めて崩れた。











「わたしの名は、スピーナ・カルモ。かつて王都の中央広場で処刑された、カルモ男爵家の長女!」


 それは大きな種明かし。

 それを今まで隠し通し、今、ここでこうして種明かししているという事実が、スピーナを何よりも高揚感へ持ち上げていた。


「ねぇ、知っているでしょ?知らないとは言わせないわ。だって、罪状は内通罪と令嬢の不敬罪だもの。……身に覚えがないなんて言わせないわ」

「もし、か、して……」

「えぇ、そのもしかしてよ」


 スピーナの目は、今までにないほど恨みに燃えていた。


「そんな、わけ……ない、わ……。あの時、に、あった……男爵家の、長女、は……あな、た、と……かけ離れて、いる、もの……」

「それはそうだわ」


 スピーナの髪は、傷んでいた。


「だって、容姿も性格も、名前も、何もか、全部。わたしはあの日、全て捨てたもの」


 スピーナはスピーナという名ではなかった。スピーナがスピーナになる前の名前を、スピーナ自身はもう覚えていない。

 捨てたからだ。

 復讐に生きるため、持っていた全てを捨てて、理想の令嬢へと生まれ変わった。


「子爵夫妻には本当に感謝しているわ。あぁ、それと子爵令嬢を殺したあなた達にも、ね」


 男爵令嬢としてのスピーナはもちろん、処刑の対象だった。しかし、両親の図りにより、屋敷から逃げ、王都の城下町に溶け込み、身を潜めていた。子爵夫妻はそんなスピーナを見つけ出し、養女にした。

 哀れな少女への慰みと、己の復讐をのせるため。……ちなみに、男爵令嬢としてのスピーナは行方不明、10年近くの年月が経った今、死亡したという扱いになっている。


「そろそろ時間かしら?」


 チラリ、とスピーナは時計を見上げると、アクアを一瞥した。


「さようなら。わたしは貴女に傾倒なんかしていなかったわ。貴女に近づいていたのは、わたしも含め、利用しようと目論むものだけ。友人なんていなかったのよ」


 その日のスピーナはいつにも増して機嫌が良かった。きっと、わたくしがお茶会に招待したからだわ、とアクアは思っていた。そして、それはあながち間違いではない。……だって、スピーナは復讐ができたのだから。


「わたしは今でも覚えているわ。両親の、幼い弟の首落とされていく様を」


 あんなにも人とはあっけないのか、と思ったほどだ。


「弟が最期に言った言葉、なんだと思う?」

「しら、ない……わよ……」


 スピーナは弟を、助けることはできなかった。

 苦しみと恐怖に染まった弟の目。群衆の中で、自分の方を見て、僅かに言った言葉。


「答えはね、『姉様』……よ」


 スピーナはもう、何も言葉を発しないアクアにそう吐き捨てた。


「気は済んだかしら?」

「ええ。ありがとうございます」

「礼を言われるほどでもないわよ」

「いえ、それほどのことですわ。……ディアボロ公爵令嬢、ピッコロ様」


 屋敷が異様に静かなのは、ピッコロの仕業だった。

 ディアボロ公爵家は悪魔の使い。悪魔との契約を望むものと悪魔の仲介者だ。『魔法』という、謎の力を使う一族でもある。ピッコロは成人前にして、すでに家業に深く関わっていた。


「悪魔様との契約を望むものを、ディアボロ公爵家は拒みませんもの」


 今のピッコロは今までとはどこかが違った。嫌味をいう令嬢ではなく、ただ淡々と物事を進める令嬢がいる。

 ピッコロはアクアの反感を買うために、演じていた。アクアにとっての悪役令嬢を。


「は〜、清々した!やっと……復讐なんかに、生きなくて済む……」


 スピーナの心の声。10年にわたる、長い長い復讐から解き放たれたのだ。


「そうですわね。これから貴女は何をするにも自由」

「うん。何しようかな〜」




「……対価を差し出したのならば」

「……え?」


 告げられた言葉に、スピーナは目を見開いた。


「あら?ご存知ないの?」


 フッ、と呆れるようにピッコロは高らかに告げる。


「悪魔様との契約は対価を必要としますのよ?」


 わたくし、言ったはずですし、風の噂でもそうだと思いますけど?とピッコロは言う。

 確かに、彼女は言っていた。悪魔様との契約は対価を必要とする、と。しかしその言葉はスピーナに届いていなかった。


「今回は悪魔様との契約だけでなく、わたくしも魔法で屋敷のお掃除もしましたし……全てでこれほどかしら?これに似合うだけの対価をくださいませ」


 差し出された紙にスピーナは絶句した。どこからどう考えても、スピーナではどうにもならないものだった。


「あら?払えませんの?」


 極めて残念そうにピッコロは言った。


「なら、代替策でもよろしくてよ」

「では、それで!」


 どうしようもないと沈んでいたスピーナが即答する。


「分かりましたわ。それでは、失礼します」


 ピッコロはスピーナから少し離れ、スピーナに手を向けた。




「対価は、貴女自身の魂、ということで」


 彼女の手の平から禍々しい光が放たれ……スピーナは地に倒れ伏した。


「これで今回のお仕事完了、ですわね」


 ピッコロの声は、いつにも増して明るい。今にも飛びそうな軽さだった。


「貴女は今、一瞬でもわたくしを悪役令嬢とか悪女、と思いましたわよね」


 白目を剥いたスピーナはもう、ピクリとも動かない。


「そこでわたくしから一つ」



「悪役令嬢、悪女……その共通点は、悪役ということ」


「しかし、悪役というのは正統派から見て、悪や敵に当たるものですわ。たとえ、いくら敵キャラが正しくとも……ある人から見れば正義の味方、ある人から見れば悪役ですの」


 最期は分かりませんけど、とピッコロはつぶやく。


「少なくとも、貴女と悪魔様の契約を仲介した時のわたくしは貴女にとって、とても心強い味方だったでしょうね」


 そして、踊るように軽く言った。




「わたくし、また一つ、人助けをしてしまいましたわ〜」

お読みいただき、ありがとうございました!

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4/9 追記

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[一言] エコエコアザラク・・・。エコエコアザラク・・・。
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