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プロローグ

 


 部屋のなかは静まり返っていた。時間を確認するとすでに深更しんこうになっている。母親がまた熱をだしたようだ。少し前まで平熱であったのに、いつの間にか三十八度を超えている。熱を冷ますため、首筋や脇の下にアイスノンをあてたり、カロナールという解熱剤を飲ませたりするのだが、その夜はなかなか熱が下がらなかった。


 一晩中看病をしていた達也たつやは、引っ越した時に部屋の片隅に放置しておいた段ボールを開けてみた。そのなかに父のアルバムが二冊入っていた。一冊は、父の子供の頃から母と結婚する時までの写真が最後のページまで貼られている。しかし、もう一冊のアルバムは、たったの五ページだけ写真が貼られているだけであった。その最後のページに貼られている三枚の写真。そこに写っているのは若い女性である。写真の背景は、昭和中期のように思われた。女性は、父の兄の娘人美(ひとみ)とどことなく風貌ふうぼうが似ている。はじめは人美かと思っていたのだが、写真の背景からすると明らかに異なる女性であった。もしもその女性が父の兄妹であるならば、達也の叔母にあたるのだが、達也はその女性を知らない。かつて一度も会ったことがないのだ。


―このひとが父親の末の妹―


 白黒映画に登場するような丸みを帯びた黒い車を背に、振袖ふりそでを着ている女性が微笑ほほえんでいる。達也は、成人式に撮影したと思われるその写真を、何の悲哀の情もなく眺めていた。




             

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