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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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67 グレイとモス、スラの不在とジルの従魔登録

 迷いの森の奥の奥の荒れ地に慌ただしくグレイ達が転移した。

迷いの森の奥の奥、さらに奥。グレイでも行ったことがない場所には簡単に転移できない。どこで野宿するのか?魔物に襲われないかと心配になる。ライに出来る事はない。数日たってもグレイから連絡はない。

グレイ不在でも変わらぬ日常を送るよう努める。


 庭や畑は小精霊が頑張っている。モスに褒めてもらおうと皆で力を合わせて働いている。庭の花も木々も変わりなくきれいに咲いている。野菜や果物は瑞々しい。保管庫にそろそろ入りきれなくなりそうだ。


 地下のカフェはお客様が自分自身でお茶を入れる。お菓子を選んでお皿によそって運ぶ方法に変わった。代金は収納棚に自ら収めていく。信用商売?精霊も妖精も騙そうとする者はいない。もしかしたら悪意のあるものは来られないのかもしれない。


 地下の救護室はスイとリリーが仕切っていた。

その分グレイに指導を受け火竜や妖精猫、ジルが救護室で働いている。怪我、病気の者の手当てに当っていた。

手こずるようならライに声をかける。怪我人、病人の移送はジルが担当した。本来の大きさになって駆け巡るジルを襲うものはいない。それでもまだ子供らしい。親はどれだけ大きいんだ。


 冒険者に見つからなければよいがと心配してしまう。成長すればグレイのように転移も話すこともできるらしい、弱っていた妖精猫はリリーの手伝いをしている。リリーの餌付けで少しずつ食べる楽しみを覚えたようだ。


 火竜は順調に回復している。最近は自分で桶を用意して精霊に水を張ってもらい自分で加温する。リリーに薬を入れてもらい薬浴している。残った薬湯はグレイに渡された魔法袋に片づける。

足の蹄をけがしてた魔羊のモコモコした綿毛で火竜の鱗を磨いてる。それぞれが助け合い仲間の不在を補っていた。


ライはリリーの負担軽減に、食事当番をすべて受け持った。リリーは本来の家事精霊の仕事だと言い張ったが、今は皆で力を合わせる時と説得した。

 もう少しでダイアナの魔法指導が終わる。時間が作れる。商業ギルドにはレシピのお金がある。無理することはない。お菓子を追加しよう。リリーはライのお菓子大好きっ子、とても喜んだ。


冒険者ギルドにジルの従魔登録に行く。ジルを鑑定した。


  【 白いオオカミの子供・ライの従魔 】 

    名前 ジル  3歳  オス  迷いの森生まれ

   隠匿 幻獣フェンリルの子供

      風魔法・空間魔法・身体強化・・・・・


 良かった。隠匿してる。ギルドで大騒ぎになってしまう。よくよくジルに言い聞かせ登録するまではライが抱えて冒険者ギルドに移動する。


「ライちゃん、久しぶり。あれ?いつもの猫は?」

「グレイは家でお留守番。この子の従魔登録をお願いしたいです」

受付奥の別室に案内された。

 大きな部屋に固定された鑑定の水晶の球。机にソファー、いたって簡素な作りだった。従魔登録は少ないのか?そういえば街で見たことない。

違う扉から屈強な男性が現れた。


「この子はオオカミだね。真っ白なんて珍しい。馴れ初めは?」

「迷いの森で薬草採取してるときに傷ついて弱ってるところを助けました。その後、時々森で会うようになり懐いてくれました」


 嘘と真実を混ぜて話すと信憑性が高まる。話す方も全部嘘だと言葉に詰まったり、嘘を言ってるという罪悪感が言動に出る。

自信をもって話すことが大事だとグレイに言われた。


「白いオオカミは森では目立つから小さいころに襲われてしまい育つことが難しい。おい、オオカミお前は幸運だな。一応この水晶に前足をのせて」

ライがジルの前足を水晶玉に乗せる。小さく光る。ジルはさっと足を引っ込める。顔をライの胸に押し付けた。


「怖かったか?それにしても吠えないし暴れない狼だな。この首輪を身に着けてくれ。成長とともに首輪の大きさは変わる。破損時は再申請になる。

 従魔は主の人生に付添う。大事にしてあげてくれ。主が死ぬと従魔も死ぬことがある。それほど繋がりが大きい。

どうしても飼えなくなったらここに連れてきて欲しい」


「そんな事あるんですか?」

「人は生きていれば色々事情がある。主が病気になったり死んだりと・・・」

「そういう時はどうなりますか」

「ギルドの森で過ごす。強制的に契約を切るのでほとんどの従魔は弱っていく。森には返せない」

ライの胸に顔をうずめるジル。小さく震える。


「ジル大丈夫だよ。ジルにはたくさんの仲間がいる。私も元気で長生きするから」

「ぶぅ。長生きする。子供から聞く言葉じゃないな。あはは・・」

暗い雰囲気が一気に明るくなった。ジルはライの顔をぺろりと舐めた。

「頭がよさそうだな。人の言葉がわかるか?」

ジルの顔を覗き込まれる。慌てて、挨拶をして部屋を出る。


 冒険者ギルドを出るとジルはライの腕から飛び降りライの前を歩く。時々ライの方を振り返る。護衛騎士のようだ。

ざわざわする人ごみに入るとライの足元横ににぴたりとついて歩く。ジルの足を踏まれることがない。結界か?


 グレイと違ってジルは子供。フェンリルがどのように成長するのか分からない。きっと私より長生き。精一杯可愛がって楽しく過ごそう。先のことは先に丸投げ。だって幻獣だから、考えても答えなんて誰も知らない。


 地下に行く妖精のドアを大きくしないと。寝るのは何処にする?リリーと相談。ジルにとってグレイは厳しい兄貴、リリーは優しいけどお節介なお姉さんらしい。ジルがグレイの不在の寂しさを埋めようとしているのをライは感謝している。途中ジルを抱きあげその温もりを感じながら家に帰った。



 モズ商会に依頼した洗濯液は、洗濯業者が利用を開始した。仕上がりの良さと従業員の負担の軽減が決め手になったようだ。

大口注文にモズ商会は下請け工房を作って大量生産に入った。しばらくすると一般家庭用の小さな壺入りが始まる。

 リチャットさんはさらに忙しくなった。経過報告は手紙になった。個別のレシピの話はしばらくないらしい。そこまで手が回らない。ライにとっては大助かり。


 商業ギルドの方も髪の化粧品が順調に仕上がる。

こちらは工房を2か所にして大量生産分と個別対応に分けて作っている。工房主はライのレシピに手を加え富裕層向けに工夫をしている。


 個別注文は何度も話し合いをして製品を仕上げる。もちろん高価になるが希少性が高いため新し物好きの貴族に人気が高い。

希望の香りをつける。パサつきの人や脂性の人はオイルを変える。容器を工夫する。贈答セットを作るなどアルバートさんが係わりながら進めている。

しばらくは新しいレシピを請われることはないだろう。

誤字脱字報告ありがとうございます

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