55 新しい出会い
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リア師匠の為にあれこれつめ込んだ魔法袋をリチャットさんに手渡すためモズ商会を訪れたところ、待ちかねていたように応接室に案内されお茶を飲むことになった。
「丁度よかったです。ライシーヌ様、こちらから連絡入れようかと思っていたところでした」
いつものようにビシッと三つ揃いで決めたリチャットさんが少し慌てた様子で話し始めた。
「ライシーヌ様はやめてください。ライでいいです。やっと薬師の資格を取った新米ですから」
「わかりました。ライさんが商業ギルドで洗髪液を登録されましたね。
それが・・・・凄い騒ぎになっています。今までの石鹸と違って使いやすい。
汚れの落ちが良いのに艶が出る。櫛どおりがいいということで、平民から富裕層に広がっています。個人の髪質にあったものが欲しいという方が幾人かいるのですが受けてもらえないでしょうか。
はっきり言います。髪が薄い。髪が柔らかすぎる。髪の色素が落ちる。薄毛(禿)隠したい。要望は限りなく・・・・あるのです」
「ええ・・・希望の効果を満たせるか自信がありません。数人なら相談に乗るくらいなら・・できれば個人契約はしたくないです。本業は、薬師です。
香りをつけるなどはできますが頭皮の治療は難しいです。個人用に作ったレシピをその方に渡してそちらで作ってもらいたい」
「わかりました。ライシーヌさん。無理を言って申し訳ありません。その旨を納得していただくよう確認します。依頼者は、秘密にしたい方なので無理は言わないと思います。
女性にとって髪の美しさはとても大切な武器。もちろん男性にとってもです。
ライさんのように若い方は理解できないでしょうが髪が決まるだけでもその日一日が違うのです。
毎日石鹸で洗っては香油を塗ってさらにこてで髪に癖をつける。髪を酷使しているので髪の自然な艶など手にできないのです。少しでも良い商品が出たら手に入れたいと思うのです」
困った顔をしながら説明してくれた。
「でも商業ギルドのほうで上質の洗髪液を作っていると思うんだけど・・」
「そうなのですが・・・苦戦しているようです。自分が使ってみたのですが洗い上がりが物足りない。効果にばらつきが出る。完成品まではいっていません」
モズ商会にまで問い合わせが来ている。
「あと、これ洗濯液です。今の洗濯は棒でたたく、足で踏む、灰汁で洗う、洗濯の実を潰す、単に水で洗う方法が取られています。
この洗濯液なら手荒れも少なく汚れも良く落ちると思います。リア師匠も愛用しています。効果はあると思います。
試供品として持ってきたので使ってみてください。
できればこちらで取り扱ってもらいたいです」
「良いのですか。初契約時から問題を起こしてしまったのに」
ここはちゃんと話さないと。
「私がリア師匠の下で修業中もリチャットさんは、ちゃんと評価して取引してくれていました。たまたまファイルさんみたいな人がいただけです。
それだって遅かれ早かれ彼は捕まったと思います。彼は自業自得です。
商業ギルドから自分で商会を立ち上げたらといわれたけど私には無理。
それをリチャットさんに丸投げしたいです」
ぽかんとした後いつもの締まった顔に戻った。
「その重荷をぜひモズ商会で背負わせてください」
そう言って洗濯液の試供品を受け取ってくれた。
良かった。もともとお世話になったモズ商会。縁は切りたくない。
広場で屋台飯を買って帰ろうかと歩く。
「ライ、大きな樹の下のベンチに腰かけてる女の子、奥の目つきの悪い男たちに狙われてる」
ベンチの女の子は泣いているのか、うつむいている。
周りの様子に気が付いていない。
貴族街と違ってここは街の広場。人通りのある場所だけど。ピンク色のヒラヒラの多いワンピースは目につく。通行人がチラチラ見る。
着ている物からそれなりに良いとこの娘だとわかる。平民は声をかけない。
本来なら侍女か護衛ぐらい連れていてもおかしくない。
「グレイ、歩きだした奥の三人を足止めするからその間に女の子のそばに寄り添って」
阿吽の呼吸で二方向に分かれ攻撃を開始した。
若い男たちは、決して身なりが悪いのではないが遊びなれた様子。ライより数年年上だ。三人に囲まれたら女の子は成すすべがない。
指の先に魔力を込め小さい氷の粒を作って足のすねに打ち付ける。氷はぶつかった拍子に割れて石畳に落ちる。すぐに溶けてしまう。
「「「痛て!」」」
どさどさと何もないところで男三人が転ぶ。周りの人は驚いてその場から離れて彼らを見た。
「何見てるんだ。こっちを見るな」
なぜ転んだか分からない三人が気を取り直してベンチを見たら女の子がいなくなっていた。
「お前がトロトロして転ぶから俺らまで転んだんだ」
「えっ俺か? 足に何かぶつかったんだ」
「言い訳はいいよ。上玉だったのに」
ぶつぶつ言いながら周りの人の視線を避けるようにその場を去っていった。
男たちが立ち去ったのを確認してグレイを抱いた女の子に声をかけた。
「ごめんなさい。驚いたでしょ。
人通りの多いところでもお嬢様の一人歩きはしないほうが良いと思う。誰か迎えに来てくれる?」
泣きはらした目は真っ赤に腫れそのままでは帰れそうになかった。
「私はライシーヌ12歳、この街で薬師として働いています」
「えっ 12歳で薬師として・・・・・」
「もしよかったら、私の家で一休みしてから帰りませんか?ここからちょっと歩くことになるけど」
女の子はうなずいてライシーヌの後ろを歩き始めた。
「この猫は・・・・」
「グレイです。私の相棒。気が付いていましたか?胡散臭い男たちがあなたを狙っていたの」
「えっ・・・・全然気が付いていませんでした。助けてくれたのですね」
おっとりとした声、本当のお嬢様だ。
「グレイが重たければ私の方に移すけど」
「このままで・・・腕に暖かいぬくもりが伝わって・・・」
「グレイ、しばらく彼女を癒してね」
言葉少なめな女の子はそのままライの後をついてきた。
ライは悪い人ではないがそう簡単に知らない人について行ってはいけないだろう。あとで忠告しないといけない。
女の子は貴族だろうか。貴族は慇懃無礼だとか、我が儘だとかいろいろ聞いてはいる。けど今はか弱い女の子だ。少し休んだら馬車乗り場まで送っていこうと考えた。
家の前に着くと
「まぁ・・なんて可愛らしい家なの。まるでおとぎ話に出てくる妖精の家」
精霊たちの渾身の庭に立つ赤い屋根の家は確かに可愛い。ライ名義になった途端精霊たちは制限がなくなった。
家の周囲に木々を植え季節の花を所狭しと植えている。家の裏では薬草を育て家庭菜園までしている。その全権をノームのモスとスライムのスラが取り仕切っている。
小さな風精霊がそよ風を起こし、小さな水精霊が霧雨のように花や木々に水を撒く。家の前を通る人が褒めてくれるのでさらにやる気が増していた。
誤字脱字報告ありがとうございます。
修正しました。内容に大きな変更はありません。




