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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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54 再び女神の祝福

 洗髪液のレシピが完成してちょっと落ち着いた。

今日は教会に行くことにした。特に祝福の儀のような義務はないが成人できたことへの感謝を祈るのも大切なことらしい。


 女神から魔力の器を大きくしていただいたりと部下の失敗の尻拭い?とりあえずいろいろ祝福していただいたので今があることに感謝しよう。

グレイはぶつぶつ言っているがリリーの作ってくれた赤いマントをちゃっかり羽織って首には緑のスカーフをしている。

ライもリリーのお勧めの若葉色のワンピースに着替えた。


 荘厳な石造りの教会の中には幾人かの人が祈りを捧げている。

ライは右端の空いた木の椅子に腰かけ両手を胸の前に握り合わせ心の中で無事成人できたこと。薬師のお婆と姉妹のリア師匠に教えを受けられたことを感謝した。そしてもう少し背が欲しいとお願いもした。


しばらく目を閉じ祈っていると周りのざわめきが耳にはいった。目を開け周りを見ると教会の高いステンドガラスに描かれた女神から金色の光の粒が舞い降りていた。


「女神の祝福・・・」

「祝福が・・・・」

「感謝申し上げます」

 目の前にある女神がほほ笑んだような気がする。

これ以上何かあると困るので早々に立ち上がる。祈りの人の中で黒いドレスを纏った一人の女性がライを見つめていた。ライの知り合いではないので目礼して教会を後にした。


「まったく女神は何をしてるんだか。下手をしたら聖女降臨なんて騒がれるとこだよ。しばらくは教会は避けたほうが良い」

グレイの言い分も良くわかる。

今回は呼び出しがなかった分祝福が出たんだろう。周りにも熱心に祈りを捧げている人もいたから誰に祝福が下りたなどわからない。


 グレイと念話しながらモズ商会に向かった。

ファイルのこと以外はモズ商会に不満はない。リア師匠のころから良くしてもらったので取引を再開することにしている。以前のような定期納品でなく持ち込みのみの取引にしたい。


 モズ商会に洗濯液と手荒れクリームを下ろそうと思っている。試作品を試してもらい良ければ手軽に買える値段で下ろしてもらえたらと相談する予定だ。すべて商業ギルドでは目立ちすぎる。

さらに貴族がかかわるとライには手出しできない。レシピとして公開すれば使用料を払えば誰でも作ることができる。


 しかし同じレシピでも作り手が違えば多少なりとも差異が出る。同じ材料、同じ手順で料理人が料理を作っても同一のものはできないのと同じだ。

レシピ登録したらライの手から離れたことになる。それがなんか不安。


 モズ商会では以前から取引を担当してくれたリチャットさんが待っていてくれた。

「取引の再開感謝します」

深々と頭をさげる。大の大人に頭を下げられるとどうして良いのかわからない。


「あのーもう解決したので気にしないでください。

それよりリア師匠は元気でしたか?」

「元気です。息子さんの家の離れに自分用の工房付きの家を建て、普段はそこで生活しています。食事などは本宅から届けてもらうようです」

「師匠は生活力が少し低いからその方が健康でいられるかも」

「そうなんです。リア様も自分で作るより楽だし美味しいし孫たちと食卓を囲むのも楽しいそうです」思い出すように話すのを続ける。


「でもライ様の美味しい料理が懐かしいと言っていました。魔法袋に詰め込んだお菓子を大切に食べているそうです。私にフルーツパイを一切れ出してくれました。

今度こちらに来る時はライ様の料理を差し入れして欲しいと言ってました。月一回隣町に行きますのでお手紙などありましたらお届けします。

そうそうバタバタしていて渡し遅れましたがリア様からのお手紙です」


手渡された若葉色の封書は結構厚いものだった。

それからは洗濯液と手荒れのクリームの見本の説明をして結果の連絡が来るのを待つことになった。

さすがに大きな商会なので洗髪液の情報が入っており個人依頼が入ったら受けていただけないかと話が出た。多くは対応できないが受けられる範囲でと話して帰宅した。


 リア師匠の手紙は転居してからの生活や街の様子、家族のことといろいろ書かれていた。

夫を亡くし自分の錬金術に自信を無くし生きる気力がなくなっていた。ライと出会え、アリーシアのことを知れたこと。もう一度錬金術に取り組めた。


 この一年が素晴らしい一年だったと書かれていた。

最後に洗髪液と体用の洗浄液(お肌に優しい)と洗濯液を送ってほしいと書かれていた。可笑しい?レシピは持たせたのに・・・・


作ってみたがライが作った物のほうが効果が高いし使い慣れているのでと書かれていた。お嫁さんやお孫さんに喜ばれているらしい。師匠の使う分くらい楽勝である。


リチャットさんから手渡された魔法袋にいろいろ詰め込むことにした。もちろん手紙も長々と書いてしまった。

保護者がいなくなったそばからトラブルが発生したこと。見た目を変えただけで(ワンピースを着ただけで)人の評価が変わる。


 商業ギルドで薬師の資格を取ったこと。洗髪液や冷却のレシピなどを登録した。錬金部屋の地下室で精霊や妖精のティールームを経営しはじめた。

物々交換で錬金の素材が集まりやすくなった。家事精霊リリーが服飾に目覚めグレイや私の服をつくってくれた。


 リア師匠が引っ越して2か月にならないのにいろいろあったと書き綴った。リリーの作った師匠用のひざ掛けや作業エプロン、ワンピースを一緒に送る。魔法袋がパンパンになっているだろう。

誤字報告ありがとうございます。

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リア師匠は錬金部屋の地下室を知らないのに手紙に書くのは違和感しか…
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