5 家出は準備が大切! 3 薬師のお婆の思い
春前に家を出ると決めてから、毎日朝早くからおばあちゃんの家に向かった。お婆の手伝いをして1鉄貨稼ぐ。それを母に手渡す。
これだけで、母には何も言われない。夜遅い帰宅も気にかけない。
働き者の次男のケン兄が、婿に出ることが決まった。長男の結婚と重なってちびにかまっている暇はない。だからわずかな現金収入は嬉しいようだ。
お婆はライが可愛かった。長い旅をしながら村々を回り薬を売る。珍しい薬草があればどこへでも行く師匠との二人旅。
それはそれで楽しかったけれど、師匠が亡くなった時に初めて孤独を知った。
いくつもの村を経てこの辺境の村に定住した。薬師がいなくて森の恩恵が豊かだ。家賃は薬を融通することで無料になった。行商人も薬を買いに来るので稼ぐことも出来る。
残りの人生を穏やかに暮らせると思った。
ライは、小さい時から聡い子供だった。
余り泣きもせず、ぐずることもない。お婆のすることを珍しそうに眺めていた。そのうち、お婆の後をついて歩くようになる。
裏の畑に来てお婆と一緒に草取りを始めた。薬草の名前を教えればすぐに覚えるし、収穫方法を教えれば、次からは収穫をしてくるようになった。
畑の隅の毒草にかぶれたり、畑の虫を捕まえてくることもあった。
独り暮らしの静かな生活を淋しいと思ったことはなかった。けれどちびが加わって師匠と旅した頃を思い出した。しばらくぶりの人のぬくもりだった。
ライは喜怒哀楽が少ないけれど、わずかに動く表情が愛しいと思えるようになるのに時間はかからなかった。
春に売られると言ってきたときの戸惑いと困惑の微かな表情は初めて見るものだった。
捨て子だからと親に金のために売られる。先が短くてずっとライを守ってやることが出来ないお婆にできることは、この村から出してやることだけ。
なら、村から売られる前に出してやる。
ライが人生に立ち向かうなら、お婆の持てる知識をすべて伝えたい。
ライは朝早くから夜遅くまで、今までの仕事以外に色々な事を覚えていった。5歳であることを忘れるくらい大人びた様子を見せた。
物覚えは以前から良かったけれど、家を出て街で暮らすという目的ができたライは、さらに勢いを増して何でもかんでも吸収していった。
ライは元々こんな田舎で終わる子供ではなかったんだろう。
ライは魔力持ちだった。試してみればあっさりと生活魔法を使いこなした。さらに、魔法も習得した。魔力操作ができれば、生活は格段に便利になる。
使い方を間違えないように、注意しなければならない。
今は魔法が使えて喜んでいるが、悪用されたり、便利な奴隷として売られることもある。持てる知識や技術を、どう役立てるかはライ自身だ。
幼い身にかかる負担が多いだろう。お婆は側に居てあげれない。守れる力を与えるしかできない。
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