46 リア師匠との別れ
ライが忙しく錬金薬の修行と薬草採取の仕事に明け暮れている。
家の中はリリーが掃除洗濯防犯を担ってくれる。前の大きなお屋敷と違い小さな家なので鼻歌交じりに仕事してもあっという間に仕事が終わってしまう。最近はライの錬金の修行を眺めている。
食事はライの作る不思議な料理がおいしいからリリーはお手伝いと片付けを担当する。土の精霊モスはグレイの迎えに友達のスライムを連れてやって来てた。スライムは半精霊だった。モスと同じで契約して名前を付けた。スライムのスラ。モスと一緒に暮らすことになった。
スラはごみを溶かして肥料を生み出すらしい。またこれが高級肥料。
どのスライムでもできるわけでない。モスとスラは森の中で出会った。
スラがほかのスライムに飲み込まれるところをモスに助けられたことが縁。精霊の泉の周りを整えるのにスラは協力した。
今回スラが街の中に来るのはモスに頼まれたらしい。スラも一人(匹?)で森に残されるのは不安だった。今では最高の相棒になっている。
モスは自分の自由になる庭や畑に夢中だ。家事精霊のリリーと育てる野菜を相談している。
赤い屋根の可愛い家は煉瓦で玄関に通じる小道を作りその周りに可愛い小花が地植えされている。小花の奥には少し背の高いバラの花を植えその奥に低木の花の咲く木々を植えていた。
作業部屋の横には小さな東屋が出来ていた。これはグレイの希望らしい。家の裏には畑と果樹園、そこに醬油の実と蜜の実、味噌の実にあわあわの実などをグレイとモスで育てている。
美味しい食事のためだから真剣らしい。
グレイは猫のふりしたり消えていることが多かったがこの家で自由に出来る事がとても嬉しそうだ。東屋で街猫の集会も行われている。夜には街の精霊がお茶をしに来ているらしいのでお菓子はいつも多めに作って置いておく。あまりの庭の変わりようにリア師匠は
「やっぱりライちゃんには素敵な仲間がいるのね。精霊は今私の側に居るかしら?子供の頃は精霊を探し回ったわ。
精霊を見つけることが出来なくって泣いてみんなを困らせたこともあった。もちろんアリも一緒に泣いたの。この年でこんな経験ができるなんて幸せだわ」
リア師匠は錬金薬以外に錬金窯を使った料理を夫から学んでいた。息子の所に行っても工房をもって仕事を続ける。夫の残してくれたレシピを大切に受け継ぎたいと考えていた。
もし孫の中に錬金に興味を持ってくれたらと考えてしまう。アリの薬師のレシピの中には生活に根ざしたものが多くとても勉強になった。アリの物を見たり触ることで過ぎし日を思い出していた。
薬師のお婆から教わった髪専用の石鹼液は錬金窯で作ると艶がさらに良くなりしっとりする。ライとリア師匠はお互いの知識を出し合って新しいレシピを増やしていった。
ライが錬金術の修行を開始して1年が経とうとしていた。
「ライちゃん。そろそろ息子の所にいくことにするわ。向こうでも小さな工房を離れの家の横に建ててくれたの。
今取引している商会の支店も近所にあるから仕事には困らない。まだ体が動けるうちに向こうに慣れないとね。
ここを離れるのは寂しいけどこの家は私の手に余る。だってこの家維持するのに結構魔力いるのよ。夫ありきの家なのね。
今なら分かるわ。この家を知らない人には譲れない。壊すにもいろいろ手配が必要。夫は後先考えず作ったようだけど私には宝の持ち腐れだった。
ライちゃんこの家買わない? 金貨5枚でどうかしら。その代わりアリの残してくれた髪飾りを私に譲ってくれない?」
「もともと薬師のお婆のものだから・・・・・」
リア師匠は旦那様の魔法カバンに大切な錬金窯や思い出の家具などとともに薬師のお婆の薬草棚を持って出会った頃より溌剌とした姿で新しい土地へ移っていった。
冬が終わり春が来て庭に色とりどりの小花が咲いたころライは赤い屋根の可愛い家の主になった。
誤字脱字報告ありがとうございます。




