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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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44 錬金師匠と弟子

  リアおばあさんは、火傷後の傷を治す錬金薬を作るのに体力も魔力も使い切った。少女の回復を確認した後数日寝込んだ。


 少女の顔にできた火傷の痕はまだ引き攣れはあるものの驚くほどきれいになった。あとは毎日塗り続ければほぼわからなくなるそうだ。そのためにも成長期の少女は毎日暖かい布で顔を覆い優しく揉み解し薬を塗るように説明した。


 火傷を負った少女は笑うこともなく食事でさえ皮膚の痛みを感じて少食になり家に閉じこもっていた。働き者だった少女は家族の負担にならぬようにと気を使っているのがまるわかりだった。

少しずつ心と体の回復をしていかねばならない。人は薬だけでは回復しないと思えた瞬間だった。


「リアおばあさん。私に錬金の技術を教えてください。薬師の作る薬と錬金術で作る薬の住み分けがあることは分かった。

多少多い魔力を使って薬師ではできない錬金薬を作ってみたい」


「そうだね。私が教えることは基礎ぐらいだろうけど頑張って見るかい?」

ライは目をキラキラさせて私の顔を見て深く頭を下げた。



 来年には孫が生まれる。それにあわせてこの家をリアは、売ろうと思っていた。体力も気力も落ちた自分に嫌気がさしていた。

最後だと思ったヒヤリン草の軟膏は夫と最後に作った錬金薬だった。


 姉の育てたあの子が私の心に張りを与えてくれている。これが縁というものだろう。夫の所に行く前に弟子を育て孫を育て最後までライと姉に誇れる自分でいたい。



 リアおばあさんが元気になった。台所横のご主人が主に使っていた錬金部屋を見せてくれた。左右の壁に素材棚と錬金薬の保管棚があり、窓側に水回りとやや大きめの錬金窯が二つ並んでいた。中央には脚に車がついた移動式の大きなテーブルが置いてあった。


「この部屋は魔力の多かった夫がいろいろなものを作っていたの。二つある錬金窯は食用とそれ以外のものに分けて使っていた。

夫はね食べることが大好きでふかふかのパンやお菓子、調味料など作っていた。ポーションも飲み物だと言ってた。


私は魔力が少ないので作れなかったけど依頼で滋養強壮剤や頭皮の薬に若返りの軟膏なんかも作っていたようだ。

 特殊な材料が必要で自分や仲間と採取にも出かけていた。ただ依頼主がほとんど貴族だったので秘密保持の契約で記録は残してないの。


夫が亡くなったと同時に契約が終わり問い合わせさえなかった。でもね、ここは私たち夫婦の仕事部屋だから掃除と保管保持の魔力だけはかけ続けたの」


 だからリアおばあさんはほかのことに魔力を使わなかったのだ。

ご主人が少しでも便利にと備え付けた魔道具に魔力を使うよりこの部屋を守りたかった。

薬師のお婆が大切にしていた髪飾り。人は自分自身以上に大切にしたい人や物があるのだと知った。

ライは子供だ。

生きていくことだけに精一杯で誰かを守りたい、大切にしたい、この身に代えてもと思ったことはなかった。いつかそんな人になれるだろうか。


 錬金部屋のすべての登録にライを追加して部屋自体をライが使えるようにした。几帳面な文字で書かれた素材棚には多くの素材が残されていた。

錬金棚の中身はさすがに劣化が多少みられる薬が数個残されている。ほとんどが受注生産のようだった。


移動式のテーブルの引き出しには几帳面な文字で依頼表や注文表など必要な書類と文具が収められていた。


「あれ・・・あの棚の下に小さな扉があります」

「どこに?気が付かなかった。私の魔力はこの部屋の維持だけ。でそれ以上に部屋全体に魔力をかけたことがなかったせいかしら。

ライ、扉に魔力を追加してみて きっと開くと思う」


そこには数冊の閉じられた紙束と緑と赤の箱が入っていた。すべてをテーブルに取り出す。リアおばあさんが紙束を手に取り数枚めくる。


「これ、錬金薬のレシピだわ。夫は依頼内容によっては、錬金ギルドにレシピを公開していなかった。師匠から弟子にレシピを譲ることが多い世界だから、結構秘密のレシピが多いのよ。

レシピ一つで金貨の雨が降るといわれているわ。ただ素材が希少で、魔力がいるし、熟練した腕が必要なものばかり。私では無理だわね。

緑の箱の中は?あらら、こんなところにお金が?それにこれは手紙?」


リアおばあさんは手紙を読み始めた。

ライは素材棚を眺めていた。嗚咽が聞こえてきた。振り返るとリアおばあさんが赤い箱のふたを開けていた。

白色なのに見方によっては虹色に光る小粒の球がいくつも連なった首飾りと一回り大きな耳飾りのセットだった。


「これはね。人魚の涙といわれる守り宝石なの。昔読んだお伽話の話を夫としたことがあってね。いつか人魚の涙を見てみたいと言ったの。

その時は二人で大笑いしたの。旅から帰ったら渡そうと思っていたみたい。

私のことが心配で仕方なかったのね。


このお金があればもう少し息子の結婚式に箔が付いたのに残念だわ。でも孫のために役立つわね。

ねえ、ライはこの街に住む気はあるかしら。できることなら夫の残したこの家をライに残したいの。姉はライに生きるすべを伝えた。


私はライのおかげで生きる張り合いをもらえたから、家とこのレシピをライに残したい。ライが作れないものや危険なレシピは燃やしてちょうだい。でもライが生かせるものは活用してほしいの。


夫の隠し事はまだあるかもしれない。この家をほかの誰かに使われると心配なの。私は夫が残してくれた二つの箱があれば十分。孫のいいおばあちゃんになれるわ。

向こうでも簡単な錬金薬は作るつもり。さあこれから忙しくなるわよ」

次回の投稿は再来週になります

誤字脱字報告感謝します

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