38 リアお婆さんと精霊
ライが冒険者ギルドを出てリアおばあちゃんの家に同居することになった。
家事はライが担当している。空いた時間に錬金術を学ぶ。リアおばあちゃんは今でも錬金薬を作って生活している。
ライはリアおばあちゃんから依頼された錬金素材を採取してついでに冒険者ギルドの依頼も受ける。
ライは一人でもいつもグレイが居てくれたので寂しいと思ったことはなかった。でも朝起きたら温かなお茶を入れてくれて「おはよう」と声を掛けてくれる生活はとても温かいものだと感じた。
夕飯を食べそれぞれが部屋に戻った。2階から見える星はとても綺麗だ。ライの横を風が吹き抜けた。肩にはグレイがいる。グレイが申し訳なさそうな顔をする。もしかして精霊?
「あのな、この間の古い屋敷見に行っただろ。そこに家事精霊が住んでいたんだ。もう何十年も住んでいない誰もいない屋敷は寂しいって泣くからここの家事をやってもらえばいいかな~~と思って声かけたらついてくることになった」
目の前に紺のワンピースに白いエプロン、茶色の髪をお団子にしてホワイトプリムを付けている女の子が浮いていた。礼儀正しく両手を前でそろえてお辞儀をしている。
「来ちゃったんだもの仕方ないよね。この子あの屋敷がギラギラになってとても辛かったんだって。
ライも可哀そうだと思うよね」
こんなにお願いされたら断れない。こんなに可愛いのに家の防犯は完璧になるらしい。
あのギラギラの屋敷を保っていたのはこの子のおかげらしい。彼女がいなくなると経年劣化が進む。商業ギルドは知らないだろうな。
「初めましてライといいます。お屋敷ほど広くないけど一緒に暮らしますか?お名前はリリーちゃんでいいかな?」
目の前の家事精霊リリーはライの頬に口付けをして部屋の中を飛び回った。
リア師匠にどう伝えようかと悩んでいたら普通の人は精霊が見えないから問題ないと言い出した。
「ライ、俺が妖精だって気が付いた奴いないだろう」
精霊も同じことか?悩むのは諦めた。
リリーにはリア師匠を驚かさないでとお願いした。任せてくださいと自信満々だ。リリーは甘いものが大好きらしい。お菓子で餌付け。グレイと一緒。掃除や洗濯などの家事全般家の管理、防犯は任せてほしいと胸を張っている。
「ライどうしよう!」
グレイが口の周りにビスケットの粉をつけて起き掛けのライの所に飛んできた。
その周りを両手にビスケットを掴んだリリーが飛び回っている。慌てているようだが思わず吹き出してしまった。
「リリーと台所で朝、昨夜の残りのビスケット食べていた。そしたらリアばあちゃんの部屋のドアが急に開いた。リアおばあちゃんが目を丸くして俺たち見た。追いだされるかな?ライどうしよう」
珍しく焦るグレイ。何もわからずビスケットを頬張るリリー。
「見つかったら仕方ないよね。グレイは猫だからいいけどリリーはね、誤魔化せないよね。宙に浮いたビスケットが消えるなんて驚くよね。正直に話してみる。だめなら宿に戻るだけだよ。心配しないで」
ライは意を決して台所に向かった。
「ライちゃん、グレイちゃん、それにビスケット好きの妖精さんかしら? おはよう。美味しいお茶を用意しましたよ」
いつもと変わりなくというよりキラキラした目でグレイを見てる。
「おはようございます。もっと早く言うべきでした」
「ライちゃん グレイちゃんはもしかして妖精猫かしら・・・ああ素敵!本当に会えるなんて」
リア師匠が乙女のように目をキラキラさせている。
「リア師匠。落ち着いて。グレイは私が村から逃げ出した時に出会った妖精猫です。そしてこの子が家事精霊のリリーです。ご迷惑ならここを出ていきます」
「どうしてそんなこと言うの?私は嬉しいのよ。妖精猫や精霊は子供話だと言われていたわ。
でもね子供の頃一回だけ庭の花にお休みしている小さな精霊を見たことがあったの。お母さまやお父さまに話しても誰も信じてくれなかったわ。
双子のアリだけは信じてくれたの。それからは二人でよく庭の花を見に行ったわ。
わたしは嬉しいの。最近部屋の中が綺麗になっていたのはリリーちゃんのおかげかしら?
お洗濯ものが奇麗になったのも?部屋の花が長持ちするのも?姿を見せてくれるかしら」
グレイの肩の上に食べかけのビスケットが2個浮いている。
「リリー姿現し出来る?」
リリーはビスケット持ったままにこやかにリアおばあちゃんの前に姿を現した。
「あらあら。なんて可愛いの。いつもライちゃんを手伝ってくれてありがとう。これからもよろしくね。
出来れば私の前でもその可愛い姿を見せてね」
「このままここに居て・・・」
「いいに決まっているじゃない。内緒にするわ。
秘密!秘密!妖精の住む家は幸せだというわ。最高よ」
グレイとリリーはリア師匠に大歓迎された。
グレイとリリーはリア師匠の話し相手になった。
誤字脱字報告ありがとうございます。




