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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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36 錬金術師のおばあさんと出会う

 ライはセリーヌが街中の仕事を一人で出来るようになるとまた一人で薬草採取をして薬草を納品し残りで調剤をして過ごすようになった。


 薬師からの指名依頼の薬草採取は後を絶たない。無理して魔物を狩らなくても生活ができるのはありがたい。ただ工房を持つのには時間がかかりそうだ。


 ウエートに慣れた頃ギルドで聞いてロッキング伯爵邸に行ってみた。行ったというより遠くから眺めた。先ずは貴族街を歩くとあまりに場違いなライ。

さらにずっと遠くに見えるお屋敷の前の塀の入口に立派な兵士がいた。

とてもじゃないけど声を掛けられなかった。


 今はとてもお婆の手紙を届けられないと帰ってきた。グレイが忍び込んで届けようかといったがお婆も無理はしなくていいと言ったので今回は諦めた。


「ライちゃん、ギルド宿の裏の通りの西にリアさんというおばあさんの家があるんだけど庭の草取りをしてほしいの」

いつもの受付のお姉さんから声を掛けられた。


「いいですけど指名ですか」

「ううん。そうじゃないけど。10年位前にご主人を失くして今は一人住まいなんだ。

以前は冒険者ギルドにも薬を卸してくれていたんだけど一人では手が回らないみたいで最近は顔を見ることもなかったの。

それが庭の草取りの依頼だからライちゃんならリアお婆ちゃんの助けになると思ったの」

「わかりました。今から行ってきます。明日は雨になりそうだから」


 ギルドの裏通りに出て西に向かうと小奇麗な住宅街に出た。道に面して小さな庭と石造りの家が並んでいる。屋根の色が色とりどりでかわいらしい。庭には花壇が作られ見るのも楽しい。


「ねえグレイ、こんなお家がいいね。玄関先には花壇があって空いてるところに畑を作って野菜や薬草を植えるの。家の中の一部屋を工房にして薬を作る。天気が良ければ森に出かけて薬草採取や果物を取ってくる。

料理も自分で出来るしグレイの好きな菓子も作れる。最高だね」


「俺が魔物狩ってこようか」


「だめ、グレイが魔物を狩っても納品するのは私だよ。無理があるね。珍しい果物を市場で買ってもらう方がいいんじゃない。それにまだ15歳になっていないし家買えるほどお金ないよ・・・もしかしたら商業ギルドのお金溜まってるかも。今度確認してみないと」


「ライ、この家じゃないか。庭が随分荒れているな」

「老人の一人暮らしだから手が回らないかも」

依頼票を手に持ち青い屋根の家のドアをノックすると中から顔色の悪い小柄な老人が出てきた。


「ありがとうね。出来る範囲でいいから道路前からきれいにしてもらえると助かるわ。うちの庭だけ目立ってしまって困っていたの」

「分かりました。すぐにやらせていただきます」


 さっそく生活魔法で固まった土を掘り起こしながら草をむしる。グレイは散歩に出かけてしまった。草が無くなれば石畳や花壇が現れた。道路面が終われば家の横に向かう。


「あれ?これヨモ草?」

雑草の間から薬草がちらほら見つかった。おばあさんは薬師だったから畑に薬草植えていたんだ。

手入れしていないからひょろひょろの薬草だったが畑は日当たりも良く結構広いのでたくさん収穫できた。


 井戸が家と畑の間にあり勝手口から出入りできるようになっていた。ここは畑として少し土を掘り起こして先ほど根ごと掘り起こしたヨモ草を植えて残った家の周りの草を取って完了。


「ライ、ここは錬金術師の家だって」

「錬金術師でも薬草畑を作るんだね。しばらく手入れしていないけどここは薬草畑みたい。井戸も近いし薬師のお婆の家みたいだ。なんか懐かしいかも」

お婆の家を思い出した。


「これくらいの家と畑があるといいかも」

「そろそろ真剣に住む所探さないと。商業ギルドだったよね。この街では初めてだね」

「しっかり顔を売って良い所探さないと」


 庭の草取りを終えたことを確認してもらうために玄関のドアをノックすると先ほどのおばあさんが顔を出してすぐに依頼表にサインをしてくれた。


「ありがとうね。大変だったのに早かったわね、ゴホン・・・ゴホン」

「大丈夫ですか。食事は‥‥薬は・・・」

目の前でお婆さんは力尽きたように座り込んでしまった。


 慌てて助け起こし家の中のソファーに寝かせてすぐ側にあるブランケットを掛けた。熱がある。

「熱があります。薬は飲んでいますか?食事は?」

「薬は飲んでいる・・・・・」

「何か作ってもいいですか」

頷く様子が見えたのでグレイに後を頼み台所に向かった。


 きれいに片付いてはいるがしばらく使われた様子がない。棚に乗っている鍋を軽く洗って手持ちのお米と野菜とスープの素を使ってまずはお粥とスープを作ることにした。

 人気のない家に暖かな優しい匂いが広がっていく。手持ちの保温瓶に体の温まる薬草茶をたっぷり作って置いた。


「ライ、おばあさん目覚めたよ」

「ありがとう。食事取れるかな?」

と言いつつしばらく何も食べていないようなのでお粥とスープを少し器に盛り薬草茶を持ってリビングに向かった。


「手持ちの物で作ってみました。お米で出来ていますが食べられますか」

「ありがとうね。お米は初めてだけどとても美味しい香りがするわ」

少しずつ食べ始める。のど越しが良いのか器の中のお粥を食べきった。


「初めて食べたけど胃にも優しくて体も温まって美味しかったわ。料理が上手なのね」

「今はギルドの宿で自炊しています。少し多めにお粥とスープは作ってあります。今日明日中に食べてください。

この保温瓶に薬草茶を入れてあります。胃に優しく体を温める効能があります。熱があるので水分はしっかりとって下さい。

何か買ってきてほしい物はないですか?」


「ありがとうね。しばらく買い物もしてないので何もないの。良かったらパンとスープになる野菜をお願いしてもいいかしら。薬は作り置きがあるけど食べ物は何もなくって」


「わかりました明日昼前に伺います。お大事にしてください」

ライとグレイはギルドに向かって歩き出した。


「ライ、おばあさんに優しいじゃないか」

「なんか薬師のお婆に似ているからかな。なんかほうっておけないんだ」

「まあ 好きにするといいよ。

それより家探しだよ。ギルドの宿を追いだされる前に探さないと。

今更宿に戻るのは嫌だよ。気楽にライと過ごせないから」

良くしゃべるグレイ。


「うふふ・・違うでしょ。大好きなプリンが食べられないからでしょ」

「そ・・そんなことない」

「明日はおばあさんにプリン作っていこうかな?」

「プリンは最高だよ。早く帰って沢山作ろう」

肩から降りたグレイは冒険者ギルドに走っていった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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