表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
31/176

31 ライの誘拐計画

 グレイは翌日からライの忠告を聞かず単独行動を増やした。

ライといるより動きやすい。情報を集めるにはグレイ自身を囮にするのが手っ取り早い。グレイ単独なら転移が出来るので捕まらない自信があった。


 人目に付くように塀の上を歩いたり屋根の上で昼寝をする。そしたらあからさまに魚を餌に猫を集めて見たり、網を持ってグレイを追いかけたりする誘拐犯が増えた。グレイはそんな輩と楽しく遊んですごした。


 街猫から誘拐犯を雇っているのは食料品を多く扱うアキンド商会の主人。

愛娘が街でライの肩の上でライとニコニコ笑うグレイを見て欲しがった。愛娘のおねだりに金さえ払えば手に入ると思ったところが思いのほか手こずる。

従魔でないなら野良猫。なら捕まえてしまえばいいと人手を増やした。


 街中で猫を追い掛け回す姿は目につきグレイやほかの街猫にいいように振り回され物笑いの種になっていった。


「猫一匹に何日かかるんだ」

愛娘の癇癪でイライラしたアキンド商会の主人。猫一匹捕まえられない輩に怒鳴り声が出る。


「手ごわいんです。捕まりそうですぐに逃げ去るんです。必ず小僧のとこには帰るようですから、小僧を囮にしてはどうですか」


「なんでもいい。ともかく猫を連れてこい」


街猫からグレイに情報が入った。

グレイはライに危害が加えられてはたまらない。ライにしばらくギルドの仕事を休むように伝えた。

いつまでもグレイが追われるのを良しとしないライは自分が囮になって誘拐犯を捕まえる案を出した。

そんなことをしてライが怪我をしては困る。


 猫の誘拐なんて訴えたとこで取り合ってはもらえない。相手はアキンド商会それなりにこの街では有名な商会だ。野良猫駆除だと言われてしまえばライの言い分は通らない。だからといって何日も止まり木亭に隠れているわけにいかない。


「親分、猫なんてどれも同じじゃないですか。似た猫なら簡単に捕まえられるからそれでどうにかなりませんか」

「お前の言い分は分かるがお嬢様が街であの猫を見たら騙されたと言っておいらの首が飛ぶんだよ」

「えっ、親分の首が猫一匹で飛ぶんですか」

「ああ 旦那さんは亡くなった先妻のお嬢さんをそれはそれは大切にしているんだ。

忘れ形見というから仕方ないが甘やかしが尋常じゃないんだ。

小さい頃はあの花が欲しい。髪飾りが欲しい。お菓子が欲しいぐらいだった。それが大きくなるにつれてドレスが宝石が自分の屋敷が欲しいなどスケールが大きくなっていった。


それでもお金で解決出来る事だったから旦那さんは愛娘の願いをかなえてあげていた。

商売の関係もあって後妻を迎え入れた。お嬢様は父親を取られたと思ったのか我儘がさらに激しくなった。


 侍女のすげ替えなんて日常茶飯事。誰も苦言なんか言えやしない。

この間なんて妹が欲しいと見目の良い赤子を探して来いと言われて孤児院の子供を買い取ったらしい。

夜中に泣いて煩いから捨ててこいと言ったそうだ。


その次は弟が欲しいと言った。猫や犬なんて何度も欲しがり与えれば泣く声が煩い。毛並みが気に入らない。近寄ってこないなど言い出してすぐに飽きてしまう。


ひどい時は棒で殴ったりする。犬猫だけじゃない。側付きの侍女や小間使いなどあちこち痣がある。

 旦那様は愛娘にいずれは婿を取って店を任せたいらしい。でも娘はまっるっきり商売に興味がない」


「でもアキンド商会なら婿になりたい者はいくらでもいるんじゃないですか」


「まあな、たとえ多少我儘や器量が悪くてもいくらでもいると思う。

うちのお嬢様は理想が高い。結婚ならどこそこの高位貴族の見目麗しい男性じゃないと納得しないんだよ。


 金持ちでも下級貧乏貴族の子息ぐらいが関の山だ。だからお嬢様の結婚話が進まない。あっという間に20歳になってしまい旦那様は慌てている。

当の本人はお構いなしさ。それに、お前はお嬢様を見たことあるか?」


「見たことないさ。俺なんてお出かけの付き添いなんて回ってこない。でも大店のお嬢様ならきれいなんでしょうね」


「幸せだなお前は。うちの馬車がなんで丈夫なのか知っているか。お嬢様のお付きの侍女はみんな痩せこけている。その分お嬢様はとてもふくよかなんだ。美味しいもの、特に甘いものが大好きなんだよ。食事代わりにお菓子を食べるくらいに」


「あっ俺見たことあった。すげえ太ってた。でも顔が真っ白」


「お嬢様の顔には吹き出物が多数できている。医者に見せても高い薬使っても良くならない。化粧でごまかすために厚塗りしている」


「痩せればいいんじゃないですか」


「馬鹿、そんなこと言った医者は半殺しにあった。余計な口は開くな。それより俺たちの首が飛ぶ前に猫をどうにかしないと。


 あの小僧を囮にすれば猫が捕まるんじゃないかな。いつまでも隠れてはいられないだろうから出てきたところを捕まえて、猫が寄ってくるのを待つしかない。小僧はそのあと売ってしまえばいい。孤児などたいした騒ぎにはならない」


 綿密な(?)計画を立てたお粗末な手下だった。すべて隠れている街猫に情報が洩れていることは知らない。

誤字脱字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ