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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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3 家出には準備が大切! 1  勢いだけでは生きていけない 

 お婆は思い出すように眉間にしわを寄せた。

「ライ、ここにお座り。少し昔話をしよう。4年前の夜に養父さんが、綺麗なおくるみに包まれてた幼子のライが木の根本で泣いているのを見つけて、お婆のとこに連れて来たんだ。

熱があったし、幼子だからそのままお婆がしばらく見ることにしたんだ。


 ライは、牛の乳を飲ませるとごくごく飲んですぐに熱が下がった。

その後泣きもせず、育てやすい子供だった。

 ライのおくるみの中に、ライの名前が書かれた手紙が入った小袋が添えられていた。

綺麗なおくるみを見て養父さんが、ライは良いとこの子供と思った。

ライの養い親は村長と相談して、一時的に子供を預かることにした。

もちろん他の村人には教えず。


 迎えに来た時の礼金を期待したのだろう。

この村が貧しいのは分かっているだろう。子供とはいえ一人分余計に育てるのは、大変なことなんだ。

ライの養い親は、ライを殴ったり怒鳴ったりはしなかった。それなりに気にかけていたんだ。


 毎日食べるだけで精いっぱいだったから、ライに手を掛けることは少なかった。毎日お婆のとこに来るのが、当たり前だったからな」

お婆は、改めてライの目を見つめる。


「それでもライが売られる理由にはならない。ライを預かるにあたって、

見返りを期待した」

お婆のいつもと違うきつい口調に驚いた。

難しいことは分からないけど、ライは春前に村を出ると決めた。


「養い親にはありがたいと思うけど、売られるのは嫌だ。

お婆と離れるのは嫌だけど、ここに居られないなら村を出たい!」


 この村から街に出るにはいくつもの小さい村を過ぎて、何もない草原を超えていかないとならないらしい。

勢いだけで外に出ても 魔物に食われるか、行き倒れになるしかない。

ただ村を出るといってもそんなに簡単なことではないらしい。

暗闇の中に一人放り出される怖さと不安に身震いがした。


「そう焦るな。お婆が手伝ってやる。お婆はライが赤子の頃から側に居たんだ。

もう孫のようなものだ。可愛いライが困らないように一緒に準備しよう。


 春前に薬の商会の馬車が来るから、それに乗せてもらって村を出よう。

親しい良い人だから街までは連れて行ってくれる。あとは孤児院に入って、7歳の祝福を受けて、仕事を見つけなさい。


 5歳では仕事にありつくことが出来ないけど、孤児院なら今と変わりない生活ができるだろう。

今の領主は出来た人だ。心配しないでいい。

売られて娼館や奴隷になるよりはずっといい」


 お婆は苦々しい顔と声から一変して優しい声で話す。 

「今までの様に暢気に過ごしていたんでは間に合わない。家出の準備をしないとね」


 それからお婆ちゃんは、街で必要な知識を身に着けるようにとライに朝から晩まで教え込んだ。

字の読み書きと計算、お金の知識、針仕事、炊事洗濯、独り暮らしの訓練もした。


 ウサギや野ネズミなどの狩り方や解体の仕方、森で食べられる植物やキノコ、木の実の知識。実際に裏山で狩りをした。下処理の出来ていない兎の料理は生臭くまずかったけど、

血抜きして塩や薬草を使ったものはとても美味しかった。


 傷薬や腹痛、頭痛薬、初級の回復薬の作り方を学んだ。お婆が必要と思うものは必死に覚えた。


 ライは外の世界を知らない。

 外の世界を知っているお婆の言うことが全てだった。夜には木の棒を使ってお婆が護身術と呼ぶものも習った。女の子には必要らしい。

誤字脱字報告ありがとうございます

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