25 ヨロンの街を旅立つ
ライは8歳になった。
体も大きくなり年齢相応に成長していると言いたいが残念なことに同年代に比べればまだ小さい。
冒険者ギルドのランクはDになった。
薬草採取メインのライだが最近は小物魔物を狩ることもできている。
ランクアップはグレイのおかげであるので少し申し訳ない。
グレイの魔法の特訓のおかげで多少の攻撃魔法が出来るようになった。鑑定のスキルの発現が近いのか薬草採取が効率的になり、調剤や料理の助けになっている。
少しずつ容量を増やした収納魔法。荷馬車1台分収納できるようになった。使えば使うほど収納力が上がるらしい。
ライの魂が安定したことで年齢相応の子供らしさも現れた。ライは気づいていないが以前より精神が安定している。自分以外の違和感がなくなった。
そして魔力量が増えた。自分を鍛えて生きていく道を考えるようになった。
ケントは剣術のスキルを祝福で得た。
冒険者ギルドの剣術研修を真面目に受けている。読み書き計算も真面目に勉強して街の自警団に入って街を守る目標ができた。
最初に孤児院を訪問したときの悪ガキ問題児がここまで変わるかとシスターが驚いていた。孤児仲間とパーティーを組み森の入り口近くの魔物狩りもリーダーとして頑張っている。
ライも誘われたがソロでやりたいとパーティーには入らなかった。ケントはライに無理強いはしなかった。薬草採取はライに声を掛けて一緒に森に向かうこともある。ケントは自分の過去の失敗を年下の孤児にさせないために色々教えているようだ。
ボブさんがついに結婚することになった。
これがきっかけではないがライはグレイとボブさんと話し合い街を出て女の子として生きていく事を考えた。
ライは薬師になりたいと思っている。
薬師のお婆に託された事を活かしていきたい。それにこれ以上歳を重ねると男でいるのも難しい。
ボブさんが領都に買い付けと納品に行くのに一緒について行くことにした。一人で乗合馬車は心配だとボブお父さんの過保護に乗ることにした。領都にボブさんの知り合いがいて宿屋をやっている。
住み込みで働くなら安心だと言ってくれた。
村からヨロンの街での生活を支えてくれたボブさんには感謝しかない。ボブさんはライを一人領都に行かすことを心配している。グレイもいる。大丈夫だと伝えた。
やっと巡り合えたお嫁さんを逃がしたら困るから、薬師になって金持ちになると宣言しておいた。
ケントにも孤児院の子供達にも街に出ていくことを伝えた。
冒険者が街を移ることは珍しくはない。冒険者ギルドにも挨拶をして街でお世話になった人にも少年頑張れと声を掛けられた。
ヨロンの街には小さなライが健気に頑張る姿に応援してくれていた人は少なくなかった。
ボブさんの家の中を綺麗に片付けた。台所の物はすべて収納した。お嫁さんも誰かが使っていた物は嫌だろうしボブさんには新規に買うだけの財力はある。もともと何もなかったんだから以前に戻るだけだ。
ライの買い足していった食器や調理器具も持っていく。私室のベッドや机、シーツやタオルなどの日用品も収納する。もともとここは空き部屋でほとんど何もなかった。カーテンはさすがに外から丸見えになるのでクリーンを掛けて置いていこう。
「ライ、なんかもぬけの殻だな。今からでもここに残らないか。部屋は余っているんだから」
「ボブさん何度言えばわかる?せっかくお嫁さんが来てくれる奇蹟を得たんだからそっちを優先して。それに結婚前から女の子と同居してたなんて・・」
「ななな・・に言ってんだよ」
慌てるボブさん。思わずライは笑ってしまった。
「世間は噂好き。俺だっていつまでも男の子でいられないから丁度いいんだ。いくらお婆の頼みでも本来は街に着いたら孤児院に行くつもりだったんだ。
俺をグレイと共に助けてくれたボブさんに感謝しているんだ。これからはボブさんの幸せを第一に本当の自分の子供を可愛がってください」
泣きそうな顔のボブさんを説得して荷馬車に乗り込んだ。
ライはボブの荷馬車に乗り領都を訪れた。
いくつもの街を通過し5日目に領都の東の街イートンに着いた。旅の間中ボブさんは無理せずヨロンで一緒に暮らそうと話しかけてきた。ボブさんに何回も話をしたがライがライらしく生きるにはヨロンは狭いのだ。
村から逃れて男の子として生きることで不安や恐れを乗り越えた。ライは体が少しずつ成長し魔力が増え使える魔法が増えている。収納魔法も使えるようになった。
ヨロンの街で積極的に男の子だとは言わなかったが髪は短く服装は男の子のまま、体は小さかったので女の子とは思われなかった。
今更冒険者ギルドや商業ギルドで女の子ですと修正するのは面倒だしその訳を話す気もない。薬師の勉強もヨロンでは難しい。
グダグダ言い募るボブさんを説得し続けた。
誤字脱字報告ありがとうございます。




