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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
22/176

22 ライ7歳の祝福の儀を受ける  

後半女神視点になります。

 街の東の大きな東教会が祝福の儀式を行う。

昼前は寄付の多い貴族や富裕層が主に受ける。良いスキルを得られると寄付の上乗せがあるらしい。

付き添いの親や使用人もつれているので一人ひとりに時間がかかる。必要ならスキルの説明もしている。


 午後は庶民の子供が儀式を受ける。落ち着きのない子供たちが、期待と不安を持って並ぶ。一応庶民は2銅貨を納めることになっている。

納められない者は教会や街の仕事をして支払う。魔力の少ない庶民では魔法は使えないのが定説だ。だから魔力量は測らないらしい。


 魔力は貴族の特権と言われているから無駄な仕事はしない。子供たちがスキルを得て仕事につけることが国を豊かにするという。ライだって期待している。だって自分の能力がわかるんだから。


 そんなこと考えているうちにライの順番が来た。お疲れ気味の若い司祭に連れられ小さい祭壇のある個室に入った。

「祭壇前に傅いて無事に7歳を迎えたことを感謝して祈りなさい」

ライは膝を折り両掌を合わせ祭壇の女神像に祈りをささげた。


 ふと体が揺れた気がして目を開けると先ほどの部屋でなく白い部屋に立っていた。

「どこ?グレイ!」

声を掛けられたグレイはライの肩で固まっている。


「あっ驚いたよね。ここは下界と神界の間の部屋だと思ってちょうだい。とりあえず椅子に座って」

気付いたら目の前に白い椅子とテーブルがあった。

祭壇にあった女神像より神々しい女性がいつの間にかテーブルの向こうに座って居た。ライはなんだかわからず体が固まってしまった。


「あなた全然教会に来ないから。待っていたのよ。お話したいことが沢山あるの。どうして教会に来ないのよ」

不満げな神?ライはグレイを目で探す。


「えっ、田舎に教会が無かったし。街に来ても生きるのに忙しくて・・・」

「そうよね。ライシーヌは悪くないわね」

そう言って女神は視線を下げた。ライはつられて神の足元を見た。最初から居たのかは分からない。気が付かなかった。そこには土下座をした子供がいた。


「この子がね。間違えてあなたを森に落としちゃったの」

「いえ違います。ちょっと急いでいたからちょっと置いてあとで回収しようと・・・」

土下座の男の子が顔を上げて神に必死で言い訳をしている。


「コウノトリ便の仕事はね。命を預かっているの。丁寧に慎重にしなければならないと教わったわよね。見なさい!ライシーヌの魂がこの世界に馴染んでいないから祝福が受けられないでしょう」


「えっ、祝福受けられない・・・そんなことがあるのか・・・」

「あら、ライシーヌ、真っ青な顔して・・大丈夫よちゃんと祝福するから」

「祝福受けられますよね!」

土下座の男の子は神見習いらしい。子供のようだけど500歳。女神は?と思ったら女神に睨まれた。心の中が読めるのか?


 2神の話から分かったこと。

本来人は死ぬと魂の休眠期間に入る。休眠期間に傷ついた魂の修復をするのだ。数年かかる人もいれば、数百年かかる人もいるらしい。修復の終った魂はきれいに浄化され、過去の記憶も消され、真新しい魂として生まれ変わる。中には傷つきすぎて消滅してしまうこともある。


 百年に数人、汚れも傷もない魂を女神が短い期間で転生させる。選ばれた綺麗な魂は、世界が生み出す悪い気を減らすことが出来る。

『 女神の愛し子 』という存在。

 悪い気が増えると魔物は凶暴になり、森や土地が荒れる。人や動植物が住みづらい世界になる。


 世界の安寧を司る女神が選んだ魂は、まだ力が弱いので、悪い気を避けるために神のコウノトリ便で配達をする。だが、たまたま忙しかった?見習い神様が、ライを森に落としてしまったらしい。

 愛し子は愛し子を繰り返すことが多い。だからこそ記憶を残さないことが大切だった。ライは記憶を完全に消しきれていなかった。

両親のもとに生まれるまでの時間がライの魂を安定させる期間だった。

 

「僕すぐに戻ったんだけど・・・君いなくなっていた。魂の力が弱っていて見つけられなかった。それでも探したんだよ」

めそめそしながら言い訳をする。子供・・・ほんとは大人?

女神さまは言い訳している見習い神様を一瞥して話し始めた。


「まあ、そういうことで、ライシーヌの魂をこの世界で安定させるために少し記憶を操作するわね」

「記憶?忘れちゃうの?」

「ううん、ちょっと違うわね。貴女、前世の記憶が消えてないの。今まで生きづらかったんじゃない?もう前世の記憶が体に定着しているから無理やり消すと今までの記憶が全部消えてしまう・・」

「それは嫌」

薬師のお婆やボブさんを忘れたくない。孤児院の子供達やケントも忘れたくない。


「分かっているわ。今はたいした影響はないけどこのままほうって置くと今のライシーヌが前世の人格に飲み込まれてしまうの。

だから人の根幹にまつわる記憶だけ封印しておくわ。

今までの様に経験したことが無いものを知っていたりしても気にしないで。神からの謝罪だと思って。


 これからはあなたの中にある前世の人格は消える。生きやすくなると思うわ。まあ前世の人格があったから辛い幼少期を、乗り越えたのかもしれないけどね」


「よくわからないけどお礼を言った方がいいんですよね?私が届けられるはずだった人は?」

「心配しないで。そのことは神の領域だからあなたには迷惑かけないわ。貴女はあなたらしく生きていきなさい。そろそろ下界に戻りましょう。

ここでの時間は下界では時が止まっている。心配しないで。貴女の幸せを祈っているわ」

その声と同時に現実に戻された。


 祝福を受けたいと願った。でも、誰かと話したような気がする。温かな優しい笑顔を見た気がする。気のせいか?

今は目の前に先ほどの司祭がライに言葉を掛けてきた。


「良かったですね。女神の祝福が得られたようです。しばらくしたらあなたの頭の中にスキルが浮かびます。精進してください」

やや投げやりな説明をされて背中を押され、次の子供に声が掛けられた。




 その頃、女神が一人の見習い子神に苦言を呈していた。

「ライシーヌは帰ったわ。覚えておきなさい。愛し子の魂の配達を疎かにすれば、世界が滅びる。


 彼女の魂が穢れに汚染しなかったのは精霊のおかげ。

それに『授かるはずだった子供』を失った人の人生も大きく変わっている。

よくよく反省して精進しなさい。

信仰してくれる世界が滅びれば神は消滅するのですよ」

見習い神を諭した。


 ライは女神の会話を覚えていない。神は世界に関与してはいけないからだ。ただ親に捨てられたことや養い親に売られるなどの事をまだ小さなライが受け入れられたのは前世の魂が大人だったからだ。


 その代わり子供らしい可愛さはなかった。時に大人で時に子供の言動は他の大人から見たら薄気味悪いものだった。

それが養い親に売られるきっかけでもあった。


本来ならライシーヌは優しい両親に恵まれ貴族として生きていくはずだった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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