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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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20 ケントとライ、ともに冒険者見習い。薬草採取がお仕事  

 ライは時々孤児のケントと一緒に薬草採取をしている。

ケントはあれからナイフでヨモ草を刈り取り5本ずつ紐で束にした。葉脈も確認している。採取速度は落ちてもギルドで得られるお金が10倍になった。時々資料室にも行ってるようだ。


 今日はケントに誘われて孤児院に行くことにした。ケントが真面目に勉強し始めたきっかけのライにシスターが会いたいと言ったらしい。


 孤児院は教会に併設されている。街には四つの教会がある。ケントが世話になっている教会はヨルンの街の西門に近い農村地区にある。石造りの少し古びた教会は、左右に畑が広がり遠くに羊の声。教会の広場では朝市も行われている。


 教会はいつでも祈りが出来るように大きな扉が開いている。ライは行ったことがない。教会の門の横を通り過ぎて裏に回った。大きな教会の裏に木造の平屋の建物が建っていた。


 小さな庭で子供たちが10人ほど遊んでいる。ケントの姿を見て皆が駆け寄る。きれいに洗われているが何度も繕った服、決して痩せこけていないがみな体が小さい。


「ケントお兄ちゃん・・・だれ?」

興味津々に子供の瞳がライに向かう。

「俺の友達だ。シスターのとこに行くんだ」

「遊べないの・・・つまんない」

そう言って子供たちは離れていった。


 ケントは子供たちに手を振って、ライを連れて木戸を開ける。掃除が行き届いている。奥から昼食の準備をしているのだろうか料理の匂いがする。出迎えてくれたシスターはやや高齢のガーネットシスターだった。


 ケントは子供の頃から元気が溢れていてシスターの手を煩わせていた。最近真面目に勉強するようになり、他の子供にも良い影響がみられたと感謝を言われた。

ライは自分の事を簡単に話した。薬師のお婆に教わったことが役に立っていると説明した。


「ライ君も苦労しているのね。こんなに小さいのに・・・神の祝福がありますように。ケント、ライ君にお昼を一緒に食べてもらったら」

「ライ食べて行けよ」

「急なことで迷惑ではないですか?」

「ほとんどお客様は来ることが無いから子供たちが喜ぶわ」


 ライはそれなら台所で料理を手伝わせてほしいとお願いした。 奥の台所でケントと同じくらいの女の子たちがスープを作っている。

農家からの寄付なのか芋や少し萎びた青菜が籠に入っている。芋は沢山あるらしい。

芽が出ている芋から10個ほど貰い芽をえぐり皮をむく。幾つかに切って水にさらしてしばらくして水切りをした。ポーチからマスターに貰った油をひく。芋を炒める。鍋をゆらして芋をひっくり返す。火が通ったら塩を振りかける。ケントが味見をする。


「えーー!芋うまー!」

芋の芽には毒があるからそこはしっかり掘り取ること。芋の保管方法を説明した。


 芽が出てしまった芋は半分に切って切り口に灰を付けて、畑に植えると実がなることも話した。芋は農家から貰うが、腹痛を起こすことからあまり好まれていなかったらしい。

ケントに解体所で魔物の脂身を貰って料理に使うことを話した。


 ライは孤児院に行くたびに芋料理を増やしていった。芋団子や芋パン、ガレット。赤い皮の芋は裏の林の小枝で焼き芋を作った。

冬には干し芋を皆で作って売り出した。高価な砂糖など手に入らない。それでも芋の甘さに子供たちは喜んだ。


 林の手前の畑に落ち葉を入れ込んで芋を植えた。小さな子芋が鈴なりにできた。子芋をガシャガシャ洗って皮つきでゆでて食べた。とても美味しく大喜びだった。


 一度グレイも一緒に孤児院に行ったら揉みくちゃにされ逃げ出した。魔物より恐ろしい子供だと言ってそれからはついて行かなくなった。

子供たちは楽しみにしているようだが、無理強いは出来ない。


 草原に生えている穂先がふわふわの草を刈ってきて子供達と猫や兎や森守り鳥を作った。喜んだのは良かったが隠れて夜お布団の中に持っていった子供がいた。布団の中でふわふわの穂がばらばらになってしまい大騒ぎになったらしい。

森から柔らかな蔓を集めて籠、輪投げを作って輪投げ大会を開いた。

大人ばかりの中で育ったライにとって、孤児院はライが子供らしくいられる世界だった。


 庶民でも生活魔法が使える者はいるが火打石の代わりに着火が2・3回出来たり、コップ1杯の水が出たりできる程度らしい。それさえできない者がほとんど。

魔法になじみがなければ、魔法を使おうとはしない。魔法に触れる機会がない。


 生活魔法の1、2個だって使えればとても便利だ。この世界の人も植物も動物も大なり小なり魔力を有している。

ライでさえ薬師のお婆が教えてくれなければ魔法に触れることはなかった。森などの奥で魔力だまりから魔物は生まれるという。本当の事はよく分かっていない。


 ケントはライの着火の生活魔法を羨ましそうに見ていた。ケントの手を握り魔力の流れを自覚させた。感じるまでに時間がかかった。

いつも見ている着火を明確に思い描けたせいか、すぐに使えるようになった。着火は数回しか使えないが煮炊きにとても便利だと喜んだ。


 魔力切れには気を付けるように話したのにケントは着火が出来たことに浮かれて、何度か試しているうちに気分が悪くなり体が動かなくなった。

結構辛く、いい薬になったようだ。


 孤児院の年長組には、数人着火や灯火やそよ風、擦り傷が治せる癒しの者がいた。

読み書き計算ができてきるだけでも良い働き口が見つかりやすい。生活魔法が出来たらもっと仕事に就きやすくなるとシスターは言っていた。


 シスター達も頑張ってみたが、生活魔法を習得できなかった。子供の柔らかな思考と好奇心が必要なのかもしれない。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「冬には干し芋を皆で作って売り出した。」 孤児院の話で何か月経過したんでしょう? 「冬には干し芋をたくさん作ったら売れるかも」ぐらいでよかったのでは。 過去形にすると、少なくとも冬を超…
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