176 エピローグ
ライとストーンが婚約して1年後、リリー達の渾身の白いドレスをライは身にまとい、屋敷の庭でストーンと結婚式をあげた。オードリアンとエックはどちらが花嫁の父になるか揉めているうちに、グレイが花嫁に抱えられストーンの元に歩んでいった。
グレイはライの腕から飛び立つと、ストーンにライの手を預けた。庭園には多くの人外が集まり古竜が二人の結婚の見届け係となった。二人に様々な花と光の粒が降りかかりそれは美しい式が執り行われた。リリーや小魔蜘蛛メイド隊の渾身の飾り付けに料理の数々は皆を驚かせた。それから三日三晩宴会は続いた。もちろん参加者は人外ばかりだった。
ライとストーンは結婚しても日常は変わらない。ライは薬を作り、ストーンと共に薬草採取にも出かける。ストーンは屋敷から公爵邸に出向き、オズやオードリアンの護衛としている。騎士としての腕を買われ北の公爵騎士副団長に任じられた。エックの指導で、火と風の魔法を行使できるようになり、魔法師副団長を兼任するようになった。何度か王都の騎士団や魔導師団からの勧誘があったが、ストーンはライのそばを離れることはなかった。
エックは王都の仕事の休暇のたびにライの屋敷に来ては、ストーンの訓練に付き合っていた。妖精村から来た子猫達の中で白黒の毛の子猫がエックに憑いた。独り暮らしの長かったエックには良い仲間が出来たようだ。退職後はライの屋敷で、子猫達に魔法指導をして暮らした。「じっちゃん」と呼ばれ皆に愛された。
ライとストーンの間には長男、双子の男の子と女の子が生まれた。共に人外との親和性が高い。それも仕方ないことかもしれない。ライが世話を焼くより、人外たちが可愛くてお世話をしたがる。本来なら目に見えないはずの人外たちが最初から見えているのだから、子供たちは人外たちを素直に受け入れることが出来ていた。かえって、学園に通うようになり、人外が見えないのが当たり前と知った時の方が大変だった。子供たちにも当たり前のように「子猫」が憑いた。
ライとストーンが生きている間に大きな戦争はなく、ストーンの「鍛冶神の剣」は使われることはなかった。女神はライとストーンが去った屋敷を結界で守り、その子孫に引き継がれることを願った。グレイはライの孫を見守ったのちに一人残っていた黒猫を連れて旅に出た。屋敷から旅立った「妖精子猫」は100匹になった。欠けることなく数十年に一度は妖精村に帰ってきている。そして必ず屋敷を守るリリーに「たまごボーロ」を貰うためにライの屋敷に立ち寄っていく。
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グランド国には妖精の住まう屋敷がある。そこには一人の少年と一匹の「妖精猫」が暮らしていた。旅に出ては大蛇に出会い西の土地を守り、地下では地魔蜂の窮地を助け、水の守りの大森林を人害から守ったと、二人の冒険のお話が書かれた絵本が残されている。女神の守りに守られたその屋敷を訪れるには「妖精猫」に好かれるほどに心清らかでなければならないと子供たちは寝かしつけ話として聞いて育つ。
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グレイは900才になったところで妖精村の長老になった。フェアリーリリーの可愛い釣鐘の花が咲く景色を見ながら、ライと旅した頃を思い出していた。村から出た「妖精猫」たちがライの様な人に出会えることを願う。その日を楽しみに今日も庭でたまごボーロを食べながらお茶を飲む。ライの作ったたまごボーロは残り少なくなった。リリーにお願いしなければならないと考えているうちにうたた寝を始めた。
もう少ししたらライに久しぶりに出会えるだろう。
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長きにわたり読んでいただきありがとうございます。不慣れなことが多く、皆様の助言でとても助けていただきました。誤字脱字報告、感想などとてもうれしかったです。思いにもよらず多くのブックマークをいただき大いに励みになりました。書籍の話を頂いたのも驚きでした。色々のことがあった一年でした。ありがとうございます。これからもポチポチ書いていきたいと思っています。
寒さに負けず良いお年をお迎えください。
ちゅらちゅら
読んでいただきありがとうございました。
どうにか完結しました。沢山の励ましに感謝します。
誤字脱字報告もありがとうございます。
新作始めました。ゆっくりですが描き続けたいと思います。




