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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
175/176

175  グレイの帰還

多数の視点が入り混じっています

 ミリエッタはストーンの先の長い教育に気が遠くなりそうだ。「俺も協力する」とエックが目で合図するもミリエッタは頭を振った。「女で失敗しているあなたは、悪い見本にしかなりません」と、にらみながらミリエッタが目で返した。それにライにも問題はある。「好きと愛する」が分かっていない。こちらの教育は・・リリー・・無理そうだ。


 エックが「花束も用意しないで結婚を申し込むなど見たことがない」とストーンを怒鳴りつけている。その話を面白そうに見上げているリリーは、以前赤い薔薇を貰ったことがある。今回も珍しい花を貰えるのかとワクワクしている。


 他の人外は「宴会」「宴会」と騒ぎオズまで「宴会、宴会」と騒ぎ出した。収拾がつかなくなり、ミリエッタは一度オードリアンと話し、横やりが入る前にライとストーンの婚約の届けを出そうと決意した。


 しかし、ミリエッタは人外にもてあそばれているライとストーンを見ていたら、どうでも良くなってきた。ミリエッタは貴族として結婚をしてきた。貴族としての矜持を持ち重責を感じていたが、ライはそんなものを飛び越えた娘なのかもしれない。ミリエッタが守ることなど必要ないのかもしれない。人よりも厳しい人外がいたことにミリエッタは気が付いた。


「ライ、グレイに相談は必要?」


「グレイ?グレイは誰が来ても良い顔しないかな?」


 この一言に慌てたのはストーンだった。


「えっ、」


「ストーン、「猫」はライの保護者だ。気難しい父親だと思って許可を貰え!」


 エックの助言にストーンは身も心も固まった。肉パンの配達のたびにストーンはグレイに小言(励ましの言葉)を貰っていた。ザッツ国の旅の中で、グレイが単なる「妖精猫」でないことは分かっていた。神界を行き来できるものが単なる妖精でないことは疎いストーンにもわかった。


 ライの膝で「ゴロゴロ」と喉を鳴らすグレイは、普通に猫に見えるのに、いざライの危機があればとてつもない人脈と力で解決していく。人外に「宴会」を開くよう迫られている笑顔のライを、ストーンは近くで守っていきたい。父親グレイとの戦いは長引くかもしれないが頑張るしかない。共にライの幸せを願っているのだから妥協点は必ず見つかると、ストーンは考えた。


 ミリエッタはオズを残して公爵邸に戻った。オズは久しぶりの人外たちに今日は外泊の許可を貰った。オズが外泊ならストーンもお泊りとなる。あんなにストーンを応援していたのにエックの顔が険しい。


「ライ、ストーン、適切な距離を保つようにしなさい」


 真面目な顔でエックが助言する。ライとストーンは顔を見合わせ笑い出した。


「な、なんだよ」


「だって、今日からお友達を始めるのに、なんか変な事言い出すんだから。エックおじさんは適切な距離が分からないからまだ独身なの?」


「お、俺は仕事に邁進して・・」


うろたえるエックの様子にストーンがさらに追い打ちをかけた。


「エックさんはよく酒場できれいな女性の腰を抱いて、酒を飲んでいます。適切な距離とは腰を抱いても良いのですか?」


 ライさえも面白がってストーンの側に行きストーンの手をライの腰に回す。それに慌てたのはエックだけではない。言い出したストーンでさえライの行動に真っ赤になってしまった。それを見てオズが真似をしてライに抱き着いた。


「ライ姉!大好き」


「「「わーい」」 「「わーーい」」と、人外までがライに纏わりつく。


「は、離れろ!ストーン、まだ早い!」


 慌てたストーンはライから離れた。心臓が「バクバク」している。そんなストーンをライは面白がっていた。妖精や精霊の小さな光の粒が集まって、ライは光のドレスを纏ったように輝いている。エックもストーンも改めてライを守ろうと思った。


 そこに突然グレイが転移してきた。光を纏ったライに向かって、小さな塊が無数飛び込んできた。


「ライ、悪い。こやつら妖精村から頼まれた子供たちだ。子供といっても50歳から100歳ぐらいだけど。今度村の外に出るのに慣れるための準備期間を設けることになって・・・俺が預かることになったんだけど、前ライが言っただろ。「独り立ちする前に経験を積むほうが良いって」だから・・」


「ここで、預かるということかしら?」


「出来たらそうさせてほしい。此処なら人と人外がいるから妖精村から出たばかりの「子猫達」にはちょうどいいと思う。ライには迷惑かけない。ミケにも手伝ってもらうから・・」


 少しばかり控えめなグレイの口調にライは可笑しくて笑ってしまった。まとわりついた光の粒たちは近づきライの腕のなかの「子猫達」に興味は移った。髭や耳、尾っぽを引っ張られ「ミャーミャー」と鳴き出した。


「こら、まだ簡単な言葉がしか分からない。一斉に話しかけるな。髭や耳を引っ張るな。悪戯するな。一緒に暮らす仲間だ。良き先輩として導いてくれ。ライ、勝手に連れてきてごめん。長老に頼まれた。さすがに旅の空での死は辛いからな。ここを旅立つには10年位かかるだろうけど、よろしく頼む」


「「猫」お前もライと同じで世話好きになったな。幼子の母親か?父親か?」


「なんでお前がいる?ライに会いに来たのか?」


「いや、ストーンとライ「言わないでください私から話します」」


「おや、ストーンではないか、久しぶりだな。魔力暴走は起こさないようになったか?」


 慌てたストーンはグレイを抱きかかえ部屋から出て行った。ライの腕の中には可愛い「子猫達」が乗っている。白黒、真っ白、茶色濃い三毛、手足だけ白い黒毛、グレイと同じ灰色、5匹の猫がライの顔を見上げている。


「ようこそ。グレイ先生の言うことを良く聞いて、外の世界になれましょうね。此処にいるのは、この屋敷を采配しているリリーと執事のジル。見た目人間だけど・・・」


 ライは「猫達」に屋敷の一人一人を紹介していった。人語を覚えたばかりの「子猫達」は目をキラキラさせながら見たことない人外の姿に夢中になった。安全な屋敷の中で数年暮らし旅に出て行くことになるだろう。スネやジャックフロスト、古竜らに連れられ、まずはグランド国を冒険することになるだろうか。良き旅人に出会えればそのままその人の人生に付き添っていくだろう。廊下の外からグレイの声がした。


「こ、婚約!ライとストーンが!!」


「静かに聞いてください」


「良かったな」とグレイの声がした。


 この屋敷の人外を丸ごと受け入れられる人は早々いない。いくらグレイがライを大切に思ってもグレイは「猫」価値観が違う。短い人の生き世に連れ添うものがいることに越したことはない。気まぐれな妖精や精霊は基本悪戯好きの気まぐれなのだ。リリーやジルのように進化することはほとんどない。ライの周りで起こる不思議なことは特別な事。この生真面目なストーンがこの屋敷ごとライを守ってくれるならそれに越したことはないとグレイは思った。


 グレイの許可が貰えたとライに駆け寄るストーン。それを「心配いらなかったでしょ」と、笑顔で迎えるライ。その腕にはグレイが連れてきた「子猫達」が抱きかかえられている。新しい仲間が増え屋敷の中は大騒ぎだ。賑やかな日々が続きそうだとグレイは思った。

誤字脱字報告ありがとうございます

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