表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
152/176

152  北の公爵領 枯れた大地  6

ノルデンは王都の妻の実家に離婚の話を持っていく

 北の公爵ノルデン・イルクーツクは小人の女の子を見て、王都で出会った「救国の乙女」を思い出した。あの子はちゃんとした成人した女性だったが見た目は小人の女の子とそっくりだった。同じわけがないことは分っていたが、東と西の公爵地、ザッツ国を災害から守った不思議な女性だった。


 ノルデンは体調が悪かったが魔導師団がザッツ国に向かうため王都の守りを担うために転移した時と、ザッツ国から帰還した際に「救国の乙女」の姿を見ただけだった。あの猫は「救国の乙女」の肩に乗っていた猫に間違いない。


 ノルデンは自分の体調不良が毒によるものだったとは思わなかった。北の領地は木材産業と湖畔と山々を望むリゾート地としてそれなりに豊かだと自負していた。後継問題はなく、次代は王都に長居しているが孫も生まれ問題ないと思っていた。


 年のせいか少しずつ体力が落ち政務には問題ないが魔物狩りなどに出るのは難しくなっていた。王都に長居しているセブテントリオーに戻るように声を掛けたが、「仕事の限が悪い」「もう少し王都に残りたい」などぐずぐず言って戻る様子がなかった。


 妻のエビルは孫の世話をすると言っていそいそと王都のタウンハウスに向かったまま戻る様子がない。元々王都の侯爵の娘だったので、寒い北部を嫌っていたのは知っていたが、王都に残るために夫に毒を盛るとは思わなかった。


 王都に行くたびにタウンハウスに出向くも妻がいたことはなく、社交のためのお茶会に参加だと言って顔を合わさなかった。夫婦の寝室には北部では嗅いだことのない香水のきつい匂いがしていた。


 タウンハウスの執事から帳簿を預かり妻のいない間に調べれば、公爵夫人手当の数倍のお金が使われていた。お金の入金先は北部の林業を受け持つ二つの伯爵家の一つ、レイク伯爵家のバッサリ―ノの名前になっていた。侮どられたものだ。まだ若いバッサリーノは王都の銀行振り込みなら北の公爵は気が付かないと思ったようだ。


 それだけではない。跡取りのはずのセブテントリオーがこの収入に気が付かないわけがない。執事でさえ何も言えないが気が付いている。タウンハウスを見れば随分調度品が増えている。基本タウンハウスは社交期間ぐらいしか使わなかった。セブテントリオーが王都で仕事をするにあたって貸家を借りるよりは5年ほどならタウンハウスを使えばよいと妻と話した。妻はこの時から王都に居を変える予定だったようだ。


 執事に妻の素行調査を依頼した。妻の不倫と公金横領で離縁を求めるつもりだ。妻から贈られた滋養の薬は毒とは言えないが、私に相性の悪い薬草が含まれていた。当然妻は知っていたはずだ。一度知らずに摂取して難儀したことがあった。「夫の体のための薬」と言えば聞こえがいいが、相性の悪い薬草を知らない人から見たら夫思いの妻だと思うだろう。


 セブテントリオーの帳簿を調べれば自分ではなにも管理していない。事務官としての収入は書き込まれていない。つまり長男の給金は個人管理となっていた。けして安くない給料は賭け事か女に使うしかない。これも執事に依頼した。俺は王都に長くいられない。すぐに北部に戻った。


 北部に戻り次第レイク伯爵の見舞いに向かった。バッサリーノが王都に出かけたのを知っていたからだ。


「レイク伯爵、体調はどうだ?」


「久しぶりだな。まだ不調が続いています。ノルデン様も随分顔色が悪い」


「お互い様か、それで俺はだいぶ良くなったぞ。今は休んではいられないんだ」


「もしかしたらこれが原因かもしれない。これを見てもらえませんか」


 顔色の悪いレイク伯爵は枕の下から一枚の契約書を差し出した。それには妻エビルとセブテントリオーの名で禁足地における伐採の許可と販売利益の5割を二人に納める内容であった。ノルデンとレイク伯爵、もう一人のルラック伯爵はともに北の大地を支えるために頑張ってきた同志でもあった。


 レイク伯爵は伯爵代行のバッサリーノの行動を不審に思い体調の悪い中、書類や帳簿を調べた。まさか禁足地に手を出しているとは思わなかった。さらに公爵の妻と跡取りのサインがあることでノルデンが許したのかと悩んでいた。


 レイク伯爵の飲んでいる薬をノルデンは調べた。数種類ある中に自分と同じ薬があった。この薬はバッサリーノが王都から取り寄せたものと分かった。ノルデンは同じ薬で体調を崩したことを説明しとりあえず休薬を進めた。お互い身内を疑うのは辛いがこの契約書はあってはならない。


 レイク伯爵にはバッサリーノの下に弟のキッコリーノがいる。すぐに呼び戻し兄の手伝いとして仕事に参加してもらう手続きをした。ノルデンからみたレイク伯爵はバッサリーノの行いに随分落胆したようだった。信頼していたからこそ辛いかもしれない。しかし領民を守る為政者は親子の情に流されるわけにいかなかった。それはレイク伯爵も分かっていた。


 動き出した歯車は確実に妻とセブテントリオーを追い詰めていった。妻の不倫相手は実家の妹の夫だった。そしてセブテントリオーは貴族街の隅に屋敷を購入し、そこに妻の不倫相手の妹が住んでいた。北の公爵位をセブテントリオーに継がせ妻の実家が実権を持とうと計画したようだ。さらに妻とバッサリーノの関係まで調べることが出来た。


 ノルデンは執事の報告と自分が調べた情報をもって、王都の妻の実家エスプロ侯爵邸に義両親を訪ねた。今は侯爵位を妻の妹のケリーナが継ぎ娘婿のフリーオが代行をしている。今日は妻とフリーオがともに外出中を狙っての訪問だった。


「ご無沙汰しております」


「体調が悪いと聞いたが外出しても良いのですか」


 顔色の悪いノルデンを心配した前エスプロ侯爵は今回の訪問に驚いていた。


「まだ復調はしていませんがそれどころではありません。ケリーナさんには申し訳ありませんが、妻とフリーオの不倫の証拠と公爵領の公金横領で妻エビルとの離縁の手続きに伺いました」


 義両親は驚いていたがケリーナは驚いてはいなかった。


「お父様のお気に入りのエビルお姉様とフリーオに家を継いでいただいてもいいですよ」


「な、何を言う」


「エビルお姉様とフリーオは、私と結婚前からの関係です。お気づきではありませんでしたか?私の夫にフリーオを強く推したのは誰ですか?私は嫌だといったのに。お姉様第一主義のお父様とお母様は私の言うことなど聞いてはくれませんでした。


 私達に子供ができないのは私がフリーオを拒んでいるからです。一人の男を姉と共有などできません。気に入らなければどうぞ私を離籍して頂いても構いません。フリーオの横領とお姉様以外の方々の不倫の証拠も用意してあります」


 ケリーナの言葉に俺自身も驚いた。姉や夫の陰に隠れているような物静かな女性だと思っていたが、単に諦めていただけなのかもしれない。以前から姉妹格差があると思ったがこれほどとは思わなかった。今のケリーナは女侯爵としての威厳さえ感じた。


 義父は財務関係で仕事をしていたので書類を見ただけで横領に気が付いた。そしてケリーナの離籍など考えていない。姉との格差を設けたつもりはないと言い募った。どちらかと言えばエビルが要領が良すぎたのかもしれない。そんな時、廊下が煩い音がしたと思ったら噂の二人が帰宅した。


「お父様、観劇先でフリーオと出会ったので一緒に帰ってきてしまいました。お元気そうで嬉しいわ」


「「・・・」」


 ノルデンがたまたま出入り口を背にした背の高いソファーに腰かけていてエビルもフリーオも自分には気が付いていない。義両親の前なのにフリーオがケリーナに向かって声を掛けた。


「今日はお姉さまがお泊りになる。この間のワインを冷やしておいてくれ。料理はお姉さまの好きなチーズを料理長に頼んでおいてくれ」


「お父様いいでしょ。たまにしか王都に来ないんだもの。来た時くらい羽を伸ばしたいの」


 二人の言動に義両親は固まってしまった。今まで同じことを言われたらケリーナに「苦労の多い公爵夫人だからたまには羽を伸ばさせてやれ。フリーオと積もる話もあるだろうからゆっくりしろ」と言っていたようだ。


 見方を変えたら二人はいまだに腕を組み妹を使用人のように扱っている。公爵の仕事をフリーオがしていたとしてもケリーナは妻であり候爵位を継いでいる。二人は何時から深い付き合いをしていたんだ。


 エビルのドレスと宝飾品は高価なことが分かる。二人が観劇に出かけたにしては帰宅が早すぎる。フリーオの胸のタイピンの宝石がエビルの目の色だった。


 なぜ気が付かなかった。財務で働いている時は脱税を見つけるのが一番うまかった義父なのにとノルデンは思ったが、自分も同じだと反省した。ケリーナはノルデンがいることを伝えずエビルとフリーオに苦言を伝えた。それに対し二人は激しい言葉でケリーナを攻め立てた。

誤字脱字報告ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >多いい 多い です。「い」は1個だけです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ